【展覧会】「PROJECT dnF+」山内隆「巡礼。2014−2022」2022.9-10

10月1日(土)20:30より、作家によるオンライントーク「巡礼。ぼくが見てきたもの」を開催します。詳しくは →こちら

福沢一郎記念館では、2014年から継続している「福沢一郎賞」歴代受賞者の方々のための企画「PROJECT dnF」を拡張する試みとして、「PROJECT dnF+」をはじめます。
これは、福沢一郎にゆかりのある方、福沢の制作とひびきあう独自の試みをおこなっている方など、当館で意義ある展覧会を開催してくださる方に、当館を展覧会場としてご提供するものです。
今回は、山内隆(女子美術大学教授)が、「巡礼」をテーマに展覧会をおこないます。

近年、巡礼路を辿ることを制作の糧としてきた山内は、昨年福沢一郎著の画文集『秩父山塊』(1944年)に強い関心を示し、それがこの展覧会の種となりました。彼は秩父の山々を注意深く観察し、そこに生きる人々の様子とともに淡々と描きとめた福沢のすがたを、自らの歩みと重ね合わせたのだといいます。
自身の歩みによって過去と現在を結び交感する制作の断片は、福沢一郎のアトリエでどのような景色を切り拓くのでしょうか。


《あるたてもの/出津/長崎》2022年 木材・塗料 h134.4×w64×d46cm

—– 2013年、ポーランドの強制収容所を訪れて以来、絶対的な死の現場に立つ機会を多く持つこととなった。なかでも長崎外海および五島列島の教会群とその周辺の営みに対し、人間が持つ表現に向けた根源的な欲求の部分に深く感じ入り、場を描き留めなければならない特殊な衝動を得た。以後、国内のカトリック教会をめぐる旅を重ね、その旅はスペインの巡礼路の踏破に至り(フランス人の道、ポルトガルの道)、現在「北の道」の踏破を継続中である。長崎のスケッチは発表を前提とせずノートの表裏に描き、スペインの巡礼路では荷物の軽量化のため最低限の色鉛筆と紙に描きとめていった。これらの有るき描きことに没入した、真空のような期間を過ごすことで、あらためて自分の制作の根源が「祈りや奉拝」であることを確信した。

山内隆

山内 隆(やまうち・たかし)

1968 岐阜県生まれ
1993 東京藝術大学 大学院美術研究科 壁画専攻 修士課程 修了
1996 東京藝術大学 大学院美術研究科 油画専攻 満期退学
1996-1999 東京藝術大学 助手
1999 – 現職
2017-2018 ウィーン応用美術大学 Institute of Fine Arts & Media Art Sculpture and Space 研究生

最近の主な個展歴
〈個展〉
2022.6 「山内隆展 巡礼。何処/其所」(iGallery DC 山梨、笛吹市)
2022.3 「山内隆展 巡礼。そらより」(ギャラリー広田美術 東京、銀座)
2018.1 研究発表展示 Wien / Sculpture and Space / exhibition room
2017.11 Unter Sternen Germany / Solingen
2017.9 Takashi Yamauchi Open Studio – Point – JOSHIBI Residency ( Kunstraum Kreuzberg / Bethanien )



◎展覧会 会期:
2022年9月29日(木)-10月15日(土) の 木・金・土曜日開館
13:00 – 17:00  観覧無料

◎イベントのお知らせ
オンライントーク「巡礼。ぼくが見てきたもの」

2022年10月1日(土) 20:30〜 22:00(予定)
オンライン会議システム「Zoom」を使用 参加無料

◇ 作家が近年取り組んでいる「巡礼の路」をたどる旅、そこで得たもの、感じたこと、そしてそこからつながる近年の制作活動について、画像をまじえて語ります。
◇ 参加ご希望の方はこちらのリンク または以下のQRコードから、参加申込フォームにお進みいただき、必要事項にご記入のうえ送信してください。
◇ 定員を大幅に超過した場合、受付を終了いたします。あらかじめご了承ください。


【展覧会】「旅する福沢一郎 vol.1 写真と素描でたどる『アマゾンからメキシコへ』」会場風景

2022年春の展覧会 「旅する福沢一郎 vol.1 写真と素描でたどる『アマゾンからメキシコへ』」 の会場風景をご紹介します。

福沢一郎は若い頃から国内外の旅を楽しみ、そこで得たテーマやモティーフを制作に取り入れていました。今回の展覧会は、彼の旅と制作の関わりをさまざまな切り口でご紹介する「旅する福沢一郎」シリーズの第1回で、主に写真と素描から、1953-54年の中南米旅行に迫る試みです。展示された写真パネルの多くは、遺族のもとで大切に保管されていた紙焼写真がもとになっており、令和2年度に公益財団法人ポーラ美術振興財団から助成を受けた「長谷川三郎と福沢一郎の写真資料に関する調査研究」の際にデジタル化した画像データを使用して、見やすい大きさにプリントしました。

展覧会のはじまり、アトリエ東側の壁には、福沢の1952年から54年、まる2年にわたるたびの行程を示すパネルを掲示しました。彼はまず1952年5月、パリで行われる国際文化祭の日本代表のひとりとしてフランスに渡り、そのまま翌1953年1月まで滞在したあと、ブラジルへと向かいます。

福沢一郎の旅 1952-54年 パネル画像

1953年2月のブラジル(サンパウロ)着から翌1954年5月のメキシコ出発まで、およそ1年3か月にわたって、彼は中南米を旅しました。この展覧会では、その旅程から5つのトピックごとにコーナーを分け、写真やスケッチなどを展示しました。


《コパカバーナ》1953年

はじめのコーナー「1.ブラジル」では、福沢が現地で制作し、ご縁のあったブラジル在住の人に贈ったとされる作品2点が展示されています。上の作品もそのひとつで、所蔵者から福沢の故郷富岡市に寄贈されました。現存するこの時期の作例は少なく、たいへん貴重な作品です。

ブラジル滞在のはじめから、福沢は写真撮影を楽しんでいたようで、サンパウロやリオデジャネイロなどの風景を撮影した写真が多数残っています。戦後急速に開発が進むブラジルの大都会を、彼は大胆に、そしてときにユーモアも交えてカメラに収めています。


アトリエ横の小部屋は、「2.アマゾン」です。ここには1953年11月から翌1954年1月までのアマゾン川流域の旅の間に撮影された写真と、訪れた街の風景のスケッチなどを展示しました。

アマゾン川流域の自然と人々の生活、そしてそれらが織りなす風景は、福沢の興味をおおいにかきたてたようで、著書『アマゾンからメキシコへ』にそのことをよく示す記述がみられます。ただ、そのわりにはこの地を主題とした作品や写真(プリント)が少ないのです。今後、まだ整理が終わっていないスライドフィルムの調査とデジタル化がおこなわれれば、彼にとってのアマゾンがどのようなものであったのかを、垣間見ることができるでしょう。


小部屋から出て時計回りにアトリエを巡ると、舞台はメキシコの旅へと移ってゆきます。1954年2月にメキシコシティに到着した福沢は、同年5月はじめまでこの首都を拠点とし、メキシコ各地の街や遺跡へと取材にでかけます。「3.メキシコの遺跡と美術」では、彼が訪れた遺跡や、同時代の美術家による作品などを撮影した写真をご紹介しました。

今回は、あえてメキシコの遺跡・旧跡と、ディエゴ・リヴェラやホセ・オロスコ・クレメンテらによる壁画やモザイクを撮影した写真を隣どうしに配置してみました。日本や西欧とはひとあじ違う、建物と一体となった造形のありように、福沢が強い興味を示していたことがよくわかります。この地での体験は、彼にとって、建築と美術の結びつきについて深く考えをめぐらせる機会となったようです。

また、福沢がメキシコで撮影した写真の多くに、働く女性や子供たちのすがたが写っているのも興味深いことです。「4.メキシコ 市井の人々」では、そんな写真とともに、水彩やドローイングなどを展示しました。


《メキシコの母子(Ⅱ)》1954年
「タスコの女」1954年

この時期の福沢作品には「母子」と題したものがいくつかみられますが、実は、他の時期にこのテーマを扱った作例はほとんどないのです。この地で目にした「母子」のすがたが彼にとっていかに印象深いものであったかがしのばれます。


展覧会の最後には、ちいさなコーナーをふたつ設けました。「5.福沢一郎サボテン・コレクション」では、福沢のメキシコ滞在時の写真の中から、サボテンを写したものを集めてみました。うち1点には福沢自身も写っています。乾いた大地ににょきにょきと生えて独特の景観をかたちづくるサボテン。人々の生活ともたいへん近しいこの奇妙な植物に、彼はことのほか強い興味をもったようです。
次の「6.中南米の旅、その後」では、中南米の旅が画家福沢一郎にもたらしたもの、そして調査研究の道なかばで写真資料からみえてきたことなどをご紹介しました。彼の著書『アマゾンからメキシコへ』は写真を豊富に収録した興味深い旅行記ですが、じつは彼自身の制作についてはほとんど書かれておらず、彼がいったい何を見て、何に心を動かされたか、そしてそれらがその後の絵画制作にどう影響したかということは、さらに多くの資料から検討される必要があります。今回デジタル化された写真の画像をくわしく分析することで、わたしたちは彼の中南米旅行の意味をもう少し深く掘り下げることができるかもしれません。


福沢一郎旧蔵のマスク メキシコで購入か

今後も、機会を捉えて福沢一郎の「旅」を追う企画をおこないたいと考えています。どうぞお楽しみに。
今回の展覧会のパンフレットは、こちらから ごらんいただけます。

【展覧会】「所蔵作品選 絵からうまれることばたち」会場風景+作品とことばたち

2021年春-夏の展覧会 「所蔵作品選 絵からうまれることばたち」 の会場風景と、ご来館くださったみなさまが作品から紡いでくださったことばたちをご紹介します。

今回の展覧会は、当館所蔵作品の中から選りすぐりを展示し、解説パネルやキャプションを設置せず、ご来館くださったみなさまに、自由に作品をみていただこうという趣旨のもと開催しました。また、作品をみて感じたことや考えたことなどを、ふせんに書いて、アトリエ中央のテーブルに貼り付けていただき、たくさんのことばをみなさまと共有できるようにしました。

こうした試みは初めてのことで、どんなご感想をいただけるのか正直不安に思っていましたが、ことのほか楽しんでいただけた方が多く、テーブルの上はたくさんのふせんで埋め尽くされました。

これらの、作品にお寄せいただいたことばたちは、このページ下のリンクから各作品ごとにごらんいただけます。

きくて生命力の強そうな花は、福沢の描く人間像に似た存在感を放ちます。また壺の絵は、おそらくは古代ギリシャの壺をヒントにしていると思われますが、モティーフはエジプト壁画、イランの建築レリーフ、レオナルド・ダ・ヴィンチの絵画、そして卑弥呼など、じつに多彩です。彼がその都度想像をふくらませ、独自の世界をつくりあげようとしていたことがわかります。

階段下の展示ケースには、ちょっと不思議な雰囲気のあるスケッチや挿絵などを展示し、こちらもことばをお寄せいただけるようにしました。


大きさも年代も、絵画表現じたいもじつに多彩な作品が並んだ今回の展覧会。作品を選んだポイントは、ただただ「見た目の面白さ」だったのですが、そんな単純な意図をこえて、とても豊かなことばをみなさまが生み出してくださったのは、みなさまの豊かな想像力と、福沢一郎作品の懐の深さゆえだと感じています。

興味深かったのは、ちいさなスケッチも大きな油絵も、同じようにたくさんのことばが紡がれたことです。ふだんあまり日の目を見ないささやかなものたちが持つ力を、改めて知ることができました。

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では、ご来館のみなさまが紡いでくださったことばたちとともに、作品のちょっとした解説を、お楽しみいただきましょう。以下の画像をクリックすると、その作品からうまれたことばたちのページにジャンプします。

【展覧会】「発掘!福沢一郎 120年めの『再発見』」会場風景

2018年春の展覧会 「発掘!福沢一郎 120年めの『再発見』」 の会場風景をご紹介します。

今回の展覧会は、タイトルの示すとおり、知られざる福沢一郎の魅力を「再発見」しようという試みでした。つまり、今まであまり美術館やギャラリーなどで紹介されてこなかった福沢一郎の制作を前面に出して、その面白さ、豊かさをご紹介することを目的としました。

記念館内東側の大きな壁を飾るのは、主に晩年に描かれた、花と壺の絵です。しかも今回はあえて額に入れず、福沢のアトリエという雰囲気も活かしながら、作品を身近に楽しんでいただこうと考えました。

大きくて生命力の強そうな花は、福沢の描く人間像に似た存在感を放ちます。また壺の絵は、おそらくは古代ギリシャの壺をヒントにしていると思われますが、モティーフはエジプト壁画、イランの建築レリーフ、レオナルド・ダ・ヴィンチの絵画、そして卑弥呼など、じつに多彩です。彼がその都度想像をふくらませ、独自の世界をつくりあげようとしていたことがわかります。

南側の壁(上画像左側)には「旅する福沢一郎」と題して、時空を超えた画家の「旅」をお楽しみいただける作品を並べてみました。ブルターニュの海辺やスペインの闘牛場、そしてハワイなど、実際に訪れた場所の風景や人々の印象を描いたものから、ダンテ『神曲・地獄篇』や『ドン・キホーテ』など物語の世界へも、彼は知的な旅を試み、その成果としてユニークな作品を描いています。
また、西側の壁(上画像右側)には、山梨県立美術館所蔵の大作《失楽園》のための習作を展示しました。作品じたいも、またそのために描かれた習作も画家本人はとても気に入っており、「制作資料展」と称して習作による個展を行ったほどです(1980年、ギャラリージェイコ)。力強く闊達に悪魔の肉体が描かれるかと思えば、ほどよく力の抜けた線で動物たちが表現されたりと、習作といえどもたいへんユニークなものばかりです。

北側のコーナーには、ちょっと不思議な作品をふたつ展示しました(上画像参照)。左側は、制作年のわからない《農耕》というタイトルの作品です。使われている絵具の色や、荒涼とした大地に人間を配する作風から、1946年頃の作品ではないかと推測されます。観覧者の方々からは、これはどこの風景? 何を作っているの? ぜんぜん作物が育たなさそう!など、いろいろな疑問やご意見をいただきました。
右側の作品は、マックス・エルンストのコラージュに影響を受けて制作されたと思われる、1930年作の《静物》です。人の手が大きく描かれている「静物」というのもなかなか謎めいていますし、画面の端に塗り残しが多いのも気になります。これは描きかけ? それともこういう絵にしたかったの? それはなぜ? など、こちらもさまざまな疑問が浮かんできます。こうした謎について、あれこれ思いをめぐらすのも、作品を楽しむひとつの方法ですね。

奥の小部屋には、「旅する福沢一郎」の特設コーナーを作りました。テーマは東北・北海道です。
1950年から51年にかけて、福沢はまず北海道、そして次に東北を旅します。浜辺に打ち上げられたクジラやかまくらなど、見知らぬ土地で得たモティーフは、終戦直後やや混沌とした状況にあった彼の制作に、わずかながら転機をもたらすものであったようです。
《山寺新緑》は、岩壁に萌えたつ色鮮やかな若葉が、画家に与えた活力を感じさせる作品です。

この部屋の展示ケースには、1951年に秋田を旅していた福沢のもとに届いた手紙をふたつ展示しました。これらは、服部・島田バレエ団の創立者のひとり島田廣の筆によるもので、バレエ作品「さまよえる肖像」の舞台美術についての相談・要望と、その舞台装飾原画が到着したお礼が、それぞれ記されています。秋田の旅館で彼が新作バレエ(しかも相当観念的でマニアックな!)の舞台美術についての構想をしていたことがわかる、とても面白い資料です。

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2018年は福沢一郎の生誕120年。秋から来年春にかけて、福沢一郎の展覧会が続きます。それらの中でも、きっといろいろな「再発見」があることと思いますが、当館による福沢一郎の発掘!は、まだまだ続きます。どうぞお楽しみに。
展覧会詳細は、→こちらから。

【展覧会】「福沢一郎のヴァーミリオン」展 10/16 – 11/15, 2015


このたび、当館では、秋の展覧会として、「福沢一郎のヴァーミリオン」展を開催いたします。

「ヴァーミリオン(Vermilion)」とは、鮮やかな明るい赤色の顔料、またはその赤色そのものを指すことばです。今回は「ヴァーミリオン」ということばを「赤」を象徴するものと捉えて「赤」から福沢絵画の色彩に迫ってみようと思います。
福沢一郎はしばしば「カラリスト」と評されてきました。とりわけ赤の使い方はユニークで、ときに画面全体を覆い、ときに上塗りの陰からちらりとのぞき、画面にさまざまな趣を与えています。
今回は、年代やテーマにかかわらず「赤」が印象的な福沢作品を集めました。それぞれの「赤」の鮮やかさや面白さ、そしてそこに込められた意味を感じ取っていただければと思います。
この機会に、ぜひお出かけください。

・出品予定作品

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《インディオの女》1954年


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《争う男》1965年


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《闘牛》1978年


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《卑弥呼》1991年 


会 期:2015年10月16日(金)〜11月15日(日)の日・月・水・金開館
    12:00-17:00 
入館料:300円

※講演会開催のお知らせ
「“赤”から読み解く福沢絵画」
講師:伊藤佳之(当館学芸員)
日時:10月30日(金) 14:00〜15:30
場所:福沢一郎記念館
会費:1,500円
※要予約、先着40名様(FAXも可)

<お問い合わせ:お申し込みはこちらまで>
TEL. 03-3415-3405
FAX. 03-3416-1166

【展覧会】「福沢一郎の“写真” 画家のレンズが捉えたもの。」 会場風景

展覧会 「福沢一郎の“写真” 画家のレンズが捉えたもの。」 の会場風景をご紹介します。

 

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今回の展示は、主にアルバムからの複写パネルや、ネガからプリントし直した写真で構成されています。特に1924〜31年のパリ滞在中に福沢が撮影した写真については、ネガが現存せず、プリントも非常に小さいので、画像を楽しんでいただくために、デジタル複写によるパネルを並べてみました。パネル作成にあたっては、多摩美術大学美術館の皆様に多大なるご協力を賜りました。

その他、全紙大の額にて展示しているプリントは、富岡市立美術博物館・福沢一郎記念美術館からお借りしたものです。同館が1996-98年の展示のために福沢家所蔵のネガフィルムからプリントし直したもので、その中から1958年のヨーロッパ〜インド旅行や、1965年のニューヨーク滞在の際に撮影されたものなどを、今回ご紹介することにしました。

下の画像の右端にある写真は、1939年12月頃に福沢が中国の山西省に旅行した際撮影した写真で、貴重なオリジナルプリントです。この写真については阿部芳文(展也)が雑誌『フォトタイムス』(1940年5月号)で「福沢一郎氏のアルバムから」という記事を書いて紹介しており、「卓抜な構成を示すもの」と高く評価しています。解説パネルとあわせてご覧ください。

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福沢が1965年のニューヨーク滞在時に撮影した写真は、非常に魅力的なものが多く、会場の都合で展示点数を4点に絞らなければならなかったのが残念です。この頃の写真はネガが比較的良い状態で残っているので、いずれ何らかのかたちで世に問うことができればいいなと、ひそかに思っております。

 

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今回は写真のほか、福沢一郎愛用のカメラも、出来るだけ多く展示してみました。ライカシリーズのほか、コンタックスIIIやニコンFなどでも撮影を楽しんだようです。

また、1924〜31年のオリジナルプリントも、幾つかアルバムごとケースに入れて展示していますので、こちらもぜひお見逃しなく。

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福沢一郎記念館は、展覧会会期中の月、水、金の開館となります。
皆様のお越しをお待ちしております。
展覧会詳細は、→こちらから。

【展覧会】「CURIOUSな実験。福沢一郎<素描>の魅力」展 会場風景

展覧会 「CURIOUSな実験。福沢一郎<素描>の魅力」展 の会場風景をご紹介します。

 

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大きな青森ヒバの壁には、1980年頃に集中して制作された「失楽園」の悪魔のシリーズを展示しました。どれもかなり大きな作品なので、迫力満点です。右奥には《楽園から逃亡する動物たち》という、珍しく動物だけを描いた作品があります。またその右隣には、これまた珍しい水彩の《レダ》を展示してみました。

 

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今回は解説パネルやキャプションをほとんど掲示していませんが、この一角だけは唯一解説パネルをつけております。1951年頃に制作された「バレエのコスチューム」についてです。戦後日本のバレエ界を牽引した服部・島田バレエ団の1952年(昭和27年)新春公演のために福沢が描いたとされるデザイン画が2点展示されているので、それらについて簡単にふれてみました。10月30日(水)の、神奈川県立近代美術館学芸員 西澤晴美さんの講演会では、そこのところをもっと詳しくうかがうことができるはずです。

 

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すでに書きましたとおり、今回は解説パネルは1点のみ、作品キャプションはつけておりません。ただ、作品の配置とデータがわかるパンフレットを会場にて配布しております。それを片手にご覧いただければ幸いです。

福沢一郎記念館は、展覧会会期中の月、水、金の開館となります。11月4日(月)は祝日ですが開館いたします。
皆様のお越しをお待ちしております。
展覧会詳細は、→こちらから。

【展覧会】松浦コレクション「とっておきの福沢一郎」展 4/19 – 6/3, 2013

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《母子》1935年



このたび、福沢一郎記念館では、春の展覧会として「松浦コレクション『とっておきの福沢一郎』展」を開催いたします。

 福沢一郎作品の収集家として知られる松浦英夫氏。そのコレクションは福沢の画業をほぼ網羅したものであり、公立美術館の所蔵にはない時期の作品も多く含まれ、福沢一郎の全貌を知るために欠かせない存在となっています。
 当館では平成7年秋にも松浦氏のコレクションを紹介する展示をおこないました。あれから18年、コレクションはさらに充実し、長らく公開されてこなかったものや、時代を象徴する重要なもの、親しみやすいものなど、氏の鋭い目によって選び抜かれた逸品が加わりました。
 今回は、《母子》(1935年)などの新たな収集品を含む松浦コレクションの選りすぐりを展示し、そこからみえてくる福沢一郎作品の魅力を発信します。
 長く福沢一郎と交流をもち、その作品をこよなく愛するコレクターの「とっておき」を、ぜひお楽しみください。きっと福沢作品の新たな魅力を感じ取っていただけることでしょう。

主な出品作:
《母子》1935年 油彩
《メキシコの男》 1954年 油彩
《裸婦と亀》 1968年 アクリル
《食水餓鬼》 1972年 アクリル
《花と鰯》 制作年不詳 油彩

会 期:2013年4月19日(金)〜6月3日(月)11:00-17:00 月・水・金開館
※ 4月29日(月)、5月3日(金)、5月6日(月)は祝日ですが開館します。
入館料:300円


※トークの会開催のお知らせ

「福沢一郎 とっておきの話」
語り手:松浦英夫氏(コレクター)、伊藤佳之(当館嘱託)
日時:5月8日(水) 14:00〜15:30
場所:福沢一郎記念館
会費:1,500円
※要予約(電話またはFAXにて/先着40名様)

<お問い合わせ:お申し込みはこちらまで>
TEL. 03-3415-3405 / FAX. 03-3416-1166

【展覧会】福沢一郎 face 展 会場風景

展覧会「福沢一郎 face 展」オープンから一か月が経過しました。
本日は、その会場風景をご紹介します。

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今回は文字どおり「顔」がテーマということで、福沢一郎の人間像における「顔」のいろいろをストレートに楽しんでいただきたいと思っております。解説もコラム程度しか付いておりません。
お時間の許すかぎり、ゆっくり作品のなかの「顔」と向き合っていただければと思います。

福沢一郎記念館は、展覧会会期中の月、水、金の開館となります。11月23日(金・祝)も開館いたします。
皆様のお越しをお待ちしております。

展覧会詳細は、→こちらから。

【展覧会】 福沢一郎 face 展 10/17-12/3, 2012

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《スペイン・ラプソディー》1955年
多摩美術大学美術館蔵


《煽動者》1931年 福沢一郎記念館蔵

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《顔(2)》1982年
富岡市立美術博物館・福沢一郎記念美術館蔵



このたび、福沢一郎記念館では、秋の展覧会として「福沢一郎 face」展を開催いたします。

画業のなかで一貫して骨太な力強い人間像を描いた福沢一郎ですが、それら人間像の「顔」について語られることは、これまでほとんどありませんでした。今回は、人間を描くにあたってとりわけ重要な意味をもつ顔というモチーフに、福沢がどのように取り組んだのかを、さまざまな年代の作品により探ってみたいと思います。

多くの画家と同様、福沢一郎の描く顔にもいくつかの特徴があります。まず鼻が強い輪郭線や色彩で強調され、そのまわりにやや控えめに目と口が配置され、中央付近に意識が集中した描き方となっています。こうした特徴は、初期の作品を除き年代に関係なくあらわれるので、顔を描くときの彼の意識が生涯を通じて大きく変わらなかったことを示しています。それは彼の考える普遍的な「人間像」がぶれることなく保たれたことのあらわれでもあり、人間への興味や批判精神を持ち続けた彼の視線を我々に印象づけるものです。
また彼の中でさまざまな変化をみせた主題や造形への興味が、そうした顔の特徴を含みつつ、どのように人間の表現へとつながっていったのかは、彼の画業を検証するうえでたいへん重要なことと考えられます。

今回は最初期の作品《ブルターニュの女》(1927年)から最晩年の《ラファエル》(1991年)まで、油彩、アクリル、そして素描も含めた多彩な16点の作品を展示します。福沢一郎の「顔」に秘められた人間への思いを、会場で感じ取っていただければ幸いです。
この機会に、ぜひお出かけください。

主な出品作:
《ブルターニュの女》1927年 油彩
《煽動者》1931年 油彩
《スペイン・ラプソディー》1955年 油彩 多摩美術大学美術館蔵
《顔(2)》1982年 アクリル 富岡市立美術博物館・福沢一郎記念美術館蔵
《ラファエル》1991年 アクリル
《内村鑑三》《新島襄》などの挿絵・素描6点

会 期:2012年10月17日(水)〜12月3日(月)11:00-17:00 月・水・金開館
※ 11月23日(金)は祝日ですが開館します。
入館料:300円


※講演会開催のお知らせ

「『形』と色彩の競演 − 福沢絵画の造形性」
講師:小林俊介氏(山形大学 地域教育文化学部 准教授)
日時:10月31日(水) 14:00〜15:30
場所:福沢一郎記念館
会費:1,500円
※要予約/先着40名様(FAXも可)

<お問い合わせ:お申し込みはこちらまで>
TEL. 03-3415-3405 / FAX. 03-3416-1166