所蔵作品選 絵からうまれることばたち 作品その6

※ふせんに書いてくださったことばをそのまま掲載しています。
※文字の色は、ことばが書かれたふせんの色です。

・月にいる神様「人間もここまで来るようになるとはね。」
・奥の所がブラックホールみたい 宇宙人が何かをみつけた?
・何が落ちてるのだろう.ちょっと不気味だけど服の色がすき。
・おぼれている人に対してただ見つめているように見える 風景は月の上のように見える
・迫力があって絵に引き込まれそうです.
・月面を歩く 人ではない生物のようにみえる 目線の先は顔があって 人間を見下ろす、あわれな視線?
・緑の服の人はなぜにやけているのか
・天の川逆バージョン
・2人は何を見つめている? 人の首? 暗いイメージ
・野生の目玉焼きみっけ!
・見守っている男性の衣の色が好きです。私も子供達の様に見守って欲しい
・氷の湖 氷を溶かせるか そのことで罪人たちを救えないか思案中…?!・波をかき分けて来る子羊に救ひを与えるメシアのやう‥ F
・キリスト? 水の中に人
・おぼれる人々を助けずにただ見つめるおじさん2人 かおが笑っててちょっと怖い
・宇宙の卵 割れてしょんぼり
・月世界のつどい
・New イザナギとイザナミ 新しい日本創造
・助けを求める人と見ている人。女神様みたい。
・何かみつけた
・さるのおんせんをながめている人々
・表面のざらざらが印象的です さわってみたくなります
・水泳大会 海水浴 子どもたちを見守る大人たち
・首切り役人? 白っぽいのは骨に見える 教祖感
・人生を終えあの世へたどり着こう! 向こうからは、来たければ来れば アマクないよ!
・こおりのみずうみをわたるだんて
・美しき色彩の対比.一郎先生の理想が現れた作品 ずっと見ていると私の心も澄んでくるようです


【ちょっとたねあかし】

《氷の湖を渡るダンテ》
1989年 アクリリック・キャンバス 24.5✕33.5cm

 ごてごて、ぼこぼこした画面に、人のかたちがいくつかえがかれています。画面右側には立っている人がふたり。画面真ん中から左にかけて、人の頭のようなかたちも3つあります。えっ、人の頭だと思わなかった!という方もいらっしゃるかもしれませんね。
 この3つのかたちが人の頭らしいと思われる理由は、作品のタイトルにあります。「ダンテ」とは、今から700年ほど前に活躍したイタリアの詩人の名前で、この人が書いた『神曲』は、世界中で読まれるとても有名な物語です。この中の「地獄篇」には、ダンテが地獄の世界を旅する途中「氷の湖」を渡る場面が出てくるのです。そこはとても重い罪を背負った人たちが氷づけになって苦しんでいるところなのですが…。さて、みなさんは最初にこの絵を見たとき、どんな物語を想像したでしょう? ダンテの物語と似ていますか? それともぜんぜん違いますか?


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所蔵作品選 絵からうまれることばたち 作品その5

※ふせんに書いてくださったことばをそのまま掲載しています。
※文字の色は、ことばが書かれたふせんの色です。

・花びんと花の色がいい 好きな絵です
・テント虫がかわいい テント虫がいることで花の大きさが分かる
・花にも見えるし、虫にも見える。いかにも一郎先生らしい豊かな色彩ですね!!
・庭で摘みたてのような花 パンジー
・ものすごい鮮やかさに圧倒されちゃう 僕はテントウムシ
・福沢一郎の花の絵が好きです てんとう虫が何とも愛らしい
・てんとう虫がいとおしいです
・穏やかな日常に天とう虫ががえられた 明るいところ
・平和な世の中に大らかに、美しく生きる。
・てんとう虫は肉食の昆虫です。きれいな花にたかる「あぶら虫」に吸い寄せされているのかな?
・こんな風に絵を描きたい!対象に向ける目はどんななのでしょう!
何の花?
・大好きです このバラの絵
・ナイフを使ってバラのマーブルな所や花びらの重なり ス.テ.キ.
・あ!! 落ちちゃった
・てんとう虫 ブーケ
・良い香り
・君はどこから来たのかね
・無題 花瓶が軽々と浮かんでいるな
・右下にいるてんとう虫がかわいい 花を目指している?
・いいね!
・てんとう虫にとっておいしそうな花
・バラがつぼとマッチしていてバランスがよく美しい
・花束全開
・いも
・この花の絵 部屋に飾ってみたいです。いやな事も忘れ明るい気持ちになれます。
・圧倒的な花の大きさ 極小のテント虫 いのちの重さは変わりません.
・てんとう虫がかわいい!!
・バラはやっぱりきれい いつみてもいい
・絵の具を直ぬり 他のとはちがう雰囲気?
・てんとう虫み〜つけた.
・むだい
・てんとう虫さん お花Love♡


【ちょっとたねあかし】

《無題》
制作年不明 アクリリック・キャンバス 32.0✕41.1cm

 なんの変哲もない花瓶と、そこに生けられた大ぶりの花がえがかれた絵…と思っていたら、画面の右下、ちいさなてんとう虫がえがかれている! みなさんは気づきましたか? このてんとう虫はどこから来たんだろう? ここで何をしているんだろう? そして、これからどうするつもりなんだろう…? たった一匹のてんとう虫が、いろいろな想像をふくらませてくれる気がします。みなさんはどんな物語を思い浮かべるでしょう?
 福沢は、花瓶に生けた花の絵をたくさんえがいていて、ごってりと絵具を分厚く重ねたもの、花瓶に人のすがたが描いてあるものなど、さまざまなバリエーションがありますが、こんなふうにてんとう虫をえがき入れたものは、とてもめずらしいのです。画家はどんな気持ちで、この絵にてんとう虫を登場させたのでしょう? 画家の気分になって想像をふくらませるのも、ちょっと楽しいものです。


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所蔵作品選 絵からうまれることばたち 作品その4

※ふせんに書いてくださったことばをそのまま掲載しています。
※文字の色は、ことばが書かれたふせんの色です。

・すこしだけ休ませて!
・大きな現物の絵を見てみたい 一郎先生の裸体の肉づきはとてもたくましくて頼りがいがありそう。
・たくましいー
・奥の重なるような人たちは争っている 手前の女性は争いにも疲れた?むずかしい時代でした。
・巨人の戦い 苦しい・辛そう ローマ? ラスタカラー
・じょせいぐんぞう
・一番下の人が苦しそうだ
・しばらくやすんで70年後 戦後の復興です
・歴史・世の中はいやという程の(アラソイ)のなかで進んで行くのか
・争いにそれを避ける人,成り立ちのような.
・第2次世界大戦!! この悲劇の教訓はバク大な量です。地球温暖化も大悲劇を産み出しつつあります。グレた・ツインベリさんに続こう!!
・つかれたあ〜
・私がモデル?
・とらわれし シユウネン コツコ
・疲れた母と けんかする子供 夕暮れ
・人?

・ああつかれた
・だるい(手前)はげしい(後方)感じ〜〜!!
・ひるね
・原始人 夕焼け
・大衆浴場 後ろで子どもたちがはしゃいでいる。
・遊ぶ子供たちと休む母 平穏な日々
・難民たち
・けんかしているように見える
・ケンカorあそんで疲れたのかな
・すもうの練習 疲れました でもすもうは楽しい
・不毛な争い
・疲労
・孫悟空昇天
・知的肉弾戦
・うばすて山かな?


【ちょっとたねあかし】

《女性群像》
1949年 油彩・キャンバス 65.2✕91.0cm

 はだかの人たちが、ごろごろと石が転がる風景のなかにえがかれています。空は赤と緑と黄色と…いろんな色でぬられていますね。朝なのか昼なのか夕方なのか…ちょっとはっきりしない不思議な空です。
 画面の右奥では、はだかの人たちが組み合わされ、重なるようにえがかれています。いったい何をしているのでしょう。画面左手前の女の人…乳房がはっきりえがかれているので、たぶんそうだと思います…は、たくましい体つきですが、顔を下に向けて、少しつかれた様子です。休んでいるだけなのか、それとも落ち込んでいるのか。いろいろな読み方ができそうですね。
 この絵が描かれたのは1949年、大きな戦争が終わってから4年後のことです。戦争が終わってから5年ほどのあいだ、福沢は、はだかの人間たちが荒れ果てた大地にうごめくようすをえがいた作品をたくさん発表していて、どうやらこの世を「地獄」に見立ててえがかれたものが多いようです。この作品もそんなシリーズの中のひとつだと考えられています。


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所蔵作品選 絵からうまれることばたち 作品その3

※ふせんに書いてくださったことばをそのまま掲載しています。
※文字の色は、ことばが書かれたふせんの色です。

・金の卵?
・鏡にうつる自分を見ている人
・ぐぬぐぬと た丶かふ天使 ガンバレよ コツコ
・ぺるせうすめどうせ
・輝く翼に刃 鏡?
・ろボロン? いや、モスラかな?
・コロナウイルス封じ込め完了 明るい未来へ!
・動きがあってカッコイイ.エスキースの線を残すのも一つなんだな。
・切りとられた髪のへびはまだ動いています

・人体化した蚊? 何かの戦い 古代ローマ 暑い
・これは良いですネ〜! 色の使い方が好きです
・ギリシャ神話? たねあかし本読んで納得した次第です。うーんなる程!
メドウサの髪 ヘビを退治することでメドウサ本人の生命を救う まっとうな姿にもどして
・ビックリ! 中にヘビが
・福沢先生の絵は、人物像が丸く、太く、力強いので生命がはじけるようです。花鳥風月、月はあまりないかもしれませんが、原色を多く使うことで同じモチーフのものがないのが理知的です。

・立派な顔をしたお父さんが子供を見守っているみたいです 蛇もゆったりと太目ですね。全体の色の感じが好きです。
・円盤投げ?
・女神と鳥人間。ギリシャ神話が混ざっているのかな?
・メデューサの顔が見たかった 盾に映しながら とはどうやって近づくのかと思っていたが、そうか
・守護者みたいに何かから守っているよう
・人間の前面には常に猿顔(ずるさ)があり、笑いながらも検をしたため、相手(ヘビ)に対してそなえている。
・神話の世界?

・中年女性
・天使が卵を運んできた。
・鳥なのか人間なのか 色彩が好き
・この人物からパワーがっ!!
・火打ち石を初めて見つけた原始人
・動物→トラ?サル?人間のようにもみえる ヘビをつかまえる仕掛けをつくって見事ゲットしたみたいなかんじ
・シックな色合も素敵です。
・パンをたべようとしているかい物。パンのにおいをかいでいるかい物
・猿とへびだと思われる→ナイフをもっているように見える
・メデューサと戦う 迫力
・ラグビー部
・闘う剣士 みなぎるとうし
・地上に降り立ち生き物観察する天使?
・ペルセウスが退治したメドゥーサは彼の盾の中でその実の姿ヘビを表した
・不死鳥が卵を孵化するのを見守っているが、どんな子が産まれてくるのかはまだ解っていない。
・自由でいいなあ
・奥深い色使いで表現力がすごいです。
・たまご?顔の表現がめちゃくちゃよい!


【ちょっとたねあかし】

《ペルセウス、メドゥサを退治する》
1985年 アクリリック・キャンバス 72.7✕60.6cm

 このタイトルをみて、「えっ、これが?」と思ったかたはけっこう多いのではないかと思います。画面の中に、人物らしきかたちが大きくえがかれているのはなんとなくわかりますが、それがいったいどんなことをしているのか? いったいどんな場面なのか? 細かく説明するようなえがきかたではないので、ぱっとイメージするのはむずかしいですね。
 では、タイトルにそって絵を読んでみましょう。ペルセウスは、ギリシャ神話に出てくるヒーローで、あるときメドゥーサ(メドゥサ)を退治するように命じられます。メドゥーサは髪の毛のかわりに生きている蛇がはえている怪物で、それににらまれると石になってしまう怖ろしい能力を持っていました。ペルセウスは青銅の盾にメドゥーサのすがたを映しながら近づいて、みごとその首を切り取ることに成功します。この絵はきっと、その退治の場面をえがいたものと考えられます。
 とすると、この大きくえがかれた人物はペルセウスで、右手ににぎられているのは剣でしょうか。そして、ちょっとつぶれた円いかたちは、メドゥーサのすがたを映す青銅の盾、画面右下のもじゃもじゃしたかたちが、もしかしてメドゥーサの頭かも?と想像することができそうです。
 面白いのは、ほんとうならメドゥーサの顔が盾に映っているはずなのですが、映っているのは、いきおいよくえがかれた、茶色のくねくねとした線。これはいったい何なのでしょう? みなさんはどう思いますか?


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所蔵作品選 絵からうまれることばたち 作品その2

※ふせんに書いてくださったことばをそのまま掲載しています。
※文字の色は、ことばが書かれたふせんの色です。

・魚介類で満腹
・爆発す 無機と有機の はざまより コッコ
・魚?
・深海の怪魚が沢山 テクニックが面白い

・はくあきのげんそう
・版で作った?
・ちょっとコワイ。
深海魚?
・滅びのあとにメッセージを残している… 白亜、白壁 骨の白さのこと?!
・深海のイメージ
・キャンバスの裏にこの絵を描いた絵具がたれて それも何か表現出来ていたのでしょうか
・くしゃっとしたレジャーシート 瀧口修造 F
・とんでいる船のよう
・焼き魚 おいしくいただきました
・2021五輪後の東京 ここから創造をはじめよう
・デカルコマニーの手法。モノトーンが観る側にいろいろな色彩を
・海の底に沈む魚達 白骨化し何かを訴える!
・化物 白黒で書かれていて特徴的 少しコワイ
・水墨画とモノクロをかけ合わせた空のよう

・何だろう??? 海の中???
・心の中に自由がおありになったのね
・せんそうのあとの世界。どすぐろいかんじ。あたらしく産まれた生物
・魚たくのよう.どのように描いたのでしょう
・深海!海の底とは!
・今までに見なかった作品が沢山あり嬉しかったです。コロナの中作品展を開かれてご家族の皆さまたいへんでしたね。
・空に何かがとんでるような不思議なもの
・刺繍の拓本
・単色なのにすごいふくざつだなあ
・化石スタンプナウ
・化石の彫刻とマンガの間を自由に往来
・海の中 時間が生まれる
・文字を書いているようにみえる
・色のない世界 夢の中.風を感じる
・深い空間とためいき


【ちょっとたねあかし】

《白亜紀の幻想》
1962年 油彩・キャンバス 91.0✕116.7cm

 モノクロームの画面には、もやもやとした不思議なかたちがいっぱい。絵の表面は乾いているのに、なんだかベタベタとした感じ。画家がどうやってこんなかたちを作ることができたのか、実はよくわかっていません。油でうすく溶いた黒い絵具を、平らに置いたキャンバスの上に広げて、その上に切り抜いた紙や布などをのせ、少し乾いたところで引きはがす。そんなやりかたをした部分はいくつかありそうです。ともあれ、ふつうに筆でえがいただけではつくれないかたちが多いことはたしかですね。
 1959年から1962年頃、つまり今から60年くらい前、福沢はこんな黒一色の作品をいくつも作っていて、そのなかのいくつかが、「白亜紀の幻想」というタイトルで発表されています。「白亜紀」といえば、恐竜が世界中にいた昔むかしの時代のことですね。日本でもその次代の化石があちこちで発見されています。この絵がどうして「白亜紀」なのか? ちょっと想像してみてください。


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【展覧会】「所蔵作品選 絵からうまれることばたち」会場風景+作品とことばたち

2021年春-夏の展覧会 「所蔵作品選 絵からうまれることばたち」 の会場風景と、ご来館くださったみなさまが作品から紡いでくださったことばたちをご紹介します。

今回の展覧会は、当館所蔵作品の中から選りすぐりを展示し、解説パネルやキャプションを設置せず、ご来館くださったみなさまに、自由に作品をみていただこうという趣旨のもと開催しました。また、作品をみて感じたことや考えたことなどを、ふせんに書いて、アトリエ中央のテーブルに貼り付けていただき、たくさんのことばをみなさまと共有できるようにしました。

こうした試みは初めてのことで、どんなご感想をいただけるのか正直不安に思っていましたが、ことのほか楽しんでいただけた方が多く、テーブルの上はたくさんのふせんで埋め尽くされました。

これらの、作品にお寄せいただいたことばたちは、このページ下のリンクから各作品ごとにごらんいただけます。

きくて生命力の強そうな花は、福沢の描く人間像に似た存在感を放ちます。また壺の絵は、おそらくは古代ギリシャの壺をヒントにしていると思われますが、モティーフはエジプト壁画、イランの建築レリーフ、レオナルド・ダ・ヴィンチの絵画、そして卑弥呼など、じつに多彩です。彼がその都度想像をふくらませ、独自の世界をつくりあげようとしていたことがわかります。

階段下の展示ケースには、ちょっと不思議な雰囲気のあるスケッチや挿絵などを展示し、こちらもことばをお寄せいただけるようにしました。


大きさも年代も、絵画表現じたいもじつに多彩な作品が並んだ今回の展覧会。作品を選んだポイントは、ただただ「見た目の面白さ」だったのですが、そんな単純な意図をこえて、とても豊かなことばをみなさまが生み出してくださったのは、みなさまの豊かな想像力と、福沢一郎作品の懐の深さゆえだと感じています。

興味深かったのは、ちいさなスケッチも大きな油絵も、同じようにたくさんのことばが紡がれたことです。ふだんあまり日の目を見ないささやかなものたちが持つ力を、改めて知ることができました。

   *   *   *   *   *

では、ご来館のみなさまが紡いでくださったことばたちとともに、作品のちょっとした解説を、お楽しみいただきましょう。以下の画像をクリックすると、その作品からうまれたことばたちのページにジャンプします。

所蔵作品選 絵からうまれることばたち 作品その1

※ふせんに書いてくださったことばをそのまま掲載しています。
※文字の色は、ことばが書かれたふせんの色です。

・こんな花鳥の世界へ行って見たい
・ああこの花の絵部屋に飾りたい

・人間のごく自然の姿
・何気ない普通の景色をスケッチしてみたい

・美しい花に鳥の声 動物のあしあと等 楽園を感じました。
・山川草木 悉皆仏性 いのちあるもの丶楽園
・花がこわい
・こんな柄のお洋服が欲しいなあ
・もわもわ ぎしぎし 田舎
・色が本当に昨日描かれたようにあざやかです!
・動物の中に人のような顔があり、自然の中にもあるように見える
 ナイトメアと一筋の光のようなイメージ
・花? 花火?

・花畑をみつめる花人間?
・アダムがりんこを食べる前の色彩から世界

・去りにし方をふりむいて、みれんはあれど前進す
・てんちそうぞう
・花園 楽園
・中心に描かれているものは「トマト」?

・一郎先生! この絵を描くのは楽しかったでしょうね。次から次へと描きたい物が頭に浮かんで来るのでしょうね。羨ましい限りです。
・もこもこ ざわざわ
・赤い花が4 いろいろな太陽 それぞれちがう意味 こわくて逃げる

・花がユニーク 色づかいがすごい
・右上の雲がせまりそっと身を隠す 2021 五輪と東京都民
・夢の中かな?(先生の)
・はなのえ
・ちょっとルオーっぽい感じ
・楽園 こんな世界に身を置いていたい!
・花はやっぱり
・カラーが素敵

・人間が本来取り持つ欲望とそれを調整する理性と人間精神の理想的なあり方が入り込んでいる。
・花がいっぱい
・花 神秘的な森
雲と天使と花たち。枝と山羊 黒い枝に鳥。わっと広がる雲。
・葉書で見た絵。もっと大きい絵と思った。花の世界
・青春、若々しい花ばなの色彩。バックの黒っぽい紺色が未来の不安を感じさせる。

・安らぎと自然な生活感なる想い。
・モンスター 雷雲 サソリ 空 葉っぱ 下に山?

・季節は夏なのかなと思った もくもく雲にトマト?
・夏の花 森を上から見下ろしている 南国
・おいしい たのしい あたたかい
・動物がユニーク
・色彩が鮮やかでとても美しい
・楽しい森の中 色んな音なんだろう
・雪の結晶? 静けさ
・安らぎと自然な生活感なる想い。
・いくつかの絵には生命力を感じる 力強さとやさしさがある
・けもの道
・夏の匂い すきまからあふれる
・もりにある1本の木のようです。くもの上の世界のようです。
・あの世とはこういう景色かナ
・花畑のようで素敵です
・色彩が鮮やかで想像力が沸いて美しい。個性的でいつ見てもひきつけられる
・色 色 色 色
・森の木陰 1本の大きな木に花が咲き鳥がさえずり古代が息づく
・色使いが華やかで連想させるのですばらしいです。
・生きる力
・大自然、楽園? ファンタジー? 神話
・ファンタジー?
・天国からの脱出
・お花がひとつひとつちがう!とりの線がとってもすき!
・色を重ねているのが近づくとよくわかります
・楽園 のどかなひととき


【ちょっとたねあかし】

《天地創造》
1973年頃 油彩、アクリリック・キャンバス 50.0✕97.0cm

 横に長い画面の上に、黒く太い線が何本も走っていて、花や葉っぱ、鳥、虫、動物、人などいろいろなかたちが、あざやかな色でえがかれています。
 画面右上のもこもこしたかたちは何でしょう? それから、画面左側の緑やピンク、黄色などで描かれた縦長のかたちは、何を表しているのでしょう? こういう不思議なかたちが、絵のなかの物語をどう読むか、につながってくるようです。
 作品のタイトルは「天地創造」。このことばを聞くと、旧約聖書の「創世記」にある天地創造の物語を思い浮かべる人も多いかもしれません。神さまが順番にこの世のものを作っていき、最後に人間を、自分のすがたに似せてつくったという物語です。そんな物語がこの絵のなかにあるとしたら、どうでしょう。自分の想像と似ていますか? それともぜんぜんちがいましたか?
 それにしても、画面左側の動物たちと、人間らしきかたちは、画面の大きさや、花など植物の大きさと比べて、ずいぶんひかえめです。これはどうしてなのでしょう? ぜひいろいろ想像してみてください。
 ちなみに、この作品は、ある家のステンドグラスの原画としてえがかれたものだそうです。黒い線とあざやかな色は、ステンドグラスのイメージを思いえがくために必要なものだったのかもしれませんね。


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【展覧会】所蔵作品選 絵からうまれることばたち 6/24 – 7/10


このたび、福沢一郎記念館(世田谷)では、展覧会「所蔵作品選 絵からうまれることばたち」を開催いたします。

福沢一郎は、自らの制作や個々の作品についてたびたびコメントしていますが、作品を受け取る側=鑑賞者の自由な解釈も尊重していました。実際、福沢の絵画は過度な説明的描写がなく、さまざまな解釈が可能なものばかりです。
 では、わたしたちはどこまで、福沢の絵画世界を自由に解釈し、想像をふくらませることができるでしょう? 今回は、制作年も技法も大きさも違う作品をランダムに選び、タイトルや制作年等を明記せずに展示しました。これらの作品の中でどんなことが起こっているでしょう? どんな印象を受けるでしょう? どんな疑問がわいてくるでしょう? そんな作品との対話のなかから、たくさんのことばが紡ぎ出されてくると思います。それこそが、今回の展覧会のテーマです。
 みなさんのことばを共有するための、ちょっとした仕掛けも準備しています。また、自分だけの解釈でじっくり絵画の世界を楽しみたい!という方も大歓迎です。ぜひおでかけください。

この作品のなかで、どんなことが起こっているでしょうか?

会 期:6月24日(木)―7月10日(土)の
    木・金・土曜日 12:00 -17:00(入館は16:30まで)
観覧料:300円


※ 新型コロナウィルス感染拡大防止のため、ご来館時にはマスクをご着用ください。みなさまのご協力をお願いいたします。


【イベント情報】
午後の/夜のおしゃべり鑑賞会オンライン
6月27日(日)14:00〜15:00
7月2日(金)20:00〜21:00
7月3日(土)14:00〜15:00
7月10日(土)20:00〜21:00
詳しくは こちらのページ をごらんください。

【終了しました/イベント案内】午後の/夜のおしゃべり鑑賞会オンライン

※画像は過去の展覧会会場風景です         

2021年春-夏の展覧会「所蔵作品選 絵からうまれることばたち」に展示予定の作品(の画像)をみながら、みなさんで気軽に、自由におしゃべりしてみましょう。
予備知識はいりません! 正しい「みかた」もありません! 
「対話型鑑賞」で作品を語るみなさんのことばが、新しい作品のみかた、楽しみかたをつくります。
今回は群馬県を中心に活動する「対話型アート鑑賞ラボ」のご協力をいただき、オンライン形式の鑑賞会に、当館がはじめて挑戦します。ぜひぜひご参加ください。

プログラムは以下のとおりです。(全60分)
1.ごあいさつ、アイスブレイク(5分)
2.作品鑑賞とおしゃべり(30分)
まずはじめに、少しの時間、1点の作品(画像)をじっくり、ゆっくりとみてみましょう。
※ どの作品をみるかは、当日までナイショです。
そのあと、感じたこと、気になったこと、発見したことなどなど、いろいろお話してみましょう。
ファシリテーター(進行役)が、みなさんのおしゃべりのお手伝いをいたします。
3.ふりかえり、質問タイム(15分)
鑑賞とおしゃべりを終えて、どんなことを感じましたか?
ぜひご意見やご質問をお寄せください。

参加は無料です!

日程は以下のとおりです。
1.午後のおしゃべり鑑賞会オンライン(小学生〜一般対象)
 日時:①6月27日(日)14:00〜15:00
    ②7月3日(土)14:00〜15:00
2.夜のおしゃべり鑑賞会オンライン(一般対象)
 日時:①7月2日(金)20:00〜21:00
    ②7月10日(土)20:00〜21:00

◎参加方法と申込方法は以下のとおりです。
1.参加方法
オンライン会議システム「Zoom」を使用します。
PC、タブレットまたはスマートフォンをご用意ください。
あらかじめ「Zoom」のアプリケーションをインストールしておいていただくと、ご参加がスムーズです。
2.申込方法
各回の定員は、鑑賞者(おしゃべりする人)6名見学者(おしゃべりのようすを見学する人)15名いずれも先着順です。
以下のリンクから、申込フォーム(Googleフォームを使用)にご入力いただき、送信してください。
※ 定員に達した日時と参加形態(鑑賞者・見学者)は、お申込フォームから入力できなくなります。

参加のお申込みは→こちらのリンク←または以下のQRコードからどうぞ!

イベントは終了しました。たくさんのお申込・ご参加ありがとうございました!

 参加者のみなさまには、zoomリンクなどのご案内を、ご登録のメールアドレスに、開催日前日までにお送りさせていただきます。
 ※ フォームへのご入力・送信後、フォームからの自動メールが送信されます。迷惑メールフォルダに入ってしまうことがあるので、ご確認ください!
 ※ イベント開始前30分を過ぎてもメールが届かない場合は、ご遠慮なくお問い合わせください。

◎このイベントに関するお問い合わせは、event●fukuzmuseum.com (●をアットマークに替えてください)までどうぞ。

【ご報告】シンポジウム「画家の写真資料 保存と情報共有の実際」レポート

新型コロナウイルス感染症拡大による東京都内の緊急事態宣言が続く2021年1月30日、当館では、オンラインシンポジウム「画家の写真資料 保存と情報共有の実際」を開催しました。当館では初のオンラインのイベントとなります。

※ このシンポジウムは、今年度、公益財団法人ポーラ美術振興財団から助成をうけた「長谷川三郎と福沢一郎の写真資料に関する調査研究」の中間報告としておこなわれるものです。
また、このシンポジウムの内容の一部は、科学研究費 基盤研究(C)「写真・映像の 「影響」から見た日本の前衛芸術――昭和戦前期を中心に」(研究代表者・谷口英理)の研究成果に基づくものです。


本シンポジウムは、概ね以下のスケジュールに沿って行われました。

 ◯はじめに 問題の所在と研究の概要(13:30〜13:50)
  谷口英理(国立新美術館 学芸課 美術資料室長)
  伊藤佳之(福沢一郎記念館 非常勤嘱託)
 ◯第1部 研究発表(13:50〜15:50)
 (1)福沢一郎の写真資料 伊藤佳之(13:50〜14:20)
 (2)長谷川三郎の写真資料 谷口英理(14:20〜14:50)
   〈休憩10分〉
 (3)美術館資料としての写真 東京国立近代美術館アートライブラリ所蔵
    『抽象と幻想』展関連写真を中心に(15:00〜15:30)
    長名大地氏(東京国立近代美術館研究員)
 (4)昨今の写真資料の危機(15:30〜15:50)
    肥田康氏(株式会社堀内カラー アーカイブサポートセンター所長)
   〈休憩10分〉
 ◯第2部 質疑・意見交換(16:00〜16:30)
 ※ 終了後、希望者は17:00まで意見交換などをおこないました。

今回は非常に多数のお申込があり、予定をはるかに超える43名のご参加がありました。


シンポジウムの冒頭に、谷口氏から、我々が抱えている問題意識と、そこから調査研究を始める過程について発言があり、続いて伊藤からも当館の実例をもとに「画家の写真資料」を考える意義を述べました。

谷口英理氏(国立新美術館 学芸課 美術資料室長)
伊藤佳之(福沢一郎記念館 非常勤嘱託)

研究発表は、まず谷口氏と伊藤から、それぞれ対象となる写真資料の保存処置とデジタル化の過程、またデジタル化された資料の検討からみえてきたことなどをお話しました。
伊藤からは、改めてみえてきた福沢の写真の特質や魅力についてお話しし、また大規模なプロジェクトでなくとも写真資料の保存処置やデジタル化は可能であり、「消耗品費数千円、委託料数万円からのデジタル化」からはじめることをご提案しました。

谷口氏からは、《室内(二)》をめぐる解釈と検討の経緯や、今回その全貌が初めて明らかになった、長谷川が中国旅行の際に撮影した写真群について解説がありました。また「作品」というカテゴリに固執すると、作家の重要な部分、例えば造形実験としての写真の重要性を見失う可能性や、長谷川や福沢と同時代の「美術家の写真」をデジタル化等の手段で可視化していくことで、彼らのメディア意識が明らかになるのでは、という展望などが示され、「求む! 未整理・保存の危機にある前衛美術家の写真・映像資料の所在情報」と力強い呼びかけがなされました。


続いて、今回招聘したパネラーのおふたりの発表がおこなわれました。まず長名大地氏による「抽象と幻想」展の写真資料に関する発表では、ガラス乾板の記録写真をデジタル化したことで明らかになった事例が次々と述べられました。記録として不明瞭であった同展の輪郭を浮かび上がらせるだけでなく、戦後の美術館における近現代美術「史観」の提案を考えるうえでも重要な研究資源が、写真のデジタル化によって生み出されたわけで、今後の調査研究の進展がおおいに期待されます。

長名大地氏(東京国立近代美術館 企画課情報資料室 研究員)

また、さまざまな現場でデジタルアーカイブのプロジェクトに関わってこられた肥田氏からは、今回の福沢資料のデジタル化作業についてお話いただいたあと、写真資料が含む情報の大切さと、日々刻々と失われつつある写真資料の危機について、実例をもとにお話いただきました。参加者のみなさまにも「今そこにある危機」を改めて考えるきっかけとしていただけたのではないかと思います。

肥田康氏(株式会社堀内カラー アーカイブセンター所長)

発表に続く質疑・意見交換では、現場で写真資料に相対するみなさまから、具体的な資料の取扱や、資料の保存を目指した考え方・基準のようなものについての質問が相次ぎました。以下に質問へのお答え、ご感想等とともにご紹介しますので、ごらんください。(時間内にお寄せいただいたものに限っています。また、ご質問くださったみなさまのお名前は伏せさせていただいております。) 

コロナ禍によりオンラインでの開催となったシンポジウムは、予想以上に参加者のみなさまの関心が高く、現場で日々悩んでおられる様子が伝わってきました。
今回の発表や意見交換が「画家の写真」について考える一助となり、また失われゆく貴重な写真資料を救うひとつのきっかけになれば、大変ありがたく思います。
(伊藤佳之)


◯ご質問と回答
・「フエルアルバム」は写真の保存によくないと東文研の研修で習いましたが、やはり遺族のもとで「フエルアルバム」が発見されることが多々あります。おそらくフエルアルバムの状態で記録写真をとって、台紙から剥がすのだと思うのですが、裏のベトベトがついていたり、反ってきたりしてどうもうまくいかず、良い方法があったら知りたいです。
 →(肥田氏)率直に言って、いい方法はありません。フエルアルバムは画期的なシステムではありましたが、糊分が印画紙の支持体に染みこんで、長い時間をかけて悪さをする例のひとつです。貼った人が几帳面であればあるほど剥がしにくいです。剥がすことが可能であれば、一刻も早くはがして、ノンバッファの紙フォルダで挟むなどして保存するのがいいと思います。
 →(谷口氏)過去に、水濡れしたフエルアルバムを扱ったことがありました。表面の乳剤が溶けだしていて、一刻を争うような状態でした。そのときは堀内カラーさんと資料保存器材さんでチームを組んでもらって、剥がせるものは剥がす。剥がれないものは、台紙から薄く切り取ってフォルダに挟む、という作業をしてもらいました。そうした脆弱なものからデジタル化の優先順位を高くしていくことが必要だと思います。

・遺族がお持ちの写真を美術館の展覧会などで一時的にお借りすると、元々のアルバムとは違うところに戻されてしまったり、借用した時のままの袋でその後、次の展覧会で誰かが借用するまでそこに置かれています。遺族から一時的に借りたものをどうやって保管してもらうのか、何か統一したフォーマットのようなものがあると嬉しいです。
・以前、考古学の学芸員さんと話した時に、資料を発見したときはそれがどこにどんな順番で置かれていたのかも記録すべきだ、とおっしゃっていました。その話を聞いて画家のアトリエの状態もできれば最後に使ったままで一度撮影なり、記録を取るべきだと思いました。しかし、画家のアトリエにも家庭生活が入り込むのでその後、ご家族のかたがどの程度手を入れられたのかが分かりません。それでもある時点で記録を取るべきなのでしょうか?
 →(谷口氏)個人の方に資料を保管していただくためのルールやフォーマットは、ないのが現状だと思います。アーカイブズの基本原則として「出所原則」「原秩序保存の原則」「原型保存の原則」「記録の原則」がありますが、「原秩序」とはどの時点をさすべきか、というのがやはり難しくて、個人文書は公文書などのように完璧に管理するのは無理だと私は思っています。例えば、歴史学の先生が文書の悉皆調査などなさる際、ある倉庫の調査に入るときなどは、その時点で棚など場所ごとに番号をふり、写真を撮って、簡単な概要(目録)を作成し、それをもとに順次細かい目録を作成していくのだと思いますが、そういう方法しかないかな…と。画家のアトリエの場合も、何処に何があるかわかる程度に、写真やメモでざっくりと記録をとっておき、ご遺族などには、元の場所にあることが大事なんです、ということをなるべくご理解いただきながら、調査をすすめる。そういうやり方しかないのかなと思います。
 →(参加者より)東京都写真美術館では、遺族や個人コレクターからお借りした作品の場合は、展示で使用したマットのままお返しすることが多いです。また可能の範囲で間紙などを入れることをお薦めしていました。
 →(伊藤)福沢のアトリエも、ご遺族が記念館を作られるときに資料を整理なさって、富岡市の記念美術館に寄贈したり倉庫に預けたりなどしました。その時点で画家の使っていたアトリエとは違うものになっています。ただ、写真資料に関していえば、それ以降は大きく場所が変わることはなかったので、その場所の記録はつけています。ましてや個人のお宅の場合は生活空間なので、都合によってモノが動くことはあるでしょう。やはり調査に入った時点で記録をとる、必要に応じてそこから紐付けていくという方法しかないように、私も思います。

・1970年以降ビデオ記録も増えていると思われますが、動画のデジタル化に関しての注意点も教えてください。ベータ、VHS、ほか、また同時に音声テープもあるかと思います。併せてお願いします。
 →(谷口氏)国立新美術館に寄贈されたさまざまなメディアの資料は、実際どこまでデジタル化すべきかを考えなければいけません。当館ではまず、業者さんにお願いして、テープやフィルムにどんなものが入っているのか、保存状態などをざっと調べていただきます。その中にはテレビ番組を録画したものなど、デジタル化できないものも入っていたりします。そういうものは除いて、必要と認められるもののみを、予算に応じてデジタル化するようにしています。
 →(肥田氏)ビデオテープはmpeg4などのデジタル動画データに、8mmや16mmなどのフィルムはテレシネという作業を通して動画データにするのが一般的です。6mmの音声テープはWAV形式で保存します。それから、大事なビデオテープなどは、マスターテープからコピーを複数作って残していることがあり、お金をかけてデジタル化してみたら同じものが出てしまうこともあります。業者によっては(記録内容の)タイトルとか、フィルムの頭だけ出してくれたりするので、谷口さんのおっしゃったようなチェックをするのも大事と思います。

・紙焼き写真をスキャンによってデジタル化する方法を進めようとしているのですが、よいのかどうかのか迷いがあります。サイズが大きな写真は無反射ガラスで押さえての撮影を進めています。アドバイスいただけると幸いです。よろしくお願いいたします。
 →(肥田氏)スキャンと撮影どちらがいいかはなかなか言いにくいのですが、写真資料そのものへのダメージは、スキャナのほうが大きいです。特に古い資料や劣化の進んだ脆弱な資料については、安全という意味で、デジタルカメラによる撮影に軍配があがります。画像の品質については、使用する機器によっても違いますので,一概にはいえないと思います。
 →(伊藤)フィルムのデジタル化には、専用のフィルムスキャナを使うのですか?
 →(肥田氏)堀内カラーは写真の現像をする会社だったので、今後はフィルムのデジタル化が必要だろうということで、業務用のフィルムスキャナ…今はもう製造していませんが…それを相当の台数確保しています。フィルムのほうが紙焼に比べて(コマ当たり)圧倒的に早く、安くデジタル化が可能です。

・わたしも紙焼き写真をスキャンでデジタル化することがありますが、毎回、埃の映り込みとの闘いです。何か、アドバイスいただけませんでしょうか。
 →(肥田氏)今の季節は特に静電気が発生しますので、埃がつきますね。当社の撮影のスタジオはクリーンな状態ですが、さらにエアコンプレッサーで塵や埃を飛ばしてスキャンしても、ついてしまうことがあります。なかなか有効な手立てはありません。ですから、作業として、画像加工ソフトで何%まで拡大してゴミをとること、というような仕様が、発注時に入っていることがあります。

・デジタル化して現物は所蔵者に戻す、というのは一般的なのでしょうか。当館では写真を含めて美術資料を寄贈されることが多く、収蔵庫がいっぱいで困っております。アドバイスをいただければ幸いです。
 →(谷口氏)これは一般的、とはいえず、ケースバイケースだと思います。長谷川三郎の場合は著作権が切れているので問題ありませんが、残っている場合だとまた事情が異なります。問題は、美術館に所有権がない資料をデジタル化する権利が美術館側にあるのか、ということです。著作権法上の問題ですね。所有権のある資料であれば、保存のための複製なら法的に許されているのだと思いますが。デジタル化した後にはお返しします、という資料ならば、お借りする際に、デジタル化した画像の使用に関する契約を、所有者や著作権者と結んでおかないと、公開などができないということになってしまうかもしれません。また、資料の現地保存についていえば、展覧会の調査にうかがった際に目録をとったり保護包材に入れ替えたりなどの作業をさせていただいて、そのあとは、きちんと資料が保存されているかどうか、できる限り所有者の方と連絡を密に取り合うことも大事だと思います。

・(谷口氏)長名さんに「抽象と幻想」展について質問です。目録や書籍などの刊行物が出ていますが、そこに出ているデータだけでは、すべての出品作は追えない、ということで、写真から特定なさっている、ということでよろしいですか。
 →(長名氏)両方ありますね。実際に(写真から作成した)デジタル画像にしかない作家・作品もあります。(目録と写真の間に)異同があるので、そこを付き合わせる作業が必要になり、リストも複層的になっています。例えばある雑誌に掲載された図版の列と、デジタル化した画像の列、などを作って対応関係をみていくことで、ちゃんとしたリストが完成するのかなと思います。
 →(谷口氏)つまり美術館が公式に出したリストは完璧ではないと。
 →(長名氏)厳密にいうと、そうですね。それは調査してはじめてわかったことです。

◯ご感想(主に長名氏の発表に関して)
・アドバイス参考になりました。ありがとうございました。和歌山近美は地方ですが県美時代1963年から記録があり、保存、アーカイブ化の必要を感じております。
・本日、良い機会となりありがとうございました。長名さんのお話などで、展覧会自体のアーカイブ化も何か最低限でも考えていかないといけないな、など考えさせられました。
・刺激的でした。展覧会の資料については、貴重だと思うとともに、小規模な展示替えがよくあることなので、結局展覧会の最終的な形とはなにか、つまり学芸的な意図の実現というものをどう解釈するのか、難しいところがあるように考えます。