メールマガジン第5号(2015年2月21日発行)

=======================================2015/02/21
================================================
福沢一郎記念館 メールマガジン No.5
FUKUZAWA Ichiro Memorial Museum
– Setagaya,Tokyo
================================================
□■□  現在当館は閉館中です  □■□
■□■ 次の開館は6月の予定です ■□■

[1] 他館展覧会のご報告 沖縄・那覇市の「福沢一郎展」
[2] ココで観られる福沢一郎作品
[3] コラム 福沢一郎の書架から(5)
[4] 賛助会員のお誘い

――――――――――――――――――――――――――――
[1]
□ 他館展覧会のご報告
 「福沢一郎展 ―沖縄の子どもたちへ贈られた34点―」
  @那覇市民ギャラリー(2/3~8, 2015)

今月はじめに那覇市民ギャラリーにて行われた、福沢一郎展。
1960年代前半の、雑誌『太陽』創刊記念特集のために描かれた
34点が展示され、わずか一週間の会期ながら、600人を超える
入場者があったとのことです。
日本人のルーツを絵で見るような展示となり、観覧者の中から
はレキシ「狩りから稲作へ」がテーマソングだ!との指摘も。
沖縄の皆さんにとって、さまざまな角度から福沢作品に親しん
でいただく良い機会となりました。
最終日の8日(日)には、富岡市立美術博物館・福沢一郎記念
美術館館長の染谷滋さんによる講演会がありました。当館から
は館長の福沢一也夫妻が聴講。福沢一郎の画業と展示作品につ
いて、たっぷりとお話いただき、充実した講演だったとのこと。
貴重な時期の福沢作品、今度はぜひ東京などでも展示が実現す
るといいなと思います。

展覧会の会場風景は、記念館ホームページに掲載中。
https://fukuzmm.wordpress.com/2015/02/12/report_2015naha/

――――――――――――――――――――――――――――

――――――――――――――――――――――――――――
[2]
□ ココで観られる福沢一郎作品
陶板壁画《だるまの歌》 1982年 @高崎駅西口

群馬県の玄関口、高崎駅。JR上越・長野新幹線と在来線3路線
(分岐線も含めると6路線)と私鉄1路線が乗り入れる、県内で
最も規模の大きな駅です。
この駅の西口を出た北側の一角に、縦6m、横8.1mに及ぶ巨大
な壁画があります。福沢一郎が原画を担当した陶板壁画「だる
まの詩(うた)」です。
この壁画は「上越新幹線開業・高崎駅新駅舎完成」を記念し、
1982年に作られました。造型を担当したのは日本国内で数多く
の壁画やステンドグラスを手がけた芸術家ルイ・フランセン。
壁画のポイントはなんといっても愛嬌たっぷりのだるま達。福
沢は「問題のだるまは、面白く見せるためには、さまざまの表
現を持たせる必要がある。喜怒哀楽の個性的感情をそなえただ
るま達が、陶板の中から高崎駅乗降の御客に、愛嬌を振りまく
という趣向が面白いと思う。ようこそ群馬へというわけである」
と、だるま達に込めた思いを語っています。
重厚な陶板のなかで、思わず笑ってしまうような、ひょうきん
な表情をみせるだるま達。他の福沢作品とはちょっと違った魅
力があります。群馬高崎におでかけの際には、福沢のだるまを
お見逃しなく!

本作品は高崎駅西口ロータリー北側に設置中。いつでも見られ
ます。また、「福沢一郎 だるま」で検索すると、画像がたく
さんヒットしますので、ぜひ試してみてください。

――――――――――――――――――――――――――――

――――――――――――――――――――――――――――
[3]
□ コラム 福沢一郎の書架から(5)
 柳田国男『海上の道』(筑摩書房版)
 筑摩書房 1961年

「名も知らぬ 遠き島より…」という島崎藤村作詞の唄「椰子
の実」のヒントとなった、かの有名な民俗学者柳田國男の体験
談。この体験は柳田最後の著書である本書の巻頭論文「海上の
道」に昇華されました。『遠野物語』と並び、最も有名な柳田
の著作です。
本書の見返しには「一九六二年四月二十九日ー五月四日聖ルカ
病院にてこれを讀む 福沢一郎」と書き込みがあります。どう
やら入院中に読んでいたようですね。
さて、ちょうどこの頃、福沢には平凡社から雑誌『太陽』の挿
絵の依頼が入っていました。そう、最初の記事でもご紹介した
那覇市所蔵作品、つまり「日本人はどこからきたか」と「日本
文化のあけぼの」のために描かれた挿絵です。
南方より琉球諸島を経て、稲作とともに日本人のルーツのひと
つがやってきたという柳田の仮説は、『日本人はどこからきた
か』の挿絵に取りかかろうとしていた福沢に、さまざまなイメ
ージを提供したことでしょう。知を積み重ね、画面のバックボ
ーンとした福沢の制作姿勢がよくわかります。
ちなみに、柳田国男の旧宅は成城にあり、福沢一郎記念館から
は歩いて15~20分ほどの距離。現在、書斎跡には緑陰館とい
うギャラリーがあり、さまざまな展覧会が行われています。

――――――――――――――――――――――――――――

――――――――――――――――――――――――――――
[4]
□ 賛助会員のお誘い

一般財団福沢一郎記念美術財団では、その美術振興活動をより
広範囲に、積極的にすすめるために、賛助会員を募っています。
一人でも多くの方に参加していただくことで、若い美術家の顕
彰、美術研究への助成など財団の活動が充実しますので、どう
ぞよろしくお願いいたします。

◯賛助会員の区分と会費
(1) 一般会員 3,000円(年会費)
(2) 維持会員 30,000円(年会費)
(3) 特別会員 300,000円(永久会員)

◯特典
(1) 福沢一郎記念館入館料無料
(2) 福沢一郎記念館ニュース送付
(3) 記念館主催の催し物に優先的にご招待

◯会費のお振込先
●郵便局振替口座 00190-2-695591
 福沢一郎記念館
●りそな銀行 祖師谷支店 普通口座 1000201
 (一財) 福沢一郎記念美術財団

――――――――――――――――――――――――――――
================================================
福沢一郎記念館 メールマガジン No.5
2015年2月21日発行
編集・発行 一般財団法人 福沢一郎記念美術財団

福沢一郎記念館

【ホームページを移転しました】


facebook: https://www.facebook.com/fukuzmuseum
twitter: @fukuz_tweet

Copyright(c) 2014-2015 FUKUZAWA ICHIRO MEMORIAL FOUNDATION
All Rights Reserved.

※バックナンバーは記念館ホームページでご覧いただけます。
※配信停止を希望される場合はそのままご返送ください。
================================================

【他館展覧会情報】「福沢一郎展 沖縄の子どもたちへ贈られた34点」@那覇市民ギャラリーの報告

2015年2月3日(火)から8日(日)まで、展覧会「福沢一郎展 沖縄の子どもたちへ贈られた34点」が、沖縄県那覇市の那覇市民ギャラリーで開催されました。
すでにご紹介したとおり、この展覧会の出品作は、平凡社の雑誌『太陽』創刊時の連載(1963-64年)のために描かれ、1966(昭和41)年に平凡社社長の下中邦彦氏により「沖縄少年会館」へ寄贈されたもので、今回はその寄贈作品34点すべてが一同に展示されました。
会場には福沢作品が『太陽』の記事掲載順、つまり日本人のあゆんできた時代の流れにそって展示されたので、「ヴィジュアル日本古代史」のような楽しみ方をした観覧者も多くいらしたとか。
また、雑誌『太陽』の福沢作品掲載ページや、掲載記事がその後まとめられた書籍『日本人の原像』、寄贈先の「沖縄少年会館」に関する資料なども展示され、当時の雰囲気を伝えていました。
さまざまなかたちで福沢作品に親しむ格好の機会となったこの展覧会、会期が短かったのが残念です。ぜひこれらの作品が、東京など沖縄県外でも展示される機会に恵まれることを願います。

以下、会場風景

会場入り口

IMG_2468

IMG_2471

展示会場1

IMG_2462

IMG_2470

展示室2

IMG_2463

年表と展示台

メールマガジン第4号(2015年1月17日発行)

=======================================2015/01/17
================================================
福沢一郎記念館 メールマガジン No.4
FUKUZAWA Ichiro Memorial Museum
– Setagaya,Tokyo
================================================
□■□  現在当館は閉館中です  □■□
■□■ 次の開館は6月の予定です ■□■

[1] 展覧会のお知らせ 沖縄・那覇で福沢作品に出会う(再)
[2] ココで観られる福沢一郎作品
[3] コラム 福沢一郎の書架から(4)
[4] 賛助会員のお誘い

――――――――――――――――――――――――――――
[1]
□ 展覧会のお知らせ
 沖縄・那覇で福沢一郎作品に出会う!(再)
 「福沢一郎展 ―沖縄の子どもたちへ贈られた34点―」
  @那覇市民ギャラリー(2/3~8, 2015)
  ※副題が変更になったそうです
――――――――――――――――――――――――――――

前号でもお知らせした、那覇市での福沢一郎の展覧会。会期ま
であと2週間あまりとなりました。
今回展示されるのは、平凡社の雑誌『太陽』の創刊を記念した
連載記事「日本人はどこからきたか」及び「日本文化のあけぼ
の」のために描かれた、1962-4年頃の作品34点。50年代末か
ら60年代初頭、福沢は抽象的な絵画表現を試みていたのですが、
今回の展示作品は雑誌記事の挿絵ということもあり、より具体
的な描写が求められるものとなっています。さて画家はどのよ
うにして制作に挑んだのでしょう。詳しくはぜひ展覧会場にて。
会場となる那覇市民ギャラリーは、那覇市の中心部に位置し、
観光スポットとしても有名な国際通りにほど近く、移動にも便
利なところです。沖縄観光とあわせて、福沢作品の新たな一面
にふれる旅というのはいかがでしょう?

会 場:那覇市民ギャラリー
    沖縄県那覇市久茂地1-1-1 パレットくもじ6階
    電話098-867-7663
会 期:2月3日(火)~8日(日) 会期中無休
    午前10時~午後7時
観覧料:無料

※ 2月8日(日)には、富岡市立美術博物館・福沢一郎記念美術
館館長の染谷滋さんによるギャラリートークがおこなわれます。
午後3時~4時半の予定。

――――――――――――――――――――――――――――
[2]
□ ココで観られる福沢一郎作品
《失楽園》 1980年 @山梨県立美術館

ミレーの作品でつとに有名な山梨県立美術館。ここに福沢一郎
の作品が所蔵されており、しかも常にご覧いただくことができ
るのです。同館1の階ロビーに設置されている、縦2m90cm、
横9mの巨大な《失楽園》です。
タイトルが示すとおり、この作品は17世紀イギリスの詩人・思
想家ジョン・ミルトンによる旧約聖書をテーマとした長編叙事
詩『失楽園』に着想を得たもので、左から右へと場面が流れる
パノラマ画というべき構成をとっています。
不思議なのは、楽園追放の場面で必ず描かれる天使ミカエルの
すがたが描かれていないことです。跳梁跋扈する悪魔と、森か
ら逃げ出す動物、そして走り去るアダムとイヴのすがたがある
だけなのです。
ミルトンの『失楽園』には、絶対的な存在としての神に抗い、
立ち向かう悪魔のすがたが、人間臭くいきいきとあらわされて
います。かつて「地獄図は描けても、天界のそれはむずかしい。
フィフス・アベニューよりもハーレムに、天衣よりもつづれに、
従順よりも反逆に、美は閃光を放つのではないか」と語った福
沢にとって、ミルトンの悪魔達は強い共感をよぶものだったの
ではないでしょうか。だからこそ、あえて天使を描かずに、う
ごめく悪魔のすがたで画面の多くを埋めたのでしょう。
アダムとイヴの追われてゆく先も、空虚ではありますが明るい
空が広がり、悲壮感ただよう世界というわけでもなさそうです。
愚かな人間の歴史のはじまりに寄せた福沢の思いが、背景の花
となってふたりに彩りを添えています。
82歳の福沢が挑んだ「失楽園」の世界。この大画面をぜひ山梨
で体感してみてください。
本作品は同館ロビーにて、開館日ならいつでも見られます。

作品画像は記念館ホームページに掲載中。
http://fukuzmm.wordpress.com/2011/10/11/1980_paradise_lost/

山梨県立美術館公式ホームページはこちら↓
http://www.art-museum.pref.yamanashi.jp

――――――――――――――――――――――――――――

――――――――――――――――――――――――――――
[3]
□ コラム 福沢一郎の書架から(4)
 Paul MacKendrick, The Greek Stones Speak,
 Paperback, Mentor Books, New York, 1966.

福沢の蔵書には洋書が数多くあり、その内容は美術書だけでな
く文学や人類学、考古学など多岐にわたっています。本書はギ
リシャの考古学に関する概説書で、本文はほぼ年代順に記述さ
れ、豊富な図版や地図などにより古代ギリシャ文明をわかりや
すく解説しています。
福沢は1970年にギリシャを旅行し、帰国後にかの地での取材を
もとに大作を次々と制作します。本書は1962年に初版が、1966
年にはペーパーバックが刊行されているので、おそらくは旅行
の前後で手に入れ、制作の参考にしていたのでしょう。
1962年当時の書評で、シカゴ大学の考古学教授ロバート・スク
ラントンは本書についていくつかの誤りを指摘しつつも「プロ
でない考古学者にとっては、まことに使いやすく価値ある旅行
ガイドである」と述べています。福沢が旅先で得たイメージを
膨らませ制作へと繋げるためにはおおいに役立ったのではない
かと思われます。
福沢は旅行の同年11月に個展「石は語る-ギリシャの旅-」を
開催し、この年の成果であるギリシャ及び西欧での取材の成果
を発表します。そこには底抜けに明るく躍動感にあふれた古代
神話の世界が広がっていました。
この個展のタイトルは、ひょっとするとこの書物に着想を得た
ものかもしれませんね。

1970年のギリシャ神話から主題を得た作品は、記念館ホーム
ページで2作品の画像を公開中。↓

https://fukuzmm.wordpress.com/works/

――――――――――――――――――――――――――――

――――――――――――――――――――――――――――
[4]
□ 賛助会員のお誘い

一般財団福沢一郎記念美術財団では、その美術振興活動をより
広範囲に、積極的にすすめるために、賛助会員を募っています。
一人でも多くの方に参加していただくことで、若い美術家の顕
彰、美術研究への助成など財団の活動が充実しますので、どう
ぞよろしくお願いいたします。

◯賛助会員の区分と会費
(1) 一般会員 3,000円(年会費)
(2) 維持会員 30,000円(年会費)
(3) 特別会員 300,000円(永久会員)

◯特典
(1) 福沢一郎記念館入館料無料
(2) 福沢一郎記念館ニュース送付
(3) 記念館主催の催し物に優先的にご招待

◯会費のお振込先
●郵便局振替口座 00190-2-695591
 福沢一郎記念館
●りそな銀行 祖師谷支店 普通口座 1000201
 (一財) 福沢一郎記念美術財団

――――――――――――――――――――――――――――
================================================
福沢一郎記念館 メールマガジン No.4
2015年1月17日発行
編集・発行 一般財団法人 福沢一郎記念美術財団

福沢一郎記念館

【ホームページを移転しました】


facebook: https://www.facebook.com/fukuzmuseum

Copyright(c) 2014-2015 FUKUZAWA ICHIRO MEMORIAL FOUNDATION
All Rights Reserved.

※バックナンバーは記念館ホームページでご覧いただけます。
※配信停止を希望される場合はそのままご返送ください。
================================================

【他館展覧会情報】「福沢一郎展 沖縄の子どもたちへ贈られた34点」@那覇市民ギャラリー 2015.2.3-8

2015年2月3日(火)から8日(日)まで、展覧会「福沢一郎展 沖縄の子どもたちへ贈られた34点」が、沖縄県那覇市の那覇市民ギャラリーで開催されます。
この展覧会の出品作は、平凡社の雑誌『太陽』創刊時の連載(1963-64年)のために描かれたもので、1966(昭和41)年、日本復帰前の沖縄の子どもたちのために、平凡社社長の下中邦彦氏により「沖縄少年会館」へ寄贈されました。1979年に同館が閉館となった後は那覇市(久茂地公民館)に移管され、しばらく日の目を見ることはありませんでした。
今回、その寄贈作品34点すべてが一同に展示されます。福沢一郎作品の再発見といううれしいトピックであるだけでなく、1960年代の福沢の制作を考えるうえでも非常に貴重な機会となります。

主  催:那覇市
協  力:福沢一郎記念館(一般財団法人 福沢一郎記念美術財団)
     富岡市立美術博物館・福沢一郎記念美術館
展示期間:2015年2月3日(火)~2月8日(日)
     10:00-19:00(最終日17:00まで) 会期中無休
開催場所:那覇市民ギャラリー(パレットくもじ6F)
展示内容:那覇市収蔵の福沢一郎作品34点
     平凡社の雑誌『太陽』
     少年会館関連資料 等
観 覧 料:無料
関連行事:美術講座「福沢一郎の画業について」
     2月8日(日) 15:00-16:30、先着50名
     講師:染谷滋氏(富岡市立美術博物館・福沢一郎記念美術館館長)

以下、展覧会チラシ画像

2015fukuz_naha1

2015fukuz_naha2

メールマガジン第3号(2014年12月14日発行)

=======================================2014/12/14
================================================
福沢一郎記念館 メールマガジン No.3
FUKUZAWA Ichiro Memorial Museum
– Setagaya,Tokyo
================================================
□■□ 現在当館は閉館中です □■□
■□■ 次の開館は来年春です ■□■

[1] 2014年秋の展覧会、終了しました
[2] 展覧会のお知らせ 沖縄・那覇で福沢一郎作品に出会う!
[3] コラム 福沢一郎の書架から(3)
[4] 賛助会員のお誘い

————————————————————————————
[1]
□ 2014年秋の展覧会、終了しました
開館20周年記念
「福沢一郎と山下菊二 師弟は時代とどう向き合ったか」

http://fukuzmm.wordpress.com/2014/10/02/fukuz_kikuji_2014a/

————————————————————————————

11月いっぱい行われた当館の開館20周年記念特別展示「福沢一
郎と山下菊二 師弟は時代とどう向き合ったか」は、無事終了
いたしました。期間中足をお運びくださったみなさま、どうも
ありがとうございました。
福沢一郎と山下菊二、戦後日本を代表するふたりの画家の作品
によって、とても刺激的な空間が生まれました。また、日本の
近現代美術を研究する方々からもさまざまなご意見をいただき、
小粒ながらも意義ある展示となったのではないかと自負してお
ります。今回は日曜日も開館したおかげで、たくさんの方々に
ご覧いただくことができました。
11/16に、徳島県立近代美術館の江川佳秀さんをお迎えして開
催したトークの会も、満員御礼で、よいお話になったと高評価
をいただきました。こちらはいずれ記念館ニュースでその内容
をご報告いたしますので、お楽しみに。

当館は来年春まで休館となります。また刺激的な展覧会を見て
いただけるよう、スタッフ一同がんばります!

展覧会場風景をホームページにアップいたしましたので、どう
ぞご覧ください。↓

http://fukuzmm.wordpress.com/2014/11/23/2014a_f_y_view/

「トークの会」報告はこちら↓
https://fukuzmm.wordpress.com/2014/11/29/talk_fy_20141116/

————————————————————————————
[2]
□ 展覧会のお知らせ
 沖縄・那覇で福沢一郎作品に出会う!
 「福沢一郎展 ―沖縄少年会館へ寄贈の34点―」
  @那覇市民ギャラリー(2/3〜8, 2015)

来年2月、沖縄県の那覇市民ギャラリーで、福沢一郎の展覧会
が開催されることになりました。
今回展示されるのは、1966(昭和41)年、本土復帰前の沖縄
に、平凡社の当時の社長下中邦彦氏から贈られたもので「沖縄
少年会館」という施設に展示されていました。
この作品34点は、雑誌『太陽』の創刊を記念した特集記事のた
めに制作されたもので、主に古代日本の人々のすがたが描かれ
ています。それらは画家にとってどんな意味をもつものなのか、 
またなぜ沖縄にこの作品群が寄贈されたのか? 
単なる雑誌の挿絵と片付けてしまうにはもったいない、さまざ
まな謎を含んだこの作品群、すべて揃って展示されるのは非常
に貴重な機会です。しかも会期はわずか1週間!
来年2月は、あったかい沖縄で福沢作品に出会う旅など、企画
してみてはいかがでしょうか?

※ なお開催館でのオフィシャルな告知は来月の予定です。

————————————————————————————

————————————————————————————
[3]
□ コラム 福沢一郎の書架から(3)
 『風俗画報 臨時増刊 江戸乃花』(上中下巻)
 東陽堂出版、1898(明治31)年12月〜1899年2月

昭和初期の前衛絵画をリードした福沢の蔵書に、こうしたいか
にもオールドファッションな書物があるのは、少し意外な気も
します。しかもこの三冊、福沢自身の手によってまとめて製本
され、表紙まで付けられているのです。
茶色い紙の表紙には「福沢蔵書 まとい」と書かれており、こ
のことばが、書物の謎を解く鍵になりました。
1934(昭和9)年の福沢の作品に《江戸の花》と題したものが
あります。画面下半分に、江戸火消しの纏や鳶口、梯子などが
密集するように描かれています。このモティーフのほとんどが
この書物の『上巻』から図像を引用して描かれていることがわ
かりました。
『風俗画報』は明治以降の日本人にとって重要なヴィジュアル
マガジン。マックス・エルンストが『ラ・ナチュール』などの
市井にあふれる書物を作品に用いた意図と非常に近しいものを
福沢も持っていたようですね。
1931年以降福沢の作品にあらわれる、遊女や武者、僧侶など
日本独特のモティーフは、そのイメージソースがまだ特定され
ていないものが多いのです。この書物を端緒として、それらの
謎が解明されていくかもしれません。

作品《江戸の花》の画像は記念館ホームページで公開中↓

https://fukuzmm.wordpress.com/2011/10/11/edoflower_1934/

————————————————————————————

————————————————————————————
[4]
□ 賛助会員のお誘い

一般財団福沢一郎記念美術財団では、その美術振興活動をより
広範囲に、積極的にすすめるために、賛助会員を募っています。
一人でも多くの方に参加していただくことで、若い美術家の顕
彰、美術研究への助成など財団の活動が充実しますので、どう
ぞよろしくお願いいたします。

◯賛助会員の区分と会費
(1) 一般会員 3,000円(年会費)
(2) 維持会員 30,000円(年会費)
(3) 特別会員 300,000円(永久会員)

◯特典
(1) 福沢一郎記念館入館料無料
(2) 福沢一郎記念館ニュース送付
(3) 記念館主催の催し物に優先的にご招待

◯会費のお振込先
●郵便局振替口座 00190-2-695591
 福沢一郎記念館
●りそな銀行 祖師谷支店 普通口座 1000201
 (一財) 福沢一郎記念美術財団

————————————————————————————
================================================
福沢一郎記念館 メールマガジン No.3
2014年12月14日発行
編集・発行 一般財団法人 福沢一郎記念美術財団

福沢一郎記念館

【ホームページを移転しました】


facebook: https://www.facebook.com/fukuzmuseum

Copyright(c) 2014 FUKUZAWA ICHIRO MEMORIAL FOUNDATION
All Rights Reserved.

※バックナンバーは記念館ホームページでご覧いただけます。
※配信停止を希望される場合はそのままご返送ください。
================================================

【お知らせ】福沢一郎賞の皆様へのアンケートについて

福沢一郎記念館では、1995年から毎年、多摩美術大学と女子美術大学の優秀な学生の方々へ、活動の励みになればと、ささやかながら「福沢一郎賞」というかたちで応援をさせていただいております。
それが来年20回目を迎えるにあたり、その意味を問い直し、今後の活動に受賞者の皆様のご紹介もしっかりと位置づけるために、アンケートをおこなうことになりました。
各大学の研究室にご協力いただき、ご連絡先がわかる受賞者の方々には、2014年12月14日までに郵送またはメールにてお送り申し上げておりますが、まだお届けできない方が多くいらっしゃいます。
「受賞者だが、まだ連絡がない」という方がいらっしゃいましたら、ぜひ記念館までメールいただければ幸いです。

メールはこちらから

皆様のご協力を、なにとぞよろしくお願いいたします。

※ メールにてご回答いただく場合の書式ダウンロードURLをお願い文に記載しましたが、繋がらないとのご指摘をいただきました。メールにてご回答をご希望の方は、恐縮ですが、上記メールアドレスまでご連絡いただきたくお願い申し上げます。

【イベント情報】トークの会「福沢一郎と山下菊二 いま語る・ふたりの実像」報告

開館20周年記念 「福沢一郎と山下菊二 師弟は時代とどう向き合ったか」の関連イベントとして、トークの会「福沢一郎と山下菊二 いま語る・ふたりの実像」が、11月16日(日)に開催されました。

今回は徳島県立近代美術館 学芸調査課長の江川佳秀さんにお越しいただき、当館嘱託の伊藤とともに、福沢一郎と山下菊二の関わり、それぞれの作品、そして彼らが向き合った時代についてお話させていただきました。徳島県は山下の郷里で、県立近代美術館ではご遺族から寄贈された多数の山下作品・資料をお持ちです。その中にはもちろん、福沢との交流を示すものが多数あります。
江川さんからお話いただいた山下の従軍時代の辛い経験、それを受けての戦後の「ルポルタージュ絵画」の展開などは、今回展示された作品の理解にもおおいに役立つものでした。また、先述の山下菊二資料から福沢と関わりの深い貴重なものが紹介され、ふたりの関係が特別なものであったことが、改めて浮き彫りになりました。
終戦直後に形のうえでは袂を分かったふたりの画家のあいだには、その後も個人的な師弟関係が続きます。そして社会をみる視点や絵画表現は非常に対照的なものがあります。しかし、会場にお越しくださった方にはよくおわかりいただけたと思いますが、隣に並べてもほとんど破綻のない、むしろ両者を引き立てるような作品どうしの面白い関係をみるにつけ、やはりふたりは特別な師弟であり、時代や社会、人間を、それぞれの視点で見つめ、真摯に制作に取り組んだ画家の生きざまというものは、結局このように作品となって立ちあらわれるのだなあと、お話を聞きながら改めて感じ入りました。
スライドが思うように映写されないなどのハプニング(!)もあり、大幅に時間を延長して行われたトークの会でしたが、満員御礼の熱気あふれる会場で、聴講者の皆様はとても興味深くお話に聞き入っていました。

講演会の内容は今春発行の『記念館ニュース』に掲載予定です。

Untitled1
(スクリーン手前右側:山下菊二作品を解説する江川佳秀さん)

Untitled4

(2014年11月29日)

メールマガジン第2号(2014年11月13日発行)

=======================================2014/11/13
================================================
福沢一郎記念館 メールマガジン No.2
FUKUZAWA Ichiro Memorial Museum
– Setagaya,Tokyo
================================================
□■□ 現在当館は開館中です □■□
■□■ 開館日は日月水金です ■□■

[1] 開催中!2014年秋の展覧会
[2] ココで観られる福沢一郎作品
[3] コラム 福沢一郎の書架から(2)
[4] 賛助会員のお誘い

————————————————————————————
[1]
□ 開催中! 2014年秋の展覧会
開館20周年記念
「福沢一郎と山下菊二 師弟は時代とどう向き合ったか」

http://fukuzmm.wordpress.com/2014/10/02/fukuz_kikuji_2014a/

————————————————————————————

開館20周年にして初めて、福沢一郎以外の作家の作品が展示さ
れた、記念すべき今回の展覧会、やはりとても刺激的な空間と
なりました。
福沢一郎と山下菊二、ふたりの作風はまさに対照的なのですが、
それぞれの個性は失わず、非常にいいバランスで輝きを放って
います。
注目は福沢一郎《フクロウ》。小品ながら、山下菊二との関係
をあれこれ想像させる、とても面白い作品です。また、山下の
《日本の敵米国の崩壊》も、福沢との繋がりを強く感じる貴重
な作例。ぜひ解説パネルを読みながらお楽しみください。
皆様のご来館をお待ちしております。

会 期:11月2日(日)〜30日(日)の日・月・水・金・曜日
    午前11時〜午後5時
観覧料:300円
協 力:日本画廊

※トークの会「福沢一郎と山下菊二 いま語る・その実像」
 11月16日(日)午後2時〜3時30分 は、定員になりました
 ので受付を締め切らせていただきました。

————————————————————————————
[2]
□ ココで観られる福沢一郎作品
《敗戦群像》 1948年 @群馬県立近代美術館

福沢一郎の作品としては、おそらく一番露出度の高いものだと
思います。でも所蔵館で常に見られるわけではありません。
たまに国内外の展覧会のために旅に出ることがあるので、保存
のため頻繁に展示することが難しいのです。だから常設で見ら
れたらむしろラッキー!
荒涼とした大地に裸体がうず高く積み上げられ、複雑にからみ
合っています。いったいいくつの人体があるでしょう?という
クイズを出したくなりますが、はい、実際どうなのかは判りま
せん。あしからず。
この作品、福沢の代表作と目されていますが、まだ解明されて
いない謎があります。タイトルの《敗戦群像》は、発表当時に
は「敗戦の記念碑」だったり「群像」だったりと、一定してい
ません。また、人体のピラミッドの頂上にある頭部は、古い図
版にはみられないものです※。とすれば、のちに描き足された
ものでしょうか? いったいいつ頃? 謎は尽きません。
そのぶん見る楽しみも尽きないですね。
展示期間は12月14日(日)まで。

作品画像は記念館ホームページに掲載中。
http://fukuzmm.wordpress.com/2011/09/09/1948_haisen/

※ 例えば、針生一郎『芸術の前衛』(弘文堂、1970年)冒頭
の図版《群像》1948年 を参照のこと。

————————————————————————————

————————————————————————————
[3]
□ コラム 福沢一郎の書架から(2)
 阿部次郎著『地獄の征服』〈文芸評論 第一輯〉
 岩波書店、1922(大正11)年

なかなかショッキングなタイトルですが、中身は著者のゲーテ
『ファウスト』とダンテ『神曲』に関する講義録が中心の論文
集です。
著者の阿部次郎は哲学者・美学者。『三太郎の日記』(合本、
岩波書店、1918年)は大正期の学生たちに大きな影響を与え
た「自己省察の書」と評されています。
本書中「ダンテの『神曲』とニイチェの『ツァラツストラ』」
ではダンテの「高貴の道徳」「正義」「敬虔」とニーチェのそ
れらについての対比が述べられており、二高時代にニーチェ論
で名高い登張信一郎の指導を受けた福沢などには興味深いもの
であったと想像されます。また「ダンテ雑話」や「神曲入門」
などの章は終戦直後に制作された「ダンテ神曲地獄篇による幻
想」の連作を描くのにおおいに役立ったのではないかと思われ
ます。

なお、福沢の旧蔵書内には阿部の『三太郎の日記』は見当たり
ませんが、この書には以下のような記述があり、なんとなく福
沢の「ダンテ神曲〜」を描く際の心情と通ずるものがあるよう
に思われるのです。

「地獄を見ないものは地獄が描けない。地獄を忘れたものも地
獄が描けない。地獄にゐるものも亦地獄が描けない。地獄を通
つて來て而も現在鮮かに地獄を「觀」てゐるものにして始めて
地獄は描けるのである。」

福沢は『地獄の征服』だけでなく、『三太郎の日記』も愛読し、
清廉な気風で『人格主義』を提唱した阿部の思想にもある程度
共感していたのではないでしょうか。彼の思想の背景を知るう
えでも興味深い書物です。

————————————————————————————

————————————————————————————
[4]
□ 賛助会員のお誘い

一般財団福沢一郎記念美術財団では、その美術振興活動をより
広範囲に、積極的にすすめるために、賛助会員を募っています。
一人でも多くの方に参加していただくことで、若い美術家の顕
彰、美術研究への助成など財団の活動が充実しますので、どう
ぞよろしくお願いいたします。

◯賛助会員の区分と会費
(1) 一般会員 3,000円(年会費)
(2) 維持会員 30,000円(年会費)
(3) 特別会員 300,000円(永久会員)

◯特典
(1) 福沢一郎記念館入館料無料
(2) 福沢一郎記念館ニュース送付
(3) 記念館主催の催し物に優先的にご招待

◯会費のお振込先
●郵便局振替口座 00190-2-695591
 福沢一郎記念館
●りそな銀行 祖師谷支店 普通口座 1000201
 (一財) 福沢一郎記念美術財団

————————————————————————————
================================================
福沢一郎記念館 メールマガジン No.2
2014年11月13日発行
編集・発行 一般財団法人 福沢一郎記念美術財団

福沢一郎記念館

【ホームページを移転しました】


facebook: https://www.facebook.com/fukuzmuseum

Copyright(c) 2014 FUKUZAWA ICHIRO MEMORIAL FOUNDATION
All Rights Reserved.

※バックナンバーは記念館ホームページでご覧いただけます。
※配信停止を希望される場合はそのままご返送ください。
================================================

【展覧会】「福沢一郎と山下菊二 師弟は時代とどう向き合ったか」 会場風景

開館20周年の展覧会 「福沢一郎と山下菊二 師弟は時代とどう向き合ったか」 の会場風景をご紹介します。

 

DSCF4025

なんといっても、今回は福沢一郎以外の画家の作品が、記念館開設以来初めて!展示されたのです。そしてそれが、福沢とゆかりの深い山下菊二であることは、私たちスタッフにとって大きな喜びです。
まずは、福沢の1《寡婦と誘惑》(1930年、写真左)。「これ、80年以上前の絵ですか!?」と驚かれる方が多いのは、決して修復がしっかりされているからだけではありません。今なお新鮮さを感じる面白い作品だと思います。
その右にある山下の《日本の敵米国の崩壊》は、《寡婦と誘惑》など福沢の滞欧作が飾られたアトリエで制作されたといいます。およそ70年の時を経て、このふたつの作品がふたたび出会ったことになりますね。さまざまな敵国アメリカのイメージ(中には?と思うものもありますが…)が描きこまれています。当時は戦意高揚のための絵として展覧会に出品されたのでしょうが、今見るといろいろなことを考えさせられる、これまた面白い絵です。

 

DSCF4032

階段下のスペースには、山下の初期作品《裸婦》(1939年、写真中央)と福沢の《フクロウ》(1939年頃、写真右)。ほぼ同じ頃に描かれたふたつを並べてみました。ところで、山下はフクロウ好きとして知られていますが、今回は福沢のフクロウが登場しています。これは、ふたりの関係を考えるうえでとても面白い作品なのです。詳しくは、ご来館のうえ、作品横の解説パネルをぜひお読みください!

 

DSCF4040

さて、ここでアトリエ奥の小部屋に入っていきましょう。ここにはふたりの50年代末の作品を展示してあります。まずは福沢の《網にかかった人》(1959年)。いびつな形の人体が、石膏を盛り上げたところに凹んだ線で描かれています。50年代末、福沢はこのように石膏や板、砂などを使って、立体的な画面作りを試みていました。日本で「アンフォルメル旋風」が吹き荒れた後のことです。

 

DSCF4039

同じ頃、山下もまた、ざらざらした絵肌を画面づくりに取り入れたり、不定形のイメージを活かしたりと、「アンフォルメル」に影響を受けたような表現を試みています。《黒いクチバシ》(1959年)にも、そんな山下の試みのあとが見られます。

 

DSCF4041

さて、この小部屋にあるガラスケース内には、福沢一郎のスケッチが展示されていますが、これらはすべて、福沢が山下に贈ったものです。《国引き》(1943年)という作品のデッサンなどは、山下がモデルを勤めていると自分で書き込んでおり、さらに日付まで入っているという、思い入れの強さを感じさせるものです。また、その左にある1976年に山下が福沢に宛てた手紙には、山下のアトリエへのまことに詳細な地図が同封されており、ここにも師への思いの深さが強く感じられます。

 

DSCF4035

小部屋を出て、書斎両脇の壁に移りましょう。ここには福沢《自由か死を》(1965年、写真左)と、山下《葬列(ベトナム)》(1967年、写真右)を展示してあります。60年代は国外ではベトナム戦争やアメリカでの公民権運動があり、国内では学生運動がさかんに行われるなど、政治や社会に対して強い疑念や不信が向けられた時代でもありました。福沢は滞在先のニューヨークで、デモに参加するアフリカ系住民を題材にして、鮮やかな色彩と力強い筆遣いにより多くの作品を制作しました。また山下は、足袋を履いた骨だけの足によって、戦争に追従する日本の政府のすがたを象徴的に描きました。時代をそれぞれの視点で見つめたふたりのまなざしが、これらの作品に如実にあらわれています。

 

DSCF4034

アトリエ北側のコーナー(写真右側)には、ふたりの70年代の作品を展示しました。この時期福沢は「地獄」や「餓鬼」をテーマに多くの作品を制作しており、今回は《蛾を食う餓鬼》(1972年、写真右から2番目)を展示しています。素早い筆致で描かれた餓鬼は、明るくユーモラスな姿をみせています。山下の《鶏群地獄〈水声〉地獄絵〉(1973年、写真右端)は、絵具の滲みから人や鳥の顔が浮かび上がってくるようで、少し不気味で恐ろしげな印象を受けます。
虐げられながらもしぶとく生きる餓鬼の生命力を描いた福沢と、謎めいた社会という暗闇にうごめく人々の愚かしいすがたを描いた山下。ふたりの画風や視点は全く対照的です。しかし不思議なことに、となりどうしに展示しても、ふたりの作品はさほど違和感を感じさせず、かえって互いを引き立てるような効果を持っているように思えるのです。これが、40年以上続いた師弟の絆のなせるわざなのでしょうか。
ぜひこの充実した展示空間を、ひとりでも多くの方々に楽しんでいただきたいです。

 

   *   *   *   *   *

福沢一郎記念館は、展覧会会期中の日、月、水、金の開館となります。
皆様のお越しをお待ちしております。
展覧会詳細は、→こちらから。

メールマガジン第1号(2014年10月17日発行)

=======================================2014/10/17
================================================
福沢一郎記念館 メールマガジン No.1
FUKUZAWA Ichiro Memorial Museum
– Setagaya,Tokyo
================================================
□■□ 現在当館は閉館中です □■□
■□■ 次の開館は11月です ■□■

[1] 予告! 2014年秋の展覧会
[2] ココで観られる福沢一郎作品
[3] コラム 福沢一郎の書架から(1)

————————————————————————————
[1]
□ 予告! 2014年秋の展覧会
開館20周年記念
「福沢一郎と山下菊二 師弟は時代とどう向き合ったか」

http://fukuzmm.wordpress.com/2014/10/02/fukuz_kikuji_2014a/

————————————————————————————

骨太な造形力と旺盛な批判精神によって、人間のすがたを描き
続けた福沢一郎。社会や制度の矛盾を凝視し、その奥底にある
ただならぬ世界を描き出した山下菊二。日本の近現代美術を語
るうえで欠かすことのできないふたりの画家のあいだに、とて
も深いつながりがあったことは、案外知られていないのではな
いでしょうか?
福沢は1936(昭和11)年に「福沢一郎絵画研究所」を開設し、
後進の指導にあたりますが、山下はここに19歳で入門します。
以来山下は福沢を師と仰ぎ、事あるごとに福沢を訪ねています。
ふたりの関係はどんなものだったのでしょう。また、山下が福
沢から学んだものは何なのでしょう。今回はそれを、時代と向
き合う姿勢、あるいは時代を見つめる眼に着目し、それぞれ5
点の作品と関連資料によってさぐってみようと思います。
当館の開館20周年を記念しておこなわれるこの企画、福沢一郎
以外の画家の作品が当館で初めて!展示されます。ふたりの作
品によって、刺激的な場が生まれることでしょう。
ご来館をお待ちしております。

会 期:11月2日(日)〜30日(日)の日・月・水・金・曜日
    午前11時〜午後5時
観覧料:300円
協 力:日本画廊

☆トークの会「福沢一郎と山下菊二 いま語る・その実像」☆
日 時:11月16日(日)午後2時〜3時30分
話り手:江川佳秀(徳島県立近代美術館 学芸調査課長)
    伊藤佳之(当館非常勤嘱託)
会 費:1,500円

山下菊二の作品・資料を多数所蔵する徳島県立近代美術館で、
長らく山下の調査・研究に携わってきた江川さんと、福沢一郎
の研究者である当館の伊藤が、それぞれの画業とふたりの関わ
りについて語ります。

※要予約、11月2日から受付開始、先着40名様。
 お申込みは電話のみにて承ります。 03-3415-3405 まで。

————————————————————————————
[2]
□ ココで観られる福沢一郎作品
《装へる女》 1929年 @富岡市立美術博物館・福沢一郎記念美術館

遺族のもとで長らく保管されていたこの作品は、おととし同館
に寄贈され、昨年の修復を経て今回の展示となりました。
第16回二科展(1929年)の入選作であり、当時の美術雑誌にも
図版が載っています。福沢一郎の、日本洋画壇デビュー作のひ
とつともいえるこの作品、青みがかった女性の肌といい、左右
対称のポーズといい、背景の処理といい…ちょっと不気味で、
ちょっと不思議な作品です。
画面右下には「Fouk. -27(29?)/福沢」という記載があり、
サインにアルファベットと漢字の両方が使われているのが面白
いですね。
今年11月3日まで展示予定とのこと。お見逃しなく!

富岡市立美術博物館・福沢一郎記念美術館 「現在の展示」に
画像があります。
http://www.city.tomioka.lg.jp/www/contents/1000000001919/index.html

————————————————————————————

————————————————————————————
[3]
□ コラム 福沢一郎の書架から(1)
 福沢一郎著『秩父山塊』アトリエ社 1944(昭和19)年

第1回めが福沢自身の著書で恐縮なのですが、最近話題の本な
ので、ぜひここで紹介させてください。
本書は、タイトルのとおり埼玉県秩父地方の紀行文と挿絵で構
成されています。終戦の前年の刊行ですから、物資統制厳しき
折、このような贅沢な本の刊行は大変だったことでしょう。
元埼玉県立自然の博物館館長の本間岳史さんによれば、福沢は
秩父地方を旅行するにあたって「地域に関する地質論文等をよ
く読み(中略)場所によっては自分なりに地質学的な疑問や課
題を設定してから現地を訪ねている」とのことで、参照した当
時最新の論文なども特定されています※。
地質学者も驚嘆するほどの知識を持ち、秩父の自然を鋭く観察
した福沢の科学的な視線が本書にはよくあらわれていますが、
地域の人々の暮らしに向けたまなざしや、故郷富岡に寄せる思
いも、文章のはしばしに見受けられます。そうした文章を読み
ながら、素早い筆致で描かれた秩父の風景をみていくと、ひと
り思索にふけりながら歩みをすすめる画家のすがたがじんわり
と頭に浮かんでくるようです。
戦時下の厳しさも一抹のほろ苦さとなって本書に味わいを加え
ており、さまざまな楽しみ方ができる一冊といえましょう。
当然のことながら、オリジナルは古本でしか手に入りませんが、
1998年に池内紀さんの「ちいさな図書館」シリーズで復刊され
ているので※※、手軽に、しかもコンパクトなサイズで読むこと
ができます。
美術ファンのみならず、山歩き好きな方や紀行文をよく読む方
にもおすすめの本書。ぜひ一度手にとってみてください。

※本間岳史「画家・福沢一郎と地質学ー画集『秩父山塊』からー」
『地学教育と科学運動』72号 地学団体研究会 2014年6月
※※ 池内紀編・解説『福澤一郎の秩父山塊』〈池内紀のちい
さな図書館〉 五月書房 1998年

————————————————————————————
================================================
福沢一郎記念館 メールマガジン No.1
2014年10月17日発行
編集・発行 一般財団法人 福沢一郎記念美術財団

福沢一郎記念館

【ホームページを移転しました】


facebook: https://www.facebook.com/fukuzmuseum

Copyright(c) 2003-2014 FUKUZAWA ICHIRO MEMORIAL FOUNDATION
All Rights Reserved.

※配信停止を希望される場合はそのままご返送ください。
================================================