メールマガジン第7号(2015年4月16日発行)

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福沢一郎記念館 メールマガジン No.7
FUKUZAWA Ichiro Memorial Museum
– Setagaya,Tokyo
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□■□  現在当館は、閉館中です  □■□
■□■ 次の開館は5月末の予定です ■□■

[1] 「PROJECT dnF -福沢一郎賞作家-」 
[2] ココで観られる福沢一郎作品
[3] コラム 福沢一郎の書架から(7)
[4] 賛助会員のお誘い

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[1]
□ 2015年春の展示
 「PROJECT dnF -福沢一郎賞作家-」
  ー21年めのあらたな試み
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前号で予告しておりました、今年春からはじまる当館でのあら
たな試みについて、お知らせいたします。

福沢一郎記念美術財団では、1995年から毎年、福沢一郎とゆか
りの深い多摩美術大学油画専攻卒業生と女子美術大学大学院洋
画専攻修了生の成績優秀者に、「福沢一郎賞」をお贈りしてい
ます。
この賞が20回めを迎える2015年、当館では新たな試みとして、
「project dnF ー福沢一郎賞の作家たち」をはじめます。
これは、「福沢一郎賞」の歴代受賞者の方々に、記念館のギャ
ラリーを個展会場としてご提供し、情報発信拠点のひとつとし
て当館を活用いただくことで、活動を応援するものです。

福沢一郎は昭和初期から前衛絵画の旗手として活躍し、さまざ
まな表現や手法に挑戦して、新たな絵画の可能性を追求してき
ました。またつねに諧謔の精神をもって時代、社会、そして人
間をみつめ、その鋭い視線は初期から晩年にいたるまで一貫し
て作品のなかにあらわれています。
こうした「新たな絵画表現の追究」「時代・社会・人間への視
線」は、現代の美術においても大きな課題といえます。こうし
た課題に真摯に取り組む作家たちに受け継がれてゆく福沢一郎
の精神を、DNA(遺伝子)になぞらえて、当館の新たな試み
を「PROJECT dnF」と名付けました。
今回は、ふたりの作家が展示をおこないます。学生時代から映
像表現に取り組み、平面や立体の作品とあわせてモノクローム
の雑踏を思わせるインスタレーションをおこなってきた照沼敦
朗(多摩美術大学卒、2007年受賞)と、ゆるやかに解きほぐさ
れたような形態を、鮮やかな色彩によって重層的に描く室井麻
未(女子美術大学大学院修了、2014年受賞)です。
かれらは福沢一郎のアトリエとで、どのような世界をつくりあ
げるのでしょうか。

おふたりの展覧会については、当館ホームページ内で詳しい内
容やイベントの日程等をお知らせいたします。
どうぞご期待ください!

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[2]
□ ココで観られる福沢一郎作品
《父と子》 1937年 油彩・カンヴァス
 28×20cm 板橋区立美術館蔵

グレーを基調にした空間に、男性と思しき人物が、小さな子供
を肩車して立っています。光源は背中のほうにあり、顔は逆光
のため暗い蔭が落ちてよく見えません。子供は無邪気に男の頭
にしがみついていますが、男のほうはややうつむき加減で、動
きを感じさせないポーズです。その右足の奥には、毬のような
丸いものが転がっています。《父と子》という温かな雰囲気の
題名とはうらはらに、やや寂しげな、空虚な印象を受けます。
この作品が描かれた1937年は、盧溝橋事件により日中戦争が勃
発し、日本が大規模な戦争へと突き進むことが決定的となった
年です。こののち徴兵によって多くの若者が戦地に赴くことに
なりますが、市井の雰囲気はさほど切迫感がなく、戦争を推し
進める政治にも肯定的な論調が多数を占めていました。
無邪気に遊ぶ子供を肩に乗せ、空虚な室内でうつむく男は、こ
の年2歳になる長男の将来への不安を敏感に感じていた福沢自
身のすがたではないでしょうか。戦勝ムードに占められた世相
を冷ややかに見つめ、いいしれぬ不安に対峙していた画家の視
線がうかがえる作品です。

本作品は板橋区立美術館の館蔵品展「近代日本の社会と絵画
戦争の表象」にて展示中、6/7まで開催。

作品画像は、当館ホームページの「作品集」から。

https://fukuzmm.wordpress.com/works/

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[3]
□ コラム 福沢一郎の書架から(7)
 
Leonardo da Vinci, Il codice Atlantico
(レオナルド・ダ・ヴィンチ『アトランティコ手稿』)
 原本1478〜1518年、刊行1974年、ファクシミリ版
 Giunti-Barbèra、フィレンツェ

「万能の天才」レオナルド・ダ・ヴィンチは、絵画、彫刻から
デザイン、解剖学や工学に至る幅広い仕事のために、膨大な数
のノートを書き遺しました。約40年にわたり書かれたノートの
枚数はおよそ15,000枚に及ぶといわれ、現在はその2/3がいく
つかの手稿集に分かれて編集され、今に伝わっています。
福沢の蔵書にある『アトランティコ手稿』は、これらの中でも
特に分野が多岐にわたることで知られています。原本はミラノ
のアンブロジーナ図書館に所蔵されており、研究者向けにファ
クシミリ版が刊行されたものを、福沢はわざわざ入手しました。
全12巻にわたる、とても大きくて重い書物です。
これは80年代初めの、レオナルドへのオマージュともいうべき
連作のために入手したもののようです。このファクシミリ版は
原本の再現が非常に忠実になされていて、ちょっとしたメモ書
きのような箇所であっても、きちんと裏も表も複写されていま
す。この手稿を当館で丹念に調査なさった山形大学教授の小林
俊介さんは、人の顔に図形のメモが裏写りしたり、レオナルド
の弟子サライが脇から描き足したようなものまで、福沢が作品
のなかに引用しているのを見つけました。80年代の「レオナル
ド連作」は、書物から着想を得るだけでなくそこに諧謔や諷刺
まで見出して自らの作品に取り込んでしまう「教養とユーモア
の凝縮されたシリーズ」であると、小林さんは語っています。
才気に富み多くの傑作を生み出しながら、かたやとんでもない
失敗もやらかしてしまうレオナルドに、福沢は敬意と愛着を覚
えていました。そのあゆみを追求した結果、そのイメージの源
泉たる手稿集にまでたどり着いてしまうところなどは、知的好
奇心に突き動かされるこの画家ならではのエピソードといえま
しょう。

本書は記念館書斎に配架中。ただし大型本のため、ご覧になる
には準備が必要です。ご希望の場合は前もってご連絡を。
また、「レオナルド連作」は記念館ホームページの「作品集」
に掲載中です。『記念館ニュース』第37号(2013年4月)掲
載の小林俊介さんによる講演記録も、ぜひお読みください。

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[4]
□ 賛助会員のお誘い

一般財団法人福沢一郎記念美術財団では、その美術振興活動を
より広範囲に、積極的にすすめるために、賛助会員を募ってい
ます。
一人でも多くの方に参加していただくことで、若い美術家の顕
彰、美術研究への助成など財団の活動が充実しますので、どう
ぞよろしくお願いいたします。

◯賛助会員の区分と会費
(1) 一般会員 3,000円(年会費)
(2) 維持会員 30,000円(年会費)
(3) 特別会員 300,000円(永久会員)

◯特典
(1) 福沢一郎記念館入館料無料
(2) 福沢一郎記念館ニュース送付
(3) 記念館主催の催し物に優先的にご招待

◯会費のお振込先
●郵便局振替口座 00190-2-695591
 福沢一郎記念館
●りそな銀行 祖師谷支店 普通口座 1000201
 (一財) 福沢一郎記念美術財団

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福沢一郎記念館 メールマガジン No.7
2015年4月16日発行
編集・発行 一般財団法人 福沢一郎記念美術財団

福沢一郎記念館

【ホームページを移転しました】


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