メールマガジン第8号(2015年5月18日発行)

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福沢一郎記念館 メールマガジン No.8
FUKUZAWA Ichiro Memorial Museum
– Setagaya,Tokyo
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□■□  現在当館は、閉館中です  □■□
■□■ 次の開館は5月末の予定です ■□■

[1] 「PROJECT dnF」第1回 照沼敦朗「惑星の端」 
[2] ココで観られる福沢一郎作品
[3] コラム 福沢一郎の書架から(8)
[4] 賛助会員のお誘い

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[1]
□ 2015年春の展示
 「PROJECT dnF -「福沢一郎賞」受賞作家展-」
  第1回 照沼敦朗「惑星の端」
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歴代の「福沢一郎賞」受賞者に記念館のギャラリーを個展会場
として提供する試み「PROJECT dnF」がはじまります。
この春は、照沼敦朗(2007年受賞)と室井麻未(2014年受賞)
のふたりが展示をおこないます。今号では照沼敦朗(てるぬま
・あつろう)をご紹介しましょう。

照沼敦朗は多摩美術大学油画専攻の卒業生ですが、在学中から
平面作品よりもアニメーションの制作に力を入れてきました。
2008年から本格的に作家活動を開始、ギャラリーでの個展や
グループ展のほか、映像作品のコンペティションにも積極的に
参加してきました。2011年、「第14回岡本太郎現代美術賞」展
で、映像を取り入れたインスタレーション「見えるか?」が特
別賞を受賞します。
照沼の映像作品は、モノクロームを基調として、都市の雑踏の
なかをキャラクターが旅するような趣向でつくられてきました。
そこには巨大な構造物としての都市と、そのなかでうごめく人
間の存在が、「視覚」の問題を中心にえがかれます。視覚で捉
えられる世界とその裏側にあるさまざまな問題を、時にはあか
らさまに、時にはひそやかに、うねるようなタッチを活かした
映像で表現しています。
今回、照沼は3つの映像に平面作品を組み合わせたインスタレー
ションを制作します。特に映像は、これまで前面に出ることの
少なかった鮮やかな色彩が、造形表現の大きなポイントなって
います。
福沢一郎のアトリエで、作家の意欲的な試みはどんなすがたを
あらわすのでしょうか。ぜひご覧ください。

「PROJECT dnF -「福沢一郎賞」受賞作家展-」
第1回 照沼敦朗「惑星の端」の開催予定は以下のとおり。

5月28日(木) – 6月10日(水) 11:00 – 17:00 無休
オープニングレセプション 5月30日(土)17:00 – 19:00
ギャラリートーク 5月31日(日)14:00 – 15:00

作家の公式ホームページはこちら。
http://www.terunuma-atsuro.com/

室井麻未(むろい・まみ)のご紹介は次号にて。乞うご期待。
記念館ホームページで展覧会の日程等をご覧になれます。
https://fukuzmm.wordpress.com/2015/04/28/dnf_1terunuma_2muroi/

※福沢一郎作品も、奥の部屋に展示いたします。こちらもぜひ
お楽しみください。

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[2]
□ ココで観られる福沢一郎作品
《アニョロ・ブルネレスキを襲う蛇》 1974年
 アクリル・カンヴァス 227.3×181.8cm
 群馬県立近代美術館蔵

「六本足の蛇が一匹彼らの前に飛び出すやいなや、三人の亡者
の一人アニエルの身体に前からぴったりと張りついた。(中略)
そして、見ているうちに、まるで熱せられた蝋のように両者は
密着し、両方の色もまじり合い、両者とも以前とはまったく別
のものになってしまった。(中略)それは蛇のようでもあり、
また人間のようでもあったが、同時にどちらでもないような奇
怪な像をもっていたが、やがてゆっくりと歩き去った。」

ダンテ『神曲物語 上巻』(野上素一訳、現代教養文庫、社会
思想社、1968)の一場面です。盗人が堕ちる地獄でダンテが出
会ったのは、名門の出ながらフィレンツェの街で盗みをはたら
いていた者達でした。この地獄では蛇に噛みつかれた者が蛇に
姿を変え、噛みついた側は人の姿に戻るという悪夢のような業
苦が永遠に続くのです(第二十五曲)。
蛇が人にからみつき、変容していくこのすさまじいシーンを、
福沢はそれ空虚な風景のなかに大きく描き出しています。背景
にみえる大きな壁のような物体は、まるでロダン《地獄の門》
の裏側のようにもみえます。
蛇と人とが溶け合ってひとつになる直前のワンシーンを描くた
めに、福沢は医学書の類から骨格図や筋肉の構造図を引用した
のではないかと考えられています。『解剖学及び外科学著作集』
(原題Opera Omnia Anatomica&Chirurgica, 1725年刊、
オランダ)所載の図版(fig.597)には、本作品とほとんど同
じポーズの人体図があります。また、同じシーンを描いた《蛇
となるアニョロ》(1974年、同館蔵)も、『人体の構造』(原
題De humani corporis fabrica, 1543年刊、バーゼル)
所載の骨格図(p.190)とほぼ同じポーズで描かれています。
造形化が非常に難しい奇想天外なシーンを描くのに、画家が近
世の解剖図を引用したのは、溶けてからみあう肉体の構造から
イメージを広げようとしたのでしょうか。それとも、解剖図が
もともと持っている「死」という寓意的な側面に興味をそそら
れたのでしょうか。
背景の「地獄の門」らしきかたちも含め、いろいろ考えさせら
れる作品です。

本作品は、群馬県立近代美術館のコレクション展示「福沢一郎
ー物語を描くー」にて展示中、6/21まで開催。
展示作品目録(PDF)もダウンロード可能です。

トップページ

作品画像は、当館ホームページの「作品集」から。
https://fukuzmm.wordpress.com/works/

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[3]
□ コラム 福沢一郎の書架から(8)
 
本間正義『随想 ハイトマルスベル』 形象社 1989年

著者の本間正義(1916-2001)は、福沢一郎とゆかりの深い
美術館人のひとりです。東京帝国大学在学中には福沢の絵画研
究所に通い、作画の指導を受けました。戦後は東京国立近代美
術館で学芸員として活躍し、国立国際美術館館長、埼玉県立近
代美術館館長を歴任しました。
この随想集は、『毎日夫人』という月刊誌の連載「芸術随想」
の原稿を中心にまとめられており、著者の美術館人としての見
識の深さや人脈の広さだけでなく、ピリリと効いたウィットと
柔軟な文章力がいかんなく発揮された好著です。
もちろん福沢一郎についての記述もあり、研究所で絵を学んで
いるとき、白皙のプロフェッサーのような「アポロ的」な風貌
と、理屈からはみ出たロマンを求める「ディオニソス的」思考
の両方をみたと述べています。この福沢に対する著者の印象は
後々まで変わることがありませんでした。
さて、この随想集のタイトル「ハイトマルスベル」とは何か。
これはある連載原稿のタイトルで、何やら格調高いドイツ語の
単語のようにも思えますが、実は「昔はやった疑似外語」、つ
まり外国語のように聞こえる駄洒落のようなもので、ハエがと
まれないほどつるつるの禿頭を指すのだそうです。著者自身の
いわば自虐ネタなのですが、ともすれば固い調子になりがちな
連載が、「ハイトマルスベル」執筆後は自由でソフトなものへ
と変わっててきたそうです。
この随想集を献呈された福沢は、どんな面持ちで読んだことで
しょう。かつての生徒のテストを採点するかのように、アポロ
的な理知をもって挑んだでしょうか。それとも、そのウィット
にディオニソス的な笑みを浮かべていたでしょうか。どちらも
福沢らしいような気がします。やはり著者の眼は、福沢一郎の
本質を見抜いていたのでしょうね。

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[4]
□ 賛助会員のお誘い

一般財団法人福沢一郎記念美術財団では、その美術振興活動を
より広範囲に、積極的にすすめるために、賛助会員を募ってい
ます。
一人でも多くの方に参加していただくことで、若い美術家の顕
彰、美術研究への助成など財団の活動が充実しますので、どう
ぞよろしくお願いいたします。

◯賛助会員の区分と会費
(1) 一般会員 3,000円(年会費)
(2) 維持会員 30,000円(年会費)
(3) 特別会員 300,000円(永久会員)

◯特典
(1) 福沢一郎記念館入館料無料
(2) 福沢一郎記念館ニュース送付
(3) 記念館主催の催し物に優先的にご招待

◯会費のお振込先
●郵便局振替口座 00190-2-695591
 福沢一郎記念館
●りそな銀行 祖師谷支店 普通口座 1000201
 (一財) 福沢一郎記念美術財団

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福沢一郎記念館 メールマガジン No.8
2015年5月18日発行
編集・発行 一般財団法人 福沢一郎記念美術財団

福沢一郎記念館

【ホームページを移転しました】


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