メールマガジン第10号(2015年7月20日発行)

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福沢一郎記念館 メールマガジン No.10
FUKUZAWA Ichiro Memorial Museum
— Setagaya,Tokyo
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□■□  現在当館は、閉館中です  □■□
■□■ 次の開館は10月頃の予定です ■□■

[1] 「PROJECT dnF」無事終了しました
[2] ココで観られる福沢一郎作品
[3] コラム 福沢一郎の書架から(10)
[4] 賛助会員のお誘い

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[1]
□ 2015年春の展示
 「PROJECT dnF ー「福沢一郎賞」受賞作家展ー」
  無事終了しました
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歴代の「福沢一郎賞」受賞者に記念館のギャラリーを個展会場
として提供する試み「PROJECT dnF」、この春は第1回 照沼
敦朗「惑星の端」と、第2回 室井麻未「ある景色」をおこない
ました。
メインスクリーンと2箇所のドアに映像を投影しつつ、宇宙空間
をイメージしたインスタレーションをおこなった照沼敦朗は、
実写を取り込んだり抽象的なイメージを使ったりと、新たな試
みを成功させました。今後の展開が非常に楽しみです。
また、新作を中心とした展示構成を試みた室井麻未は、福沢一
郎のアトリエを自由な感覚で埋めつくし、力強さと柔らかさが
同居する作品の魅力を十分に発揮させることができました。
記念館としては初めての試みでしたが、ふたりの作家がそれぞ
れに力を発揮してくれたことが何よりと思っております。今後
当館で展示を考えている作家の励みにもなったことでしょう。
さて、来年の「PROJECT dnF」に向けて、我々は早くも始動
しております。充実した作家の刺激的な展示が実現するよう、
準備してまいります。乞うご期待!

照沼敦朗「惑星の端」の記録とインタビューは、記念館ホーム
ページにて公開中です。↓
https://fukuzmm.wordpress.com/2015/06/15/dnf1_terunuma/

室井麻未「ある景色」も同様に記録とインタビューを近日公開
予定です。どうぞお楽しみに。

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[2]
□ ココで観られる福沢一郎作品
《世相群像》 1946年 油彩・カンヴァス
 130.0×162.1cm 
 富岡市立美術博物館・福沢一郎記念美術館蔵
 @「画家たちと戦争:彼らはいかにして生きぬいたのか」
 名古屋市美術館

今回ご紹介するこの作品は、終戦直後に展覧会に出品されて以
来、長らく日の目を見ることがありませんでした。それもその
はず、この作品は《寡婦と誘惑》(1930年)の下張りに使われ
ており、1994年の修復の際ようやく発見されたのです。
古い作品の下張りに使われていたということは、福沢自身はあ
まり気に入っていなかった作品なのかもしれません。しかし、
彼の終戦直後の制作を知るうえでは、たいへん貴重な作例です。
画面中央にはピラミッド状のがれきの山があり、その右側には
暗く荒れた空が、左側には明るく澄んだ空が広がります。その
手前には地面をほじくる人、取っ組み合いのケンカをする人、
頭を寄せ合って相談をする人…。終戦直後の混乱した世相に生
きるさまざまな人間模様が描き出されています。
注目すべきは、画面の下端に描かれた白髪の男。後ろ向きです
が、眼鏡をかけて、真っ白な本のようなものを開いて、ぽかん
と口を開けているようにも見えます。これは、戦時中に自由な
制作や言論を封じられてしまった、福沢自身の姿なのではない
かと想像してしまいます。
骨太な福沢本来の作風はなりを潜めていますが、戦争という惨
禍をくぐり抜けた彼の、非常にストレートなメッセージが表さ
れた作品といえるのではないでしょうか。

現在この作品は、名古屋市美術館の企画展「画家たちと戦争:
彼らはいかにして生きぬいたのか」に出品中です。横山大観や
松本竣介など、著名な14人の作家を取り上げ、戦前から戦後を
とおしてその作品をみることで、彼らがいかに苦難の時代を生
き抜いたかをさぐる意欲的な展覧会です。
福沢一郎作品は《世相群像》のほか、《他人の恋》(1930年)
や《顔》(1955年)など全9点が展示されます。
この夏注目の展覧会、どうぞお見逃しなく。
会期は9/23(祝・水)まで(一部展示替えがあります)。
展覧会の詳細は、こちらから↓

http://www.art-museum.city.nagoya.jp/tenrankai/2015/worldwar2/

作品画像は、当館ホームページの「作品集」から。

https://fukuzmm.wordpress.com/works/

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[3]
□ コラム 福沢一郎の書架から(10)
 
André Breton, What is surrealism?
translated by David Gascoyne
Faber & Faber, London, 1936

1934年にブリュッセルで行われた、シュルレアリスムの提唱者
アンドレ・ブルトンの講演記録を英語に訳した書物です。訳者
はデイヴィッド・ガスコイン。イギリスにおけるシュルレアリ
スムの紹介者として知られる詩人です。
この本がイギリスで出版された年、ロンドンでは「シュルレア
リスム国際展」が開催され、ガスコインもその開催に一役買っ
ていました。つまり本書は、展覧会の開催にあわせてシュルレ
アリスム運動をイギリスに広めようという意図のもとに出版さ
れたといってもいいでしょう。
本書は、福沢一郎の著書『シュールレアリズム』(1937年)の
中身にも大きな影響を与えています。最新の前衛美術の動向を
とらえて紹介することを念頭に置いていた福沢は、そのために
書物をわざわざ海外から取り寄せ、通読したうえで原稿に取り
組んでいました。シュルレアリスムと共産主義との関わりや、
ファシズムに抵抗するブルトンの姿勢などが強く示されている
本書も、その中の一冊なのでしょう。当時の状況を考えると、
かなり治安当局ににらまれそうな内容ですが…現存しているの
はありがたい限りです。
当時は邦訳が憚られたでしょうが、現在はもちろん邦訳が出て
います(秋山澄夫訳、思潮社、1994年)。やや難解なところも
ありますが、1930年代中頃の「シュルレアリスム」を知るため
には必須の書です。ご興味のあるかたはぜひ。

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[4]
□ 賛助会員のお誘い

一般財団法人福沢一郎記念美術財団では、その美術振興活動を
より広範囲に、積極的にすすめるために、賛助会員を募ってい
ます。
一人でも多くの方に参加していただくことで、若い美術家の顕
彰、美術研究への助成など財団の活動が充実しますので、どう
ぞよろしくお願いいたします。

◯賛助会員の区分と会費
(1) 一般会員 3,000円(年会費)
(2) 維持会員 30,000円(年会費)
(3) 特別会員 300,000円(永久会員)

◯特典
(1) 福沢一郎記念館入館料無料
(2) 福沢一郎記念館ニュース送付
(3) 記念館主催の催し物に優先的にご招待

◯会費のお振込先
●郵便局振替口座 00190-2-695591
 福沢一郎記念館
●りそな銀行 祖師谷支店 普通口座 1000201
 (一財) 福沢一郎記念美術財団

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福沢一郎記念館 メールマガジン No.10
2015年7月20日発行
編集・発行 一般財団法人 福沢一郎記念美術財団

福沢一郎記念館

【ホームページを移転しました】


facebook: https://www.facebook.com/fukuzmuseum

Copyright(c) 2014-2015 FUKUZAWA ICHIRO MEMORIAL FOUNDATION
All Rights Reserved.

※バックナンバーは記念館ホームページでご覧いただけます。
※配信停止を希望される場合はそのままご返送ください。
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メールマガジン第9号(2015年6月16日発行)

=======================================2015/06/16
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福沢一郎記念館 メールマガジン No.9
FUKUZAWA Ichiro Memorial Museum
— Setagaya,Tokyo
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□■□  現在当館は開館中です  □■□
■□■ 15日から28日まで無休  ■□■

[1] 「PROJECT dnF」第2回 室井麻未「ある景色」
[2] ココで観られる福沢一郎作品
[3] コラム 福沢一郎の書架から(9)
[4] 賛助会員のお誘い

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[1]
□ 2015年春の展示
 「PROJECT dnF ー「福沢一郎賞」受賞作家展ー」
  第2回 室井麻未「ある景色」
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歴代の「福沢一郎賞」受賞者に記念館のギャラリーを個展会場
として提供する試み「PROJECT dnF」。
第1回 照沼敦朗「惑星の端」は好評のうちに幕を閉じました。
ご来館いただきました皆様、ありがとうございました!
映像を中心としたインスタレーションは、ご来館くださった皆
様にとっても、そして我々スタッフにとっても、たいへん刺激
的なものでした。作家のさらなる活躍に期待しましょう。

そして昨日、第2回 室井麻未「ある景色」がオープンしました。
室井の作品には、イメージがまるで層をなすようにいくつも塗
り込められ、さまざまな色が踊っています。軽やかさと重厚さ、
ゆるやかさと鋭さが同居するふしぎな世界です。
室井は、わたしたちが眼で見ている世界と、そのあいだ、その
むこうにある、見えそうで見えない世界のあいだで揺れ動きな
がら、その揺れ幅を塗り込めるように制作しています。絵画と
はいったい何か、見えるものと見えないもののあいだには何が
あるのか。彼女の作品は、そんな根本的な問いかけをしている
ようです。
ゆるやかな絵画のありようを探る注目の画家が、初めての個展
を当館でおこないます。この機会にぜひご覧ください。

「PROJECT dnF -「福沢一郎賞」受賞作家展-」
第2回 室井麻未「ある景色」の開催予定は以下のとおりです。

6月15日(月) — 28日(日) 11:00 — 17:00 無休
オープニングレセプション 6月20日(土)17:00 — 19:00
ギャラリートーク 6月21日(日)14:00 — 15:00

記念館ホームページで、日程等をご覧になれます。
https://fukuzmm.wordpress.com/2015/04/28/dnf_1terunuma_2muroi/

※福沢一郎作品も、奥の部屋に展示いたします。こちらもぜひ
お楽しみください。

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[2]
□ ココで観られる福沢一郎作品
《ケンタウロス》 1970年 アクリル・カンヴァス
 71×162cm 前橋市立図書館蔵

深い青色の空と黄緑の鮮やかな大地を背景に、ピンク色のケン
タウロスが大きく腕を広げ、まるで飛び跳ねるようなポーズを
とっています。後ろでは牧神らが踊り、底抜けに明るい世界を
楽しんでいるようです。
この作品は、1971年に群馬銀行から前橋市へ寄贈され、1974
年に現在の前橋市立図書館が開館したとき、中央図書室に展示
されました。1階と2階のあいだの吹き抜けに面した細長い壁に、
まるであつらえたようにぴったりとおさまっています。
1970年頃、福沢はギリシャ神話に主題を得て多くの作品を制作
います。青い空と果てしない大地、そして奔放なポーズの神々
や半獣半人たちは、この時期の重要なモティーフだったようで、
福沢は作品ごとに少しずつ、かたちや描写の方法を変えながら
描いています。この作品にあらわれた鮮やかなピンクのケンタ
ウロスは、おおらかなポーズとあいまって、とてものびやかに、
そして力強く、生命を謳歌しているように思えます。
本作品が図書館に展示されるようになった経緯は明らかではあ
りませんが、大地の上で躍動するケンタウロスや牧神のすがた
は、まことに福沢らしい、自由な学びの場の象徴といえるかも
しれません。

本作品は前橋市立図書館1階の中央図書室に常設展示中。開館
中ならいつでも見られます。

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[3]
□ コラム 福沢一郎の書架から(9)
 
アンダーソン著、松崎壽和訳『黄土地帯』
 座右寶刊行会、1942年

本書は、スウェーデンの地質学者・考古学者ヨハン・グンナー
ル・アンダーソン(アンデショーン)の著書『黄土の子等:先
史時代中国の研究(原題Children of the Yellow Earth
:Studies in Prehistoric China)』(マクミラン社、
ニューヨーク、1934年)を訳したものです。著者は戦前の中国
で地質調査や発掘、後進の指導にあたり、中国の地質学・考古
学研究の発展に大きな役割を果たした人物です。
本書は、「北京人類(北京原人)」の発見など、著者の研究成
果をまとめたものですが、それにとどまらず現地の様子や人々
の生活などのエピソードもちりばめられ、案外親しみやすい書
物です。訳も非常にていねいで、当時の書評などでも高く評価
されているようです。
さて、福沢は本書の刊行に先立つ1939年末、中国の山西省へ旅
し、そこで見た人々の生きざまを主題として《山西図》や《黄
土にすむ人》などの作品を制作しています。ですから、本書が
直接制作の役に立ったとは思われません。しかし、もともと人
類学や考古学に強い興味を抱いていた福沢にとって、本書は知
的好奇心をおおいに刺激したでしょうし、それが地域の地質学
や民俗学への関心を呼び起こし、『秩父山塊』(1944年)など
を執筆するときの参考にもなったのではないでしょうか。
戦後に中南米やオーストラリアへ旅した際などにも、福沢は専
門書を取り寄せて読み、かの地に関する知識を広く求めました。
絵画制作はつとめて知的な作業であり、知見を広め、深めるこ
とが画家には必要であると考えていた福沢の姿勢は、こうした
書物であふれる彼の本棚にはっきりとあらわれています。

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[4]
□ 賛助会員のお誘い

一般財団法人福沢一郎記念美術財団では、その美術振興活動を
より広範囲に、積極的にすすめるために、賛助会員を募ってい
ます。
一人でも多くの方に参加していただくことで、若い美術家の顕
彰、美術研究への助成など財団の活動が充実しますので、どう
ぞよろしくお願いいたします。

◯賛助会員の区分と会費
(1) 一般会員 3,000円(年会費)
(2) 維持会員 30,000円(年会費)
(3) 特別会員 300,000円(永久会員)

◯特典
(1) 福沢一郎記念館入館料無料
(2) 福沢一郎記念館ニュース送付
(3) 記念館主催の催し物に優先的にご招待

◯会費のお振込先
●郵便局振替口座 00190-2-695591
 福沢一郎記念館
●りそな銀行 祖師谷支店 普通口座 1000201
 (一財) 福沢一郎記念美術財団

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福沢一郎記念館 メールマガジン No.9
2015年6月16日発行
編集・発行 一般財団法人 福沢一郎記念美術財団

福沢一郎記念館

【ホームページを移転しました】


facebook: https://www.facebook.com/fukuzmuseum

Copyright(c) 2014-2015 FUKUZAWA ICHIRO MEMORIAL FOUNDATION
All Rights Reserved.

※バックナンバーは記念館ホームページでご覧いただけます。
※配信停止を希望される場合はそのままご返送ください。
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メールマガジン第8号(2015年5月18日発行)

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福沢一郎記念館 メールマガジン No.8
FUKUZAWA Ichiro Memorial Museum
– Setagaya,Tokyo
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□■□  現在当館は、閉館中です  □■□
■□■ 次の開館は5月末の予定です ■□■

[1] 「PROJECT dnF」第1回 照沼敦朗「惑星の端」 
[2] ココで観られる福沢一郎作品
[3] コラム 福沢一郎の書架から(8)
[4] 賛助会員のお誘い

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[1]
□ 2015年春の展示
 「PROJECT dnF -「福沢一郎賞」受賞作家展-」
  第1回 照沼敦朗「惑星の端」
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歴代の「福沢一郎賞」受賞者に記念館のギャラリーを個展会場
として提供する試み「PROJECT dnF」がはじまります。
この春は、照沼敦朗(2007年受賞)と室井麻未(2014年受賞)
のふたりが展示をおこないます。今号では照沼敦朗(てるぬま
・あつろう)をご紹介しましょう。

照沼敦朗は多摩美術大学油画専攻の卒業生ですが、在学中から
平面作品よりもアニメーションの制作に力を入れてきました。
2008年から本格的に作家活動を開始、ギャラリーでの個展や
グループ展のほか、映像作品のコンペティションにも積極的に
参加してきました。2011年、「第14回岡本太郎現代美術賞」展
で、映像を取り入れたインスタレーション「見えるか?」が特
別賞を受賞します。
照沼の映像作品は、モノクロームを基調として、都市の雑踏の
なかをキャラクターが旅するような趣向でつくられてきました。
そこには巨大な構造物としての都市と、そのなかでうごめく人
間の存在が、「視覚」の問題を中心にえがかれます。視覚で捉
えられる世界とその裏側にあるさまざまな問題を、時にはあか
らさまに、時にはひそやかに、うねるようなタッチを活かした
映像で表現しています。
今回、照沼は3つの映像に平面作品を組み合わせたインスタレー
ションを制作します。特に映像は、これまで前面に出ることの
少なかった鮮やかな色彩が、造形表現の大きなポイントなって
います。
福沢一郎のアトリエで、作家の意欲的な試みはどんなすがたを
あらわすのでしょうか。ぜひご覧ください。

「PROJECT dnF -「福沢一郎賞」受賞作家展-」
第1回 照沼敦朗「惑星の端」の開催予定は以下のとおり。

5月28日(木) – 6月10日(水) 11:00 – 17:00 無休
オープニングレセプション 5月30日(土)17:00 – 19:00
ギャラリートーク 5月31日(日)14:00 – 15:00

作家の公式ホームページはこちら。
http://www.terunuma-atsuro.com/

室井麻未(むろい・まみ)のご紹介は次号にて。乞うご期待。
記念館ホームページで展覧会の日程等をご覧になれます。
https://fukuzmm.wordpress.com/2015/04/28/dnf_1terunuma_2muroi/

※福沢一郎作品も、奥の部屋に展示いたします。こちらもぜひ
お楽しみください。

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[2]
□ ココで観られる福沢一郎作品
《アニョロ・ブルネレスキを襲う蛇》 1974年
 アクリル・カンヴァス 227.3×181.8cm
 群馬県立近代美術館蔵

「六本足の蛇が一匹彼らの前に飛び出すやいなや、三人の亡者
の一人アニエルの身体に前からぴったりと張りついた。(中略)
そして、見ているうちに、まるで熱せられた蝋のように両者は
密着し、両方の色もまじり合い、両者とも以前とはまったく別
のものになってしまった。(中略)それは蛇のようでもあり、
また人間のようでもあったが、同時にどちらでもないような奇
怪な像をもっていたが、やがてゆっくりと歩き去った。」

ダンテ『神曲物語 上巻』(野上素一訳、現代教養文庫、社会
思想社、1968)の一場面です。盗人が堕ちる地獄でダンテが出
会ったのは、名門の出ながらフィレンツェの街で盗みをはたら
いていた者達でした。この地獄では蛇に噛みつかれた者が蛇に
姿を変え、噛みついた側は人の姿に戻るという悪夢のような業
苦が永遠に続くのです(第二十五曲)。
蛇が人にからみつき、変容していくこのすさまじいシーンを、
福沢はそれ空虚な風景のなかに大きく描き出しています。背景
にみえる大きな壁のような物体は、まるでロダン《地獄の門》
の裏側のようにもみえます。
蛇と人とが溶け合ってひとつになる直前のワンシーンを描くた
めに、福沢は医学書の類から骨格図や筋肉の構造図を引用した
のではないかと考えられています。『解剖学及び外科学著作集』
(原題Opera Omnia Anatomica&Chirurgica, 1725年刊、
オランダ)所載の図版(fig.597)には、本作品とほとんど同
じポーズの人体図があります。また、同じシーンを描いた《蛇
となるアニョロ》(1974年、同館蔵)も、『人体の構造』(原
題De humani corporis fabrica, 1543年刊、バーゼル)
所載の骨格図(p.190)とほぼ同じポーズで描かれています。
造形化が非常に難しい奇想天外なシーンを描くのに、画家が近
世の解剖図を引用したのは、溶けてからみあう肉体の構造から
イメージを広げようとしたのでしょうか。それとも、解剖図が
もともと持っている「死」という寓意的な側面に興味をそそら
れたのでしょうか。
背景の「地獄の門」らしきかたちも含め、いろいろ考えさせら
れる作品です。

本作品は、群馬県立近代美術館のコレクション展示「福沢一郎
ー物語を描くー」にて展示中、6/21まで開催。
展示作品目録(PDF)もダウンロード可能です。

トップページ

作品画像は、当館ホームページの「作品集」から。
https://fukuzmm.wordpress.com/works/

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[3]
□ コラム 福沢一郎の書架から(8)
 
本間正義『随想 ハイトマルスベル』 形象社 1989年

著者の本間正義(1916-2001)は、福沢一郎とゆかりの深い
美術館人のひとりです。東京帝国大学在学中には福沢の絵画研
究所に通い、作画の指導を受けました。戦後は東京国立近代美
術館で学芸員として活躍し、国立国際美術館館長、埼玉県立近
代美術館館長を歴任しました。
この随想集は、『毎日夫人』という月刊誌の連載「芸術随想」
の原稿を中心にまとめられており、著者の美術館人としての見
識の深さや人脈の広さだけでなく、ピリリと効いたウィットと
柔軟な文章力がいかんなく発揮された好著です。
もちろん福沢一郎についての記述もあり、研究所で絵を学んで
いるとき、白皙のプロフェッサーのような「アポロ的」な風貌
と、理屈からはみ出たロマンを求める「ディオニソス的」思考
の両方をみたと述べています。この福沢に対する著者の印象は
後々まで変わることがありませんでした。
さて、この随想集のタイトル「ハイトマルスベル」とは何か。
これはある連載原稿のタイトルで、何やら格調高いドイツ語の
単語のようにも思えますが、実は「昔はやった疑似外語」、つ
まり外国語のように聞こえる駄洒落のようなもので、ハエがと
まれないほどつるつるの禿頭を指すのだそうです。著者自身の
いわば自虐ネタなのですが、ともすれば固い調子になりがちな
連載が、「ハイトマルスベル」執筆後は自由でソフトなものへ
と変わっててきたそうです。
この随想集を献呈された福沢は、どんな面持ちで読んだことで
しょう。かつての生徒のテストを採点するかのように、アポロ
的な理知をもって挑んだでしょうか。それとも、そのウィット
にディオニソス的な笑みを浮かべていたでしょうか。どちらも
福沢らしいような気がします。やはり著者の眼は、福沢一郎の
本質を見抜いていたのでしょうね。

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[4]
□ 賛助会員のお誘い

一般財団法人福沢一郎記念美術財団では、その美術振興活動を
より広範囲に、積極的にすすめるために、賛助会員を募ってい
ます。
一人でも多くの方に参加していただくことで、若い美術家の顕
彰、美術研究への助成など財団の活動が充実しますので、どう
ぞよろしくお願いいたします。

◯賛助会員の区分と会費
(1) 一般会員 3,000円(年会費)
(2) 維持会員 30,000円(年会費)
(3) 特別会員 300,000円(永久会員)

◯特典
(1) 福沢一郎記念館入館料無料
(2) 福沢一郎記念館ニュース送付
(3) 記念館主催の催し物に優先的にご招待

◯会費のお振込先
●郵便局振替口座 00190-2-695591
 福沢一郎記念館
●りそな銀行 祖師谷支店 普通口座 1000201
 (一財) 福沢一郎記念美術財団

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福沢一郎記念館 メールマガジン No.8
2015年5月18日発行
編集・発行 一般財団法人 福沢一郎記念美術財団

福沢一郎記念館

【ホームページを移転しました】


facebook: https://www.facebook.com/fukuzmuseum

Copyright(c) 2014-2015 FUKUZAWA ICHIRO MEMORIAL FOUNDATION
All Rights Reserved.

※バックナンバーは記念館ホームページでご覧いただけます。
※配信停止を希望される場合はそのままご返送ください。
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メールマガジン第7号(2015年4月16日発行)

=======================================2015/04/16
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福沢一郎記念館 メールマガジン No.7
FUKUZAWA Ichiro Memorial Museum
– Setagaya,Tokyo
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□■□  現在当館は、閉館中です  □■□
■□■ 次の開館は5月末の予定です ■□■

[1] 「PROJECT dnF -福沢一郎賞作家-」 
[2] ココで観られる福沢一郎作品
[3] コラム 福沢一郎の書架から(7)
[4] 賛助会員のお誘い

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[1]
□ 2015年春の展示
 「PROJECT dnF -福沢一郎賞作家-」
  ー21年めのあらたな試み
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前号で予告しておりました、今年春からはじまる当館でのあら
たな試みについて、お知らせいたします。

福沢一郎記念美術財団では、1995年から毎年、福沢一郎とゆか
りの深い多摩美術大学油画専攻卒業生と女子美術大学大学院洋
画専攻修了生の成績優秀者に、「福沢一郎賞」をお贈りしてい
ます。
この賞が20回めを迎える2015年、当館では新たな試みとして、
「project dnF ー福沢一郎賞の作家たち」をはじめます。
これは、「福沢一郎賞」の歴代受賞者の方々に、記念館のギャ
ラリーを個展会場としてご提供し、情報発信拠点のひとつとし
て当館を活用いただくことで、活動を応援するものです。

福沢一郎は昭和初期から前衛絵画の旗手として活躍し、さまざ
まな表現や手法に挑戦して、新たな絵画の可能性を追求してき
ました。またつねに諧謔の精神をもって時代、社会、そして人
間をみつめ、その鋭い視線は初期から晩年にいたるまで一貫し
て作品のなかにあらわれています。
こうした「新たな絵画表現の追究」「時代・社会・人間への視
線」は、現代の美術においても大きな課題といえます。こうし
た課題に真摯に取り組む作家たちに受け継がれてゆく福沢一郎
の精神を、DNA(遺伝子)になぞらえて、当館の新たな試み
を「PROJECT dnF」と名付けました。
今回は、ふたりの作家が展示をおこないます。学生時代から映
像表現に取り組み、平面や立体の作品とあわせてモノクローム
の雑踏を思わせるインスタレーションをおこなってきた照沼敦
朗(多摩美術大学卒、2007年受賞)と、ゆるやかに解きほぐさ
れたような形態を、鮮やかな色彩によって重層的に描く室井麻
未(女子美術大学大学院修了、2014年受賞)です。
かれらは福沢一郎のアトリエとで、どのような世界をつくりあ
げるのでしょうか。

おふたりの展覧会については、当館ホームページ内で詳しい内
容やイベントの日程等をお知らせいたします。
どうぞご期待ください!

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[2]
□ ココで観られる福沢一郎作品
《父と子》 1937年 油彩・カンヴァス
 28×20cm 板橋区立美術館蔵

グレーを基調にした空間に、男性と思しき人物が、小さな子供
を肩車して立っています。光源は背中のほうにあり、顔は逆光
のため暗い蔭が落ちてよく見えません。子供は無邪気に男の頭
にしがみついていますが、男のほうはややうつむき加減で、動
きを感じさせないポーズです。その右足の奥には、毬のような
丸いものが転がっています。《父と子》という温かな雰囲気の
題名とはうらはらに、やや寂しげな、空虚な印象を受けます。
この作品が描かれた1937年は、盧溝橋事件により日中戦争が勃
発し、日本が大規模な戦争へと突き進むことが決定的となった
年です。こののち徴兵によって多くの若者が戦地に赴くことに
なりますが、市井の雰囲気はさほど切迫感がなく、戦争を推し
進める政治にも肯定的な論調が多数を占めていました。
無邪気に遊ぶ子供を肩に乗せ、空虚な室内でうつむく男は、こ
の年2歳になる長男の将来への不安を敏感に感じていた福沢自
身のすがたではないでしょうか。戦勝ムードに占められた世相
を冷ややかに見つめ、いいしれぬ不安に対峙していた画家の視
線がうかがえる作品です。

本作品は板橋区立美術館の館蔵品展「近代日本の社会と絵画
戦争の表象」にて展示中、6/7まで開催。

作品画像は、当館ホームページの「作品集」から。

https://fukuzmm.wordpress.com/works/

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[3]
□ コラム 福沢一郎の書架から(7)
 
Leonardo da Vinci, Il codice Atlantico
(レオナルド・ダ・ヴィンチ『アトランティコ手稿』)
 原本1478〜1518年、刊行1974年、ファクシミリ版
 Giunti-Barbèra、フィレンツェ

「万能の天才」レオナルド・ダ・ヴィンチは、絵画、彫刻から
デザイン、解剖学や工学に至る幅広い仕事のために、膨大な数
のノートを書き遺しました。約40年にわたり書かれたノートの
枚数はおよそ15,000枚に及ぶといわれ、現在はその2/3がいく
つかの手稿集に分かれて編集され、今に伝わっています。
福沢の蔵書にある『アトランティコ手稿』は、これらの中でも
特に分野が多岐にわたることで知られています。原本はミラノ
のアンブロジーナ図書館に所蔵されており、研究者向けにファ
クシミリ版が刊行されたものを、福沢はわざわざ入手しました。
全12巻にわたる、とても大きくて重い書物です。
これは80年代初めの、レオナルドへのオマージュともいうべき
連作のために入手したもののようです。このファクシミリ版は
原本の再現が非常に忠実になされていて、ちょっとしたメモ書
きのような箇所であっても、きちんと裏も表も複写されていま
す。この手稿を当館で丹念に調査なさった山形大学教授の小林
俊介さんは、人の顔に図形のメモが裏写りしたり、レオナルド
の弟子サライが脇から描き足したようなものまで、福沢が作品
のなかに引用しているのを見つけました。80年代の「レオナル
ド連作」は、書物から着想を得るだけでなくそこに諧謔や諷刺
まで見出して自らの作品に取り込んでしまう「教養とユーモア
の凝縮されたシリーズ」であると、小林さんは語っています。
才気に富み多くの傑作を生み出しながら、かたやとんでもない
失敗もやらかしてしまうレオナルドに、福沢は敬意と愛着を覚
えていました。そのあゆみを追求した結果、そのイメージの源
泉たる手稿集にまでたどり着いてしまうところなどは、知的好
奇心に突き動かされるこの画家ならではのエピソードといえま
しょう。

本書は記念館書斎に配架中。ただし大型本のため、ご覧になる
には準備が必要です。ご希望の場合は前もってご連絡を。
また、「レオナルド連作」は記念館ホームページの「作品集」
に掲載中です。『記念館ニュース』第37号(2013年4月)掲
載の小林俊介さんによる講演記録も、ぜひお読みください。

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[4]
□ 賛助会員のお誘い

一般財団法人福沢一郎記念美術財団では、その美術振興活動を
より広範囲に、積極的にすすめるために、賛助会員を募ってい
ます。
一人でも多くの方に参加していただくことで、若い美術家の顕
彰、美術研究への助成など財団の活動が充実しますので、どう
ぞよろしくお願いいたします。

◯賛助会員の区分と会費
(1) 一般会員 3,000円(年会費)
(2) 維持会員 30,000円(年会費)
(3) 特別会員 300,000円(永久会員)

◯特典
(1) 福沢一郎記念館入館料無料
(2) 福沢一郎記念館ニュース送付
(3) 記念館主催の催し物に優先的にご招待

◯会費のお振込先
●郵便局振替口座 00190-2-695591
 福沢一郎記念館
●りそな銀行 祖師谷支店 普通口座 1000201
 (一財) 福沢一郎記念美術財団

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福沢一郎記念館 メールマガジン No.7
2015年4月16日発行
編集・発行 一般財団法人 福沢一郎記念美術財団

福沢一郎記念館

【ホームページを移転しました】


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Copyright(c) 2014-2015 FUKUZAWA ICHIRO MEMORIAL FOUNDATION
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※バックナンバーは記念館ホームページでご覧いただけます。
※配信停止を希望される場合はそのままご返送ください。
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メールマガジン第6号(2015年3月16日発行)

=======================================2015/03/16
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福沢一郎記念館 メールマガジン No.6
FUKUZAWA Ichiro Memorial Museum
– Setagaya,Tokyo
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□■□  現在当館は、閉館中です  □■□
■□■ 次の開館は5月末の予定です ■□■

[1] あらたな試み 福沢一郎記念館の展示が変わる!? 
[2] ココで観られる福沢一郎作品
[3] コラム 福沢一郎の書架から(6)
[4] 賛助会員のお誘い

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[1]
□ あらたな試み 福沢一郎記念館の展示が変わる!? 
 ー21年めの挑戦
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昨年、開館20周年を迎えた福沢一郎記念館は、今年あらたな試
みをスタートさせます。
多摩美術大学油画専攻の卒業生と、女子美術大学大学院美術専
攻(洋画・版画)修了生の成績優秀者にお贈りしてきた「福沢
一郎賞」が、今年20回めを迎えます。それを記念して、歴代受
賞者の皆様に当館を個展会場としてご提供する期間を設けるこ
とにいたしました。
作家の選定や実施期間などはまだ未定ですが、4月には皆様に
お知らせできることと思います。
また、このような試みをつうじて、画家福沢一郎とその作品が
けっして過去のものではなく、現在も息づいているということ
を、さらにお知らせできるよう、今後もささやかながら活動を
継続してまいります。

詳しくは当館ホームページにて。こうご期待!

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[2]
□ ココで観られる福沢一郎作品
《餓鬼のわるだくみ》 1972年 アクリル・カンヴァス
 179×227cm 愛知県美術館

濃く暗い藍色の空に、妙に明るい黄色の大地。強烈なコントラ
ストの風景に、おなかの大きな餓鬼たちが転がって、なにやら
相談をしているようです。手足と身体のアンバランスな餓鬼た
ちは、グロテスクではありますが、どことなく滑稽で、笑いす
ら誘うようなすがたで描かれています。
この作品の初出品は1973年の個展「地獄への誘い」(5/8-20、
東京セントラル美術館)です。同展出品作の多くは源信の『往
生要集』に着想を得て描かれた、地獄や餓鬼道の世界でした。
しかし、福沢はただ説話の場面どおりに描くことはしません。
彼はいくつかの餓鬼のすがたに、現代の世相を重ねています。
同展のカタログに寄せた福沢の文章には「往生要集をふみ越え
て私は現代散歩を試みたが、それ等の作はどこの国の事かなど、
せんさくする必要はない。ただ私の幻想であると申し上げてお
く。」とあります。社会のなかで愚かしくもたくましくうごめ
く人々のすがたを餓鬼に重ね、画家は諷刺といくばくかの愛情
をも込めて、この絵を描いたのかもしれないですね。

本作品は愛知県美術館のコレクション展示「グロテスク・モデ
ルヌ」にて展示中、4/5まで開催。企画展「ロイヤル・アカデ
ミー展」もあわせてどうぞ。

作品画像は、当館ホームページの「作品集」から。

https://fukuzmm.wordpress.com/works/

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[3]
□ コラム 福沢一郎の書架から(6)
 
サルバドール・ダリ著、足立康訳、瀧口修造監修
『わが秘められた生涯』、新潮社、1981年

いわゆる「シュルレアリスム」の画家として有名な、鬼才サル
ヴァドール・ダリの自伝です。1981年刊行と、ずいぶん新しい
書籍ですが、英語の初版が出版されたのは1942年のこと。その
後、瀧口修造による抄訳が1953年10月の『藝術新潮』に掲載さ
れましたが、単行本として出版されるまでじつに28年もの歳月
を必要としました。
1930年代、前衛美術の紹介者・擁護者として活躍していた福沢
は、著書や雑誌記事などで事あるごとにダリの紹介をおこなっ
ていますが、戦後になると「ダリをめぐって」(『美術手帖』
第14号 1949年2月)を最後にめぼしいものはなくなります。
自身をシュルレアリストではないと述べていた福沢にとって、
ダリは過去の人となっていったのでしょうか。
そんなダリの自伝を、80を超えた福沢はどんな気持ちで読んだ
のでしょう。先に挙げた「ダリをめぐって」で「何といっても
執拗でたくましくて描写力を持ち、独断と奇想に満ちた理屈を
こねる点で当代無比」とダリを評した福沢は、同じ時代を駆け
抜けた鬼才に、ある種の親しみをもっていたのかもしれません。

本書は現在新刊での発売なし。興味のあるかたは図書館または
古書店へ!

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[4]
□ 賛助会員のお誘い

一般財団福沢一郎記念美術財団では、その美術振興活動をより
広範囲に、積極的にすすめるために、賛助会員を募っています。
一人でも多くの方に参加していただくことで、若い美術家の顕
彰、美術研究への助成など財団の活動が充実しますので、どう
ぞよろしくお願いいたします。

◯賛助会員の区分と会費
(1) 一般会員 3,000円(年会費)
(2) 維持会員 30,000円(年会費)
(3) 特別会員 300,000円(永久会員)

◯特典
(1) 福沢一郎記念館入館料無料
(2) 福沢一郎記念館ニュース送付
(3) 記念館主催の催し物に優先的にご招待

◯会費のお振込先
●郵便局振替口座 00190-2-695591
 福沢一郎記念館
●りそな銀行 祖師谷支店 普通口座 1000201
 (一財) 福沢一郎記念美術財団

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福沢一郎記念館 メールマガジン No.6
2015年3月16日発行
編集・発行 一般財団法人 福沢一郎記念美術財団

福沢一郎記念館

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メールマガジン第5号(2015年2月21日発行)

=======================================2015/02/21
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福沢一郎記念館 メールマガジン No.5
FUKUZAWA Ichiro Memorial Museum
– Setagaya,Tokyo
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□■□  現在当館は閉館中です  □■□
■□■ 次の開館は6月の予定です ■□■

[1] 他館展覧会のご報告 沖縄・那覇市の「福沢一郎展」
[2] ココで観られる福沢一郎作品
[3] コラム 福沢一郎の書架から(5)
[4] 賛助会員のお誘い

――――――――――――――――――――――――――――
[1]
□ 他館展覧会のご報告
 「福沢一郎展 ―沖縄の子どもたちへ贈られた34点―」
  @那覇市民ギャラリー(2/3~8, 2015)

今月はじめに那覇市民ギャラリーにて行われた、福沢一郎展。
1960年代前半の、雑誌『太陽』創刊記念特集のために描かれた
34点が展示され、わずか一週間の会期ながら、600人を超える
入場者があったとのことです。
日本人のルーツを絵で見るような展示となり、観覧者の中から
はレキシ「狩りから稲作へ」がテーマソングだ!との指摘も。
沖縄の皆さんにとって、さまざまな角度から福沢作品に親しん
でいただく良い機会となりました。
最終日の8日(日)には、富岡市立美術博物館・福沢一郎記念
美術館館長の染谷滋さんによる講演会がありました。当館から
は館長の福沢一也夫妻が聴講。福沢一郎の画業と展示作品につ
いて、たっぷりとお話いただき、充実した講演だったとのこと。
貴重な時期の福沢作品、今度はぜひ東京などでも展示が実現す
るといいなと思います。

展覧会の会場風景は、記念館ホームページに掲載中。
https://fukuzmm.wordpress.com/2015/02/12/report_2015naha/

――――――――――――――――――――――――――――

――――――――――――――――――――――――――――
[2]
□ ココで観られる福沢一郎作品
陶板壁画《だるまの歌》 1982年 @高崎駅西口

群馬県の玄関口、高崎駅。JR上越・長野新幹線と在来線3路線
(分岐線も含めると6路線)と私鉄1路線が乗り入れる、県内で
最も規模の大きな駅です。
この駅の西口を出た北側の一角に、縦6m、横8.1mに及ぶ巨大
な壁画があります。福沢一郎が原画を担当した陶板壁画「だる
まの詩(うた)」です。
この壁画は「上越新幹線開業・高崎駅新駅舎完成」を記念し、
1982年に作られました。造型を担当したのは日本国内で数多く
の壁画やステンドグラスを手がけた芸術家ルイ・フランセン。
壁画のポイントはなんといっても愛嬌たっぷりのだるま達。福
沢は「問題のだるまは、面白く見せるためには、さまざまの表
現を持たせる必要がある。喜怒哀楽の個性的感情をそなえただ
るま達が、陶板の中から高崎駅乗降の御客に、愛嬌を振りまく
という趣向が面白いと思う。ようこそ群馬へというわけである」
と、だるま達に込めた思いを語っています。
重厚な陶板のなかで、思わず笑ってしまうような、ひょうきん
な表情をみせるだるま達。他の福沢作品とはちょっと違った魅
力があります。群馬高崎におでかけの際には、福沢のだるまを
お見逃しなく!

本作品は高崎駅西口ロータリー北側に設置中。いつでも見られ
ます。また、「福沢一郎 だるま」で検索すると、画像がたく
さんヒットしますので、ぜひ試してみてください。

――――――――――――――――――――――――――――

――――――――――――――――――――――――――――
[3]
□ コラム 福沢一郎の書架から(5)
 柳田国男『海上の道』(筑摩書房版)
 筑摩書房 1961年

「名も知らぬ 遠き島より…」という島崎藤村作詞の唄「椰子
の実」のヒントとなった、かの有名な民俗学者柳田國男の体験
談。この体験は柳田最後の著書である本書の巻頭論文「海上の
道」に昇華されました。『遠野物語』と並び、最も有名な柳田
の著作です。
本書の見返しには「一九六二年四月二十九日ー五月四日聖ルカ
病院にてこれを讀む 福沢一郎」と書き込みがあります。どう
やら入院中に読んでいたようですね。
さて、ちょうどこの頃、福沢には平凡社から雑誌『太陽』の挿
絵の依頼が入っていました。そう、最初の記事でもご紹介した
那覇市所蔵作品、つまり「日本人はどこからきたか」と「日本
文化のあけぼの」のために描かれた挿絵です。
南方より琉球諸島を経て、稲作とともに日本人のルーツのひと
つがやってきたという柳田の仮説は、『日本人はどこからきた
か』の挿絵に取りかかろうとしていた福沢に、さまざまなイメ
ージを提供したことでしょう。知を積み重ね、画面のバックボ
ーンとした福沢の制作姿勢がよくわかります。
ちなみに、柳田国男の旧宅は成城にあり、福沢一郎記念館から
は歩いて15~20分ほどの距離。現在、書斎跡には緑陰館とい
うギャラリーがあり、さまざまな展覧会が行われています。

――――――――――――――――――――――――――――

――――――――――――――――――――――――――――
[4]
□ 賛助会員のお誘い

一般財団福沢一郎記念美術財団では、その美術振興活動をより
広範囲に、積極的にすすめるために、賛助会員を募っています。
一人でも多くの方に参加していただくことで、若い美術家の顕
彰、美術研究への助成など財団の活動が充実しますので、どう
ぞよろしくお願いいたします。

◯賛助会員の区分と会費
(1) 一般会員 3,000円(年会費)
(2) 維持会員 30,000円(年会費)
(3) 特別会員 300,000円(永久会員)

◯特典
(1) 福沢一郎記念館入館料無料
(2) 福沢一郎記念館ニュース送付
(3) 記念館主催の催し物に優先的にご招待

◯会費のお振込先
●郵便局振替口座 00190-2-695591
 福沢一郎記念館
●りそな銀行 祖師谷支店 普通口座 1000201
 (一財) 福沢一郎記念美術財団

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福沢一郎記念館 メールマガジン No.5
2015年2月21日発行
編集・発行 一般財団法人 福沢一郎記念美術財団

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メールマガジン第4号(2015年1月17日発行)

=======================================2015/01/17
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福沢一郎記念館 メールマガジン No.4
FUKUZAWA Ichiro Memorial Museum
– Setagaya,Tokyo
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□■□  現在当館は閉館中です  □■□
■□■ 次の開館は6月の予定です ■□■

[1] 展覧会のお知らせ 沖縄・那覇で福沢作品に出会う(再)
[2] ココで観られる福沢一郎作品
[3] コラム 福沢一郎の書架から(4)
[4] 賛助会員のお誘い

――――――――――――――――――――――――――――
[1]
□ 展覧会のお知らせ
 沖縄・那覇で福沢一郎作品に出会う!(再)
 「福沢一郎展 ―沖縄の子どもたちへ贈られた34点―」
  @那覇市民ギャラリー(2/3~8, 2015)
  ※副題が変更になったそうです
――――――――――――――――――――――――――――

前号でもお知らせした、那覇市での福沢一郎の展覧会。会期ま
であと2週間あまりとなりました。
今回展示されるのは、平凡社の雑誌『太陽』の創刊を記念した
連載記事「日本人はどこからきたか」及び「日本文化のあけぼ
の」のために描かれた、1962-4年頃の作品34点。50年代末か
ら60年代初頭、福沢は抽象的な絵画表現を試みていたのですが、
今回の展示作品は雑誌記事の挿絵ということもあり、より具体
的な描写が求められるものとなっています。さて画家はどのよ
うにして制作に挑んだのでしょう。詳しくはぜひ展覧会場にて。
会場となる那覇市民ギャラリーは、那覇市の中心部に位置し、
観光スポットとしても有名な国際通りにほど近く、移動にも便
利なところです。沖縄観光とあわせて、福沢作品の新たな一面
にふれる旅というのはいかがでしょう?

会 場:那覇市民ギャラリー
    沖縄県那覇市久茂地1-1-1 パレットくもじ6階
    電話098-867-7663
会 期:2月3日(火)~8日(日) 会期中無休
    午前10時~午後7時
観覧料:無料

※ 2月8日(日)には、富岡市立美術博物館・福沢一郎記念美術
館館長の染谷滋さんによるギャラリートークがおこなわれます。
午後3時~4時半の予定。

――――――――――――――――――――――――――――
[2]
□ ココで観られる福沢一郎作品
《失楽園》 1980年 @山梨県立美術館

ミレーの作品でつとに有名な山梨県立美術館。ここに福沢一郎
の作品が所蔵されており、しかも常にご覧いただくことができ
るのです。同館1の階ロビーに設置されている、縦2m90cm、
横9mの巨大な《失楽園》です。
タイトルが示すとおり、この作品は17世紀イギリスの詩人・思
想家ジョン・ミルトンによる旧約聖書をテーマとした長編叙事
詩『失楽園』に着想を得たもので、左から右へと場面が流れる
パノラマ画というべき構成をとっています。
不思議なのは、楽園追放の場面で必ず描かれる天使ミカエルの
すがたが描かれていないことです。跳梁跋扈する悪魔と、森か
ら逃げ出す動物、そして走り去るアダムとイヴのすがたがある
だけなのです。
ミルトンの『失楽園』には、絶対的な存在としての神に抗い、
立ち向かう悪魔のすがたが、人間臭くいきいきとあらわされて
います。かつて「地獄図は描けても、天界のそれはむずかしい。
フィフス・アベニューよりもハーレムに、天衣よりもつづれに、
従順よりも反逆に、美は閃光を放つのではないか」と語った福
沢にとって、ミルトンの悪魔達は強い共感をよぶものだったの
ではないでしょうか。だからこそ、あえて天使を描かずに、う
ごめく悪魔のすがたで画面の多くを埋めたのでしょう。
アダムとイヴの追われてゆく先も、空虚ではありますが明るい
空が広がり、悲壮感ただよう世界というわけでもなさそうです。
愚かな人間の歴史のはじまりに寄せた福沢の思いが、背景の花
となってふたりに彩りを添えています。
82歳の福沢が挑んだ「失楽園」の世界。この大画面をぜひ山梨
で体感してみてください。
本作品は同館ロビーにて、開館日ならいつでも見られます。

作品画像は記念館ホームページに掲載中。
http://fukuzmm.wordpress.com/2011/10/11/1980_paradise_lost/

山梨県立美術館公式ホームページはこちら↓
http://www.art-museum.pref.yamanashi.jp

――――――――――――――――――――――――――――

――――――――――――――――――――――――――――
[3]
□ コラム 福沢一郎の書架から(4)
 Paul MacKendrick, The Greek Stones Speak,
 Paperback, Mentor Books, New York, 1966.

福沢の蔵書には洋書が数多くあり、その内容は美術書だけでな
く文学や人類学、考古学など多岐にわたっています。本書はギ
リシャの考古学に関する概説書で、本文はほぼ年代順に記述さ
れ、豊富な図版や地図などにより古代ギリシャ文明をわかりや
すく解説しています。
福沢は1970年にギリシャを旅行し、帰国後にかの地での取材を
もとに大作を次々と制作します。本書は1962年に初版が、1966
年にはペーパーバックが刊行されているので、おそらくは旅行
の前後で手に入れ、制作の参考にしていたのでしょう。
1962年当時の書評で、シカゴ大学の考古学教授ロバート・スク
ラントンは本書についていくつかの誤りを指摘しつつも「プロ
でない考古学者にとっては、まことに使いやすく価値ある旅行
ガイドである」と述べています。福沢が旅先で得たイメージを
膨らませ制作へと繋げるためにはおおいに役立ったのではない
かと思われます。
福沢は旅行の同年11月に個展「石は語る-ギリシャの旅-」を
開催し、この年の成果であるギリシャ及び西欧での取材の成果
を発表します。そこには底抜けに明るく躍動感にあふれた古代
神話の世界が広がっていました。
この個展のタイトルは、ひょっとするとこの書物に着想を得た
ものかもしれませんね。

1970年のギリシャ神話から主題を得た作品は、記念館ホーム
ページで2作品の画像を公開中。↓

https://fukuzmm.wordpress.com/works/

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――――――――――――――――――――――――――――
[4]
□ 賛助会員のお誘い

一般財団福沢一郎記念美術財団では、その美術振興活動をより
広範囲に、積極的にすすめるために、賛助会員を募っています。
一人でも多くの方に参加していただくことで、若い美術家の顕
彰、美術研究への助成など財団の活動が充実しますので、どう
ぞよろしくお願いいたします。

◯賛助会員の区分と会費
(1) 一般会員 3,000円(年会費)
(2) 維持会員 30,000円(年会費)
(3) 特別会員 300,000円(永久会員)

◯特典
(1) 福沢一郎記念館入館料無料
(2) 福沢一郎記念館ニュース送付
(3) 記念館主催の催し物に優先的にご招待

◯会費のお振込先
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●りそな銀行 祖師谷支店 普通口座 1000201
 (一財) 福沢一郎記念美術財団

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福沢一郎記念館 メールマガジン No.4
2015年1月17日発行
編集・発行 一般財団法人 福沢一郎記念美術財団

福沢一郎記念館

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※バックナンバーは記念館ホームページでご覧いただけます。
※配信停止を希望される場合はそのままご返送ください。
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メールマガジン第3号(2014年12月14日発行)

=======================================2014/12/14
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福沢一郎記念館 メールマガジン No.3
FUKUZAWA Ichiro Memorial Museum
– Setagaya,Tokyo
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□■□ 現在当館は閉館中です □■□
■□■ 次の開館は来年春です ■□■

[1] 2014年秋の展覧会、終了しました
[2] 展覧会のお知らせ 沖縄・那覇で福沢一郎作品に出会う!
[3] コラム 福沢一郎の書架から(3)
[4] 賛助会員のお誘い

————————————————————————————
[1]
□ 2014年秋の展覧会、終了しました
開館20周年記念
「福沢一郎と山下菊二 師弟は時代とどう向き合ったか」

http://fukuzmm.wordpress.com/2014/10/02/fukuz_kikuji_2014a/

————————————————————————————

11月いっぱい行われた当館の開館20周年記念特別展示「福沢一
郎と山下菊二 師弟は時代とどう向き合ったか」は、無事終了
いたしました。期間中足をお運びくださったみなさま、どうも
ありがとうございました。
福沢一郎と山下菊二、戦後日本を代表するふたりの画家の作品
によって、とても刺激的な空間が生まれました。また、日本の
近現代美術を研究する方々からもさまざまなご意見をいただき、
小粒ながらも意義ある展示となったのではないかと自負してお
ります。今回は日曜日も開館したおかげで、たくさんの方々に
ご覧いただくことができました。
11/16に、徳島県立近代美術館の江川佳秀さんをお迎えして開
催したトークの会も、満員御礼で、よいお話になったと高評価
をいただきました。こちらはいずれ記念館ニュースでその内容
をご報告いたしますので、お楽しみに。

当館は来年春まで休館となります。また刺激的な展覧会を見て
いただけるよう、スタッフ一同がんばります!

展覧会場風景をホームページにアップいたしましたので、どう
ぞご覧ください。↓

http://fukuzmm.wordpress.com/2014/11/23/2014a_f_y_view/

「トークの会」報告はこちら↓
https://fukuzmm.wordpress.com/2014/11/29/talk_fy_20141116/

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[2]
□ 展覧会のお知らせ
 沖縄・那覇で福沢一郎作品に出会う!
 「福沢一郎展 ―沖縄少年会館へ寄贈の34点―」
  @那覇市民ギャラリー(2/3〜8, 2015)

来年2月、沖縄県の那覇市民ギャラリーで、福沢一郎の展覧会
が開催されることになりました。
今回展示されるのは、1966(昭和41)年、本土復帰前の沖縄
に、平凡社の当時の社長下中邦彦氏から贈られたもので「沖縄
少年会館」という施設に展示されていました。
この作品34点は、雑誌『太陽』の創刊を記念した特集記事のた
めに制作されたもので、主に古代日本の人々のすがたが描かれ
ています。それらは画家にとってどんな意味をもつものなのか、 
またなぜ沖縄にこの作品群が寄贈されたのか? 
単なる雑誌の挿絵と片付けてしまうにはもったいない、さまざ
まな謎を含んだこの作品群、すべて揃って展示されるのは非常
に貴重な機会です。しかも会期はわずか1週間!
来年2月は、あったかい沖縄で福沢作品に出会う旅など、企画
してみてはいかがでしょうか?

※ なお開催館でのオフィシャルな告知は来月の予定です。

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[3]
□ コラム 福沢一郎の書架から(3)
 『風俗画報 臨時増刊 江戸乃花』(上中下巻)
 東陽堂出版、1898(明治31)年12月〜1899年2月

昭和初期の前衛絵画をリードした福沢の蔵書に、こうしたいか
にもオールドファッションな書物があるのは、少し意外な気も
します。しかもこの三冊、福沢自身の手によってまとめて製本
され、表紙まで付けられているのです。
茶色い紙の表紙には「福沢蔵書 まとい」と書かれており、こ
のことばが、書物の謎を解く鍵になりました。
1934(昭和9)年の福沢の作品に《江戸の花》と題したものが
あります。画面下半分に、江戸火消しの纏や鳶口、梯子などが
密集するように描かれています。このモティーフのほとんどが
この書物の『上巻』から図像を引用して描かれていることがわ
かりました。
『風俗画報』は明治以降の日本人にとって重要なヴィジュアル
マガジン。マックス・エルンストが『ラ・ナチュール』などの
市井にあふれる書物を作品に用いた意図と非常に近しいものを
福沢も持っていたようですね。
1931年以降福沢の作品にあらわれる、遊女や武者、僧侶など
日本独特のモティーフは、そのイメージソースがまだ特定され
ていないものが多いのです。この書物を端緒として、それらの
謎が解明されていくかもしれません。

作品《江戸の花》の画像は記念館ホームページで公開中↓

https://fukuzmm.wordpress.com/2011/10/11/edoflower_1934/

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[4]
□ 賛助会員のお誘い

一般財団福沢一郎記念美術財団では、その美術振興活動をより
広範囲に、積極的にすすめるために、賛助会員を募っています。
一人でも多くの方に参加していただくことで、若い美術家の顕
彰、美術研究への助成など財団の活動が充実しますので、どう
ぞよろしくお願いいたします。

◯賛助会員の区分と会費
(1) 一般会員 3,000円(年会費)
(2) 維持会員 30,000円(年会費)
(3) 特別会員 300,000円(永久会員)

◯特典
(1) 福沢一郎記念館入館料無料
(2) 福沢一郎記念館ニュース送付
(3) 記念館主催の催し物に優先的にご招待

◯会費のお振込先
●郵便局振替口座 00190-2-695591
 福沢一郎記念館
●りそな銀行 祖師谷支店 普通口座 1000201
 (一財) 福沢一郎記念美術財団

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福沢一郎記念館 メールマガジン No.3
2014年12月14日発行
編集・発行 一般財団法人 福沢一郎記念美術財団

福沢一郎記念館

【ホームページを移転しました】


facebook: https://www.facebook.com/fukuzmuseum

Copyright(c) 2014 FUKUZAWA ICHIRO MEMORIAL FOUNDATION
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※バックナンバーは記念館ホームページでご覧いただけます。
※配信停止を希望される場合はそのままご返送ください。
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メールマガジン第2号(2014年11月13日発行)

=======================================2014/11/13
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福沢一郎記念館 メールマガジン No.2
FUKUZAWA Ichiro Memorial Museum
– Setagaya,Tokyo
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□■□ 現在当館は開館中です □■□
■□■ 開館日は日月水金です ■□■

[1] 開催中!2014年秋の展覧会
[2] ココで観られる福沢一郎作品
[3] コラム 福沢一郎の書架から(2)
[4] 賛助会員のお誘い

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[1]
□ 開催中! 2014年秋の展覧会
開館20周年記念
「福沢一郎と山下菊二 師弟は時代とどう向き合ったか」

http://fukuzmm.wordpress.com/2014/10/02/fukuz_kikuji_2014a/

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開館20周年にして初めて、福沢一郎以外の作家の作品が展示さ
れた、記念すべき今回の展覧会、やはりとても刺激的な空間と
なりました。
福沢一郎と山下菊二、ふたりの作風はまさに対照的なのですが、
それぞれの個性は失わず、非常にいいバランスで輝きを放って
います。
注目は福沢一郎《フクロウ》。小品ながら、山下菊二との関係
をあれこれ想像させる、とても面白い作品です。また、山下の
《日本の敵米国の崩壊》も、福沢との繋がりを強く感じる貴重
な作例。ぜひ解説パネルを読みながらお楽しみください。
皆様のご来館をお待ちしております。

会 期:11月2日(日)〜30日(日)の日・月・水・金・曜日
    午前11時〜午後5時
観覧料:300円
協 力:日本画廊

※トークの会「福沢一郎と山下菊二 いま語る・その実像」
 11月16日(日)午後2時〜3時30分 は、定員になりました
 ので受付を締め切らせていただきました。

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[2]
□ ココで観られる福沢一郎作品
《敗戦群像》 1948年 @群馬県立近代美術館

福沢一郎の作品としては、おそらく一番露出度の高いものだと
思います。でも所蔵館で常に見られるわけではありません。
たまに国内外の展覧会のために旅に出ることがあるので、保存
のため頻繁に展示することが難しいのです。だから常設で見ら
れたらむしろラッキー!
荒涼とした大地に裸体がうず高く積み上げられ、複雑にからみ
合っています。いったいいくつの人体があるでしょう?という
クイズを出したくなりますが、はい、実際どうなのかは判りま
せん。あしからず。
この作品、福沢の代表作と目されていますが、まだ解明されて
いない謎があります。タイトルの《敗戦群像》は、発表当時に
は「敗戦の記念碑」だったり「群像」だったりと、一定してい
ません。また、人体のピラミッドの頂上にある頭部は、古い図
版にはみられないものです※。とすれば、のちに描き足された
ものでしょうか? いったいいつ頃? 謎は尽きません。
そのぶん見る楽しみも尽きないですね。
展示期間は12月14日(日)まで。

作品画像は記念館ホームページに掲載中。
http://fukuzmm.wordpress.com/2011/09/09/1948_haisen/

※ 例えば、針生一郎『芸術の前衛』(弘文堂、1970年)冒頭
の図版《群像》1948年 を参照のこと。

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[3]
□ コラム 福沢一郎の書架から(2)
 阿部次郎著『地獄の征服』〈文芸評論 第一輯〉
 岩波書店、1922(大正11)年

なかなかショッキングなタイトルですが、中身は著者のゲーテ
『ファウスト』とダンテ『神曲』に関する講義録が中心の論文
集です。
著者の阿部次郎は哲学者・美学者。『三太郎の日記』(合本、
岩波書店、1918年)は大正期の学生たちに大きな影響を与え
た「自己省察の書」と評されています。
本書中「ダンテの『神曲』とニイチェの『ツァラツストラ』」
ではダンテの「高貴の道徳」「正義」「敬虔」とニーチェのそ
れらについての対比が述べられており、二高時代にニーチェ論
で名高い登張信一郎の指導を受けた福沢などには興味深いもの
であったと想像されます。また「ダンテ雑話」や「神曲入門」
などの章は終戦直後に制作された「ダンテ神曲地獄篇による幻
想」の連作を描くのにおおいに役立ったのではないかと思われ
ます。

なお、福沢の旧蔵書内には阿部の『三太郎の日記』は見当たり
ませんが、この書には以下のような記述があり、なんとなく福
沢の「ダンテ神曲〜」を描く際の心情と通ずるものがあるよう
に思われるのです。

「地獄を見ないものは地獄が描けない。地獄を忘れたものも地
獄が描けない。地獄にゐるものも亦地獄が描けない。地獄を通
つて來て而も現在鮮かに地獄を「觀」てゐるものにして始めて
地獄は描けるのである。」

福沢は『地獄の征服』だけでなく、『三太郎の日記』も愛読し、
清廉な気風で『人格主義』を提唱した阿部の思想にもある程度
共感していたのではないでしょうか。彼の思想の背景を知るう
えでも興味深い書物です。

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[4]
□ 賛助会員のお誘い

一般財団福沢一郎記念美術財団では、その美術振興活動をより
広範囲に、積極的にすすめるために、賛助会員を募っています。
一人でも多くの方に参加していただくことで、若い美術家の顕
彰、美術研究への助成など財団の活動が充実しますので、どう
ぞよろしくお願いいたします。

◯賛助会員の区分と会費
(1) 一般会員 3,000円(年会費)
(2) 維持会員 30,000円(年会費)
(3) 特別会員 300,000円(永久会員)

◯特典
(1) 福沢一郎記念館入館料無料
(2) 福沢一郎記念館ニュース送付
(3) 記念館主催の催し物に優先的にご招待

◯会費のお振込先
●郵便局振替口座 00190-2-695591
 福沢一郎記念館
●りそな銀行 祖師谷支店 普通口座 1000201
 (一財) 福沢一郎記念美術財団

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福沢一郎記念館 メールマガジン No.2
2014年11月13日発行
編集・発行 一般財団法人 福沢一郎記念美術財団

福沢一郎記念館

【ホームページを移転しました】


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メールマガジン第1号(2014年10月17日発行)

=======================================2014/10/17
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福沢一郎記念館 メールマガジン No.1
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– Setagaya,Tokyo
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□■□ 現在当館は閉館中です □■□
■□■ 次の開館は11月です ■□■

[1] 予告! 2014年秋の展覧会
[2] ココで観られる福沢一郎作品
[3] コラム 福沢一郎の書架から(1)

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[1]
□ 予告! 2014年秋の展覧会
開館20周年記念
「福沢一郎と山下菊二 師弟は時代とどう向き合ったか」

http://fukuzmm.wordpress.com/2014/10/02/fukuz_kikuji_2014a/

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骨太な造形力と旺盛な批判精神によって、人間のすがたを描き
続けた福沢一郎。社会や制度の矛盾を凝視し、その奥底にある
ただならぬ世界を描き出した山下菊二。日本の近現代美術を語
るうえで欠かすことのできないふたりの画家のあいだに、とて
も深いつながりがあったことは、案外知られていないのではな
いでしょうか?
福沢は1936(昭和11)年に「福沢一郎絵画研究所」を開設し、
後進の指導にあたりますが、山下はここに19歳で入門します。
以来山下は福沢を師と仰ぎ、事あるごとに福沢を訪ねています。
ふたりの関係はどんなものだったのでしょう。また、山下が福
沢から学んだものは何なのでしょう。今回はそれを、時代と向
き合う姿勢、あるいは時代を見つめる眼に着目し、それぞれ5
点の作品と関連資料によってさぐってみようと思います。
当館の開館20周年を記念しておこなわれるこの企画、福沢一郎
以外の画家の作品が当館で初めて!展示されます。ふたりの作
品によって、刺激的な場が生まれることでしょう。
ご来館をお待ちしております。

会 期:11月2日(日)〜30日(日)の日・月・水・金・曜日
    午前11時〜午後5時
観覧料:300円
協 力:日本画廊

☆トークの会「福沢一郎と山下菊二 いま語る・その実像」☆
日 時:11月16日(日)午後2時〜3時30分
話り手:江川佳秀(徳島県立近代美術館 学芸調査課長)
    伊藤佳之(当館非常勤嘱託)
会 費:1,500円

山下菊二の作品・資料を多数所蔵する徳島県立近代美術館で、
長らく山下の調査・研究に携わってきた江川さんと、福沢一郎
の研究者である当館の伊藤が、それぞれの画業とふたりの関わ
りについて語ります。

※要予約、11月2日から受付開始、先着40名様。
 お申込みは電話のみにて承ります。 03-3415-3405 まで。

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[2]
□ ココで観られる福沢一郎作品
《装へる女》 1929年 @富岡市立美術博物館・福沢一郎記念美術館

遺族のもとで長らく保管されていたこの作品は、おととし同館
に寄贈され、昨年の修復を経て今回の展示となりました。
第16回二科展(1929年)の入選作であり、当時の美術雑誌にも
図版が載っています。福沢一郎の、日本洋画壇デビュー作のひ
とつともいえるこの作品、青みがかった女性の肌といい、左右
対称のポーズといい、背景の処理といい…ちょっと不気味で、
ちょっと不思議な作品です。
画面右下には「Fouk. -27(29?)/福沢」という記載があり、
サインにアルファベットと漢字の両方が使われているのが面白
いですね。
今年11月3日まで展示予定とのこと。お見逃しなく!

富岡市立美術博物館・福沢一郎記念美術館 「現在の展示」に
画像があります。
http://www.city.tomioka.lg.jp/www/contents/1000000001919/index.html

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[3]
□ コラム 福沢一郎の書架から(1)
 福沢一郎著『秩父山塊』アトリエ社 1944(昭和19)年

第1回めが福沢自身の著書で恐縮なのですが、最近話題の本な
ので、ぜひここで紹介させてください。
本書は、タイトルのとおり埼玉県秩父地方の紀行文と挿絵で構
成されています。終戦の前年の刊行ですから、物資統制厳しき
折、このような贅沢な本の刊行は大変だったことでしょう。
元埼玉県立自然の博物館館長の本間岳史さんによれば、福沢は
秩父地方を旅行するにあたって「地域に関する地質論文等をよ
く読み(中略)場所によっては自分なりに地質学的な疑問や課
題を設定してから現地を訪ねている」とのことで、参照した当
時最新の論文なども特定されています※。
地質学者も驚嘆するほどの知識を持ち、秩父の自然を鋭く観察
した福沢の科学的な視線が本書にはよくあらわれていますが、
地域の人々の暮らしに向けたまなざしや、故郷富岡に寄せる思
いも、文章のはしばしに見受けられます。そうした文章を読み
ながら、素早い筆致で描かれた秩父の風景をみていくと、ひと
り思索にふけりながら歩みをすすめる画家のすがたがじんわり
と頭に浮かんでくるようです。
戦時下の厳しさも一抹のほろ苦さとなって本書に味わいを加え
ており、さまざまな楽しみ方ができる一冊といえましょう。
当然のことながら、オリジナルは古本でしか手に入りませんが、
1998年に池内紀さんの「ちいさな図書館」シリーズで復刊され
ているので※※、手軽に、しかもコンパクトなサイズで読むこと
ができます。
美術ファンのみならず、山歩き好きな方や紀行文をよく読む方
にもおすすめの本書。ぜひ一度手にとってみてください。

※本間岳史「画家・福沢一郎と地質学ー画集『秩父山塊』からー」
『地学教育と科学運動』72号 地学団体研究会 2014年6月
※※ 池内紀編・解説『福澤一郎の秩父山塊』〈池内紀のちい
さな図書館〉 五月書房 1998年

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福沢一郎記念館 メールマガジン No.1
2014年10月17日発行
編集・発行 一般財団法人 福沢一郎記念美術財団

福沢一郎記念館

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facebook: https://www.facebook.com/fukuzmuseum

Copyright(c) 2003-2014 FUKUZAWA ICHIRO MEMORIAL FOUNDATION
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