メールマガジン第2号(2014年11月13日発行)

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福沢一郎記念館 メールマガジン No.2
FUKUZAWA Ichiro Memorial Museum
– Setagaya,Tokyo
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□■□ 現在当館は開館中です □■□
■□■ 開館日は日月水金です ■□■

[1] 開催中!2014年秋の展覧会
[2] ココで観られる福沢一郎作品
[3] コラム 福沢一郎の書架から(2)
[4] 賛助会員のお誘い

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[1]
□ 開催中! 2014年秋の展覧会
開館20周年記念
「福沢一郎と山下菊二 師弟は時代とどう向き合ったか」

http://fukuzmm.wordpress.com/2014/10/02/fukuz_kikuji_2014a/

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開館20周年にして初めて、福沢一郎以外の作家の作品が展示さ
れた、記念すべき今回の展覧会、やはりとても刺激的な空間と
なりました。
福沢一郎と山下菊二、ふたりの作風はまさに対照的なのですが、
それぞれの個性は失わず、非常にいいバランスで輝きを放って
います。
注目は福沢一郎《フクロウ》。小品ながら、山下菊二との関係
をあれこれ想像させる、とても面白い作品です。また、山下の
《日本の敵米国の崩壊》も、福沢との繋がりを強く感じる貴重
な作例。ぜひ解説パネルを読みながらお楽しみください。
皆様のご来館をお待ちしております。

会 期:11月2日(日)〜30日(日)の日・月・水・金・曜日
    午前11時〜午後5時
観覧料:300円
協 力:日本画廊

※トークの会「福沢一郎と山下菊二 いま語る・その実像」
 11月16日(日)午後2時〜3時30分 は、定員になりました
 ので受付を締め切らせていただきました。

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[2]
□ ココで観られる福沢一郎作品
《敗戦群像》 1948年 @群馬県立近代美術館

福沢一郎の作品としては、おそらく一番露出度の高いものだと
思います。でも所蔵館で常に見られるわけではありません。
たまに国内外の展覧会のために旅に出ることがあるので、保存
のため頻繁に展示することが難しいのです。だから常設で見ら
れたらむしろラッキー!
荒涼とした大地に裸体がうず高く積み上げられ、複雑にからみ
合っています。いったいいくつの人体があるでしょう?という
クイズを出したくなりますが、はい、実際どうなのかは判りま
せん。あしからず。
この作品、福沢の代表作と目されていますが、まだ解明されて
いない謎があります。タイトルの《敗戦群像》は、発表当時に
は「敗戦の記念碑」だったり「群像」だったりと、一定してい
ません。また、人体のピラミッドの頂上にある頭部は、古い図
版にはみられないものです※。とすれば、のちに描き足された
ものでしょうか? いったいいつ頃? 謎は尽きません。
そのぶん見る楽しみも尽きないですね。
展示期間は12月14日(日)まで。

作品画像は記念館ホームページに掲載中。
http://fukuzmm.wordpress.com/2011/09/09/1948_haisen/

※ 例えば、針生一郎『芸術の前衛』(弘文堂、1970年)冒頭
の図版《群像》1948年 を参照のこと。

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[3]
□ コラム 福沢一郎の書架から(2)
 阿部次郎著『地獄の征服』〈文芸評論 第一輯〉
 岩波書店、1922(大正11)年

なかなかショッキングなタイトルですが、中身は著者のゲーテ
『ファウスト』とダンテ『神曲』に関する講義録が中心の論文
集です。
著者の阿部次郎は哲学者・美学者。『三太郎の日記』(合本、
岩波書店、1918年)は大正期の学生たちに大きな影響を与え
た「自己省察の書」と評されています。
本書中「ダンテの『神曲』とニイチェの『ツァラツストラ』」
ではダンテの「高貴の道徳」「正義」「敬虔」とニーチェのそ
れらについての対比が述べられており、二高時代にニーチェ論
で名高い登張信一郎の指導を受けた福沢などには興味深いもの
であったと想像されます。また「ダンテ雑話」や「神曲入門」
などの章は終戦直後に制作された「ダンテ神曲地獄篇による幻
想」の連作を描くのにおおいに役立ったのではないかと思われ
ます。

なお、福沢の旧蔵書内には阿部の『三太郎の日記』は見当たり
ませんが、この書には以下のような記述があり、なんとなく福
沢の「ダンテ神曲〜」を描く際の心情と通ずるものがあるよう
に思われるのです。

「地獄を見ないものは地獄が描けない。地獄を忘れたものも地
獄が描けない。地獄にゐるものも亦地獄が描けない。地獄を通
つて來て而も現在鮮かに地獄を「觀」てゐるものにして始めて
地獄は描けるのである。」

福沢は『地獄の征服』だけでなく、『三太郎の日記』も愛読し、
清廉な気風で『人格主義』を提唱した阿部の思想にもある程度
共感していたのではないでしょうか。彼の思想の背景を知るう
えでも興味深い書物です。

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[4]
□ 賛助会員のお誘い

一般財団福沢一郎記念美術財団では、その美術振興活動をより
広範囲に、積極的にすすめるために、賛助会員を募っています。
一人でも多くの方に参加していただくことで、若い美術家の顕
彰、美術研究への助成など財団の活動が充実しますので、どう
ぞよろしくお願いいたします。

◯賛助会員の区分と会費
(1) 一般会員 3,000円(年会費)
(2) 維持会員 30,000円(年会費)
(3) 特別会員 300,000円(永久会員)

◯特典
(1) 福沢一郎記念館入館料無料
(2) 福沢一郎記念館ニュース送付
(3) 記念館主催の催し物に優先的にご招待

◯会費のお振込先
●郵便局振替口座 00190-2-695591
 福沢一郎記念館
●りそな銀行 祖師谷支店 普通口座 1000201
 (一財) 福沢一郎記念美術財団

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福沢一郎記念館 メールマガジン No.2
2014年11月13日発行
編集・発行 一般財団法人 福沢一郎記念美術財団

福沢一郎記念館

【ホームページを移転しました】


facebook: https://www.facebook.com/fukuzmuseum

Copyright(c) 2014 FUKUZAWA ICHIRO MEMORIAL FOUNDATION
All Rights Reserved.

※バックナンバーは記念館ホームページでご覧いただけます。
※配信停止を希望される場合はそのままご返送ください。
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【展覧会】「福沢一郎と山下菊二 師弟は時代とどう向き合ったか」 会場風景

開館20周年の展覧会 「福沢一郎と山下菊二 師弟は時代とどう向き合ったか」 の会場風景をご紹介します。

 

DSCF4025

なんといっても、今回は福沢一郎以外の画家の作品が、記念館開設以来初めて!展示されたのです。そしてそれが、福沢とゆかりの深い山下菊二であることは、私たちスタッフにとって大きな喜びです。
まずは、福沢の1《寡婦と誘惑》(1930年、写真左)。「これ、80年以上前の絵ですか!?」と驚かれる方が多いのは、決して修復がしっかりされているからだけではありません。今なお新鮮さを感じる面白い作品だと思います。
その右にある山下の《日本の敵米国の崩壊》は、《寡婦と誘惑》など福沢の滞欧作が飾られたアトリエで制作されたといいます。およそ70年の時を経て、このふたつの作品がふたたび出会ったことになりますね。さまざまな敵国アメリカのイメージ(中には?と思うものもありますが…)が描きこまれています。当時は戦意高揚のための絵として展覧会に出品されたのでしょうが、今見るといろいろなことを考えさせられる、これまた面白い絵です。

 

DSCF4032

階段下のスペースには、山下の初期作品《裸婦》(1939年、写真中央)と福沢の《フクロウ》(1939年頃、写真右)。ほぼ同じ頃に描かれたふたつを並べてみました。ところで、山下はフクロウ好きとして知られていますが、今回は福沢のフクロウが登場しています。これは、ふたりの関係を考えるうえでとても面白い作品なのです。詳しくは、ご来館のうえ、作品横の解説パネルをぜひお読みください!

 

DSCF4040

さて、ここでアトリエ奥の小部屋に入っていきましょう。ここにはふたりの50年代末の作品を展示してあります。まずは福沢の《網にかかった人》(1959年)。いびつな形の人体が、石膏を盛り上げたところに凹んだ線で描かれています。50年代末、福沢はこのように石膏や板、砂などを使って、立体的な画面作りを試みていました。日本で「アンフォルメル旋風」が吹き荒れた後のことです。

 

DSCF4039

同じ頃、山下もまた、ざらざらした絵肌を画面づくりに取り入れたり、不定形のイメージを活かしたりと、「アンフォルメル」に影響を受けたような表現を試みています。《黒いクチバシ》(1959年)にも、そんな山下の試みのあとが見られます。

 

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さて、この小部屋にあるガラスケース内には、福沢一郎のスケッチが展示されていますが、これらはすべて、福沢が山下に贈ったものです。《国引き》(1943年)という作品のデッサンなどは、山下がモデルを勤めていると自分で書き込んでおり、さらに日付まで入っているという、思い入れの強さを感じさせるものです。また、その左にある1976年に山下が福沢に宛てた手紙には、山下のアトリエへのまことに詳細な地図が同封されており、ここにも師への思いの深さが強く感じられます。

 

DSCF4035

小部屋を出て、書斎両脇の壁に移りましょう。ここには福沢《自由か死を》(1965年、写真左)と、山下《葬列(ベトナム)》(1967年、写真右)を展示してあります。60年代は国外ではベトナム戦争やアメリカでの公民権運動があり、国内では学生運動がさかんに行われるなど、政治や社会に対して強い疑念や不信が向けられた時代でもありました。福沢は滞在先のニューヨークで、デモに参加するアフリカ系住民を題材にして、鮮やかな色彩と力強い筆遣いにより多くの作品を制作しました。また山下は、足袋を履いた骨だけの足によって、戦争に追従する日本の政府のすがたを象徴的に描きました。時代をそれぞれの視点で見つめたふたりのまなざしが、これらの作品に如実にあらわれています。

 

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アトリエ北側のコーナー(写真右側)には、ふたりの70年代の作品を展示しました。この時期福沢は「地獄」や「餓鬼」をテーマに多くの作品を制作しており、今回は《蛾を食う餓鬼》(1972年、写真右から2番目)を展示しています。素早い筆致で描かれた餓鬼は、明るくユーモラスな姿をみせています。山下の《鶏群地獄〈水声〉地獄絵〉(1973年、写真右端)は、絵具の滲みから人や鳥の顔が浮かび上がってくるようで、少し不気味で恐ろしげな印象を受けます。
虐げられながらもしぶとく生きる餓鬼の生命力を描いた福沢と、謎めいた社会という暗闇にうごめく人々の愚かしいすがたを描いた山下。ふたりの画風や視点は全く対照的です。しかし不思議なことに、となりどうしに展示しても、ふたりの作品はさほど違和感を感じさせず、かえって互いを引き立てるような効果を持っているように思えるのです。これが、40年以上続いた師弟の絆のなせるわざなのでしょうか。
ぜひこの充実した展示空間を、ひとりでも多くの方々に楽しんでいただきたいです。

 

   *   *   *   *   *

福沢一郎記念館は、展覧会会期中の日、月、水、金の開館となります。
皆様のお越しをお待ちしております。
展覧会詳細は、→こちらから。

メールマガジン第1号(2014年10月17日発行)

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福沢一郎記念館 メールマガジン No.1
FUKUZAWA Ichiro Memorial Museum
– Setagaya,Tokyo
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□■□ 現在当館は閉館中です □■□
■□■ 次の開館は11月です ■□■

[1] 予告! 2014年秋の展覧会
[2] ココで観られる福沢一郎作品
[3] コラム 福沢一郎の書架から(1)

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[1]
□ 予告! 2014年秋の展覧会
開館20周年記念
「福沢一郎と山下菊二 師弟は時代とどう向き合ったか」

http://fukuzmm.wordpress.com/2014/10/02/fukuz_kikuji_2014a/

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骨太な造形力と旺盛な批判精神によって、人間のすがたを描き
続けた福沢一郎。社会や制度の矛盾を凝視し、その奥底にある
ただならぬ世界を描き出した山下菊二。日本の近現代美術を語
るうえで欠かすことのできないふたりの画家のあいだに、とて
も深いつながりがあったことは、案外知られていないのではな
いでしょうか?
福沢は1936(昭和11)年に「福沢一郎絵画研究所」を開設し、
後進の指導にあたりますが、山下はここに19歳で入門します。
以来山下は福沢を師と仰ぎ、事あるごとに福沢を訪ねています。
ふたりの関係はどんなものだったのでしょう。また、山下が福
沢から学んだものは何なのでしょう。今回はそれを、時代と向
き合う姿勢、あるいは時代を見つめる眼に着目し、それぞれ5
点の作品と関連資料によってさぐってみようと思います。
当館の開館20周年を記念しておこなわれるこの企画、福沢一郎
以外の画家の作品が当館で初めて!展示されます。ふたりの作
品によって、刺激的な場が生まれることでしょう。
ご来館をお待ちしております。

会 期:11月2日(日)〜30日(日)の日・月・水・金・曜日
    午前11時〜午後5時
観覧料:300円
協 力:日本画廊

☆トークの会「福沢一郎と山下菊二 いま語る・その実像」☆
日 時:11月16日(日)午後2時〜3時30分
話り手:江川佳秀(徳島県立近代美術館 学芸調査課長)
    伊藤佳之(当館非常勤嘱託)
会 費:1,500円

山下菊二の作品・資料を多数所蔵する徳島県立近代美術館で、
長らく山下の調査・研究に携わってきた江川さんと、福沢一郎
の研究者である当館の伊藤が、それぞれの画業とふたりの関わ
りについて語ります。

※要予約、11月2日から受付開始、先着40名様。
 お申込みは電話のみにて承ります。 03-3415-3405 まで。

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[2]
□ ココで観られる福沢一郎作品
《装へる女》 1929年 @富岡市立美術博物館・福沢一郎記念美術館

遺族のもとで長らく保管されていたこの作品は、おととし同館
に寄贈され、昨年の修復を経て今回の展示となりました。
第16回二科展(1929年)の入選作であり、当時の美術雑誌にも
図版が載っています。福沢一郎の、日本洋画壇デビュー作のひ
とつともいえるこの作品、青みがかった女性の肌といい、左右
対称のポーズといい、背景の処理といい…ちょっと不気味で、
ちょっと不思議な作品です。
画面右下には「Fouk. -27(29?)/福沢」という記載があり、
サインにアルファベットと漢字の両方が使われているのが面白
いですね。
今年11月3日まで展示予定とのこと。お見逃しなく!

富岡市立美術博物館・福沢一郎記念美術館 「現在の展示」に
画像があります。
http://www.city.tomioka.lg.jp/www/contents/1000000001919/index.html

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[3]
□ コラム 福沢一郎の書架から(1)
 福沢一郎著『秩父山塊』アトリエ社 1944(昭和19)年

第1回めが福沢自身の著書で恐縮なのですが、最近話題の本な
ので、ぜひここで紹介させてください。
本書は、タイトルのとおり埼玉県秩父地方の紀行文と挿絵で構
成されています。終戦の前年の刊行ですから、物資統制厳しき
折、このような贅沢な本の刊行は大変だったことでしょう。
元埼玉県立自然の博物館館長の本間岳史さんによれば、福沢は
秩父地方を旅行するにあたって「地域に関する地質論文等をよ
く読み(中略)場所によっては自分なりに地質学的な疑問や課
題を設定してから現地を訪ねている」とのことで、参照した当
時最新の論文なども特定されています※。
地質学者も驚嘆するほどの知識を持ち、秩父の自然を鋭く観察
した福沢の科学的な視線が本書にはよくあらわれていますが、
地域の人々の暮らしに向けたまなざしや、故郷富岡に寄せる思
いも、文章のはしばしに見受けられます。そうした文章を読み
ながら、素早い筆致で描かれた秩父の風景をみていくと、ひと
り思索にふけりながら歩みをすすめる画家のすがたがじんわり
と頭に浮かんでくるようです。
戦時下の厳しさも一抹のほろ苦さとなって本書に味わいを加え
ており、さまざまな楽しみ方ができる一冊といえましょう。
当然のことながら、オリジナルは古本でしか手に入りませんが、
1998年に池内紀さんの「ちいさな図書館」シリーズで復刊され
ているので※※、手軽に、しかもコンパクトなサイズで読むこと
ができます。
美術ファンのみならず、山歩き好きな方や紀行文をよく読む方
にもおすすめの本書。ぜひ一度手にとってみてください。

※本間岳史「画家・福沢一郎と地質学ー画集『秩父山塊』からー」
『地学教育と科学運動』72号 地学団体研究会 2014年6月
※※ 池内紀編・解説『福澤一郎の秩父山塊』〈池内紀のちい
さな図書館〉 五月書房 1998年

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福沢一郎記念館 メールマガジン No.1
2014年10月17日発行
編集・発行 一般財団法人 福沢一郎記念美術財団

福沢一郎記念館

【ホームページを移転しました】


facebook: https://www.facebook.com/fukuzmuseum

Copyright(c) 2003-2014 FUKUZAWA ICHIRO MEMORIAL FOUNDATION
All Rights Reserved.

※配信停止を希望される場合はそのままご返送ください。
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【展覧会】開館20周年記念 「福沢一郎と山下菊二 師弟は時代とどう向き合ったか」 11/2 – 30, 2014


このたび、当館では、秋の展覧会として、開館20周年記念 「福沢一郎と山下菊二 師弟は時代とどう向き合ったか」を開催いたします。

この秋、福沢一郎記念館は、開館20周年を迎えました。今回は、長らく夢想しながらもなかなか実現しなかった、福沢一郎とかかわりの深い画家との二人展に挑戦します。選ばれた画家は、山下菊二(1919-1986)。戦後日本を代表する画家として高く評価されています。
骨太な造形力と旺盛な批判精神によって、人間のすがたを描き続けた福沢一郎。社会や制度の矛盾を凝視し、その奥底にあるただならぬ世界を描き出した山下菊二。日本の近現代美術を語るうえで欠かすことのできないふたりの画家のあいだに、とても深いつながりがあったことは、案外知られていないのではないでしょうか?
福沢は1936年に「福沢一郎絵画研究所」を開設し、後進の指導にあたります。山下はこの研究所に19歳のとき入門しました。以後ふたりは戦争の時代をくぐり抜け、活躍の場を変えながら、大きな意義のある仕事を続けてゆきます。
ふたりの関係はどんなものだったのでしょう。また、山下が福沢から学んだものは何なのでしょう。今回はそれを、時代と向き合う姿勢、あるいは時代を見つめる眼に着目し、それぞれ5点の作品と関連資料によってさぐってみようと思います。
ふたりの作品によって、刺激的な場が生まれることでしょう。この機会に、ぜひお出かけください。

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福沢一郎《寡婦と誘惑》1930年 富岡市立美術博物館・福沢一郎記念美術館蔵


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山下菊二《日本の敵 米国の崩壊》1943年 日本画廊蔵


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福沢一郎《自由か死を》1965年 個人蔵


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山下菊二《葬列》1967年 日本画廊蔵


会 期:2014年11月2日(日)〜30日(日)の日・月・水・金開館  11:00-17:00 
※ 11月3日(月)、23日(日)、24日(月)は祝日ですが開館します。
入館料:300円
協 力:日本画廊

※トークの会開催のお知らせ
「福沢一郎と山下菊二 いま語る・ふたりの実像」
語り手:江川佳秀氏(徳島県立近代美術館 美術調査課長)
    伊藤佳之(当館嘱託)
日時:11月16日(日) 14:00〜15:30
場所:福沢一郎記念館
会費:1,500円
※要予約、11/2より電話のみにて受付開始、先着40名様
定員になりましたので受付を締め切りました。たくさんのお申込ありがとうございました。

<お問い合わせ:お申し込みはこちらまで>
TEL. 03-3415-3405

【イベント情報】講演会「近代写真の成立と福沢一郎の写真」報告

展覧会 「福沢一郎の“写真” 画家のレンズが捉えたもの。」の関連イベントとして、講演会「近代写真の成立と福沢一郎の写真」が、5月14日(水)に開催されました。

講師の金子隆一さんは、東京都写真美術館で長く専門調査員・学芸員を勤められ、近代写真の専門家として活躍されているほか、写真集コレクターとしても有名な方です。今回の講演はまず「近代写真」の成立について、その代表的な作例の画像を見ながら解説し、続いて安井仲治、木村伊兵衛、小石清など1930〜1940年代日本の注目すべき写真家の作品についても述べたうえで、福沢一郎の写真について改めて考えてみる、という趣向でした。
近年のデジタルカメラの普及によって、写真というもの、またカメラという装置についても、随分認識が変わってきているように思います。金子さんのお話はそうした我々が陥りやすい誤解を解きほぐしつつ、写真についての認識を深めてくださるもので、眼から鱗が落ちることしばしば。
1924〜31年のパリ滞在中に撮影された、全くアマチュアであったはずの福沢の写真に、19世紀末から20世紀初めのパリで活躍したプロの写真家アジェのそれと共通するものを感じるとおっしゃる金子さんは、近代写真の先駆として神格化されているアジェについて改めて考えるよい機会になったと、福沢の写真との出会いを喜んでくださいました。また、近代日本を代表する写真家野島康三や平尾銈爾と、福沢一郎(福沢家)との意外な関係についてもお話いただき、一部関係者の注目を集めていました。

講演会の内容は今秋発行の『記念館ニュース』に掲載予定です。

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(2014年6月5日)

【展覧会】「福沢一郎の“写真” 画家のレンズが捉えたもの。」 会場風景

展覧会 「福沢一郎の“写真” 画家のレンズが捉えたもの。」 の会場風景をご紹介します。

 

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今回の展示は、主にアルバムからの複写パネルや、ネガからプリントし直した写真で構成されています。特に1924〜31年のパリ滞在中に福沢が撮影した写真については、ネガが現存せず、プリントも非常に小さいので、画像を楽しんでいただくために、デジタル複写によるパネルを並べてみました。パネル作成にあたっては、多摩美術大学美術館の皆様に多大なるご協力を賜りました。

その他、全紙大の額にて展示しているプリントは、富岡市立美術博物館・福沢一郎記念美術館からお借りしたものです。同館が1996-98年の展示のために福沢家所蔵のネガフィルムからプリントし直したもので、その中から1958年のヨーロッパ〜インド旅行や、1965年のニューヨーク滞在の際に撮影されたものなどを、今回ご紹介することにしました。

下の画像の右端にある写真は、1939年12月頃に福沢が中国の山西省に旅行した際撮影した写真で、貴重なオリジナルプリントです。この写真については阿部芳文(展也)が雑誌『フォトタイムス』(1940年5月号)で「福沢一郎氏のアルバムから」という記事を書いて紹介しており、「卓抜な構成を示すもの」と高く評価しています。解説パネルとあわせてご覧ください。

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福沢が1965年のニューヨーク滞在時に撮影した写真は、非常に魅力的なものが多く、会場の都合で展示点数を4点に絞らなければならなかったのが残念です。この頃の写真はネガが比較的良い状態で残っているので、いずれ何らかのかたちで世に問うことができればいいなと、ひそかに思っております。

 

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今回は写真のほか、福沢一郎愛用のカメラも、出来るだけ多く展示してみました。ライカシリーズのほか、コンタックスIIIやニコンFなどでも撮影を楽しんだようです。

また、1924〜31年のオリジナルプリントも、幾つかアルバムごとケースに入れて展示していますので、こちらもぜひお見逃しなく。

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   *   *   *   *   *

福沢一郎記念館は、展覧会会期中の月、水、金の開館となります。
皆様のお越しをお待ちしております。
展覧会詳細は、→こちらから。

【展覧会】「福沢一郎の“写真” 画家のレンズが捉えたもの。」 4/30 – 6/2, 2014

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このたび、福沢一郎記念館では、春の展覧会として「福沢一郎の“写真” 画家のレンズが捉えたもの。」を開催いたします。

福沢一郎は、1924(大正13)年の初渡欧の頃から、写真撮影を趣味にしていました。その後も戦争中の中国、戦後のブラジル、フランス、インド、そしてアメリカなど海外へ赴くとき、彼はカメラを常に持ち歩き、気になった風景や事物、ひとびとの姿などに向けてシャッターを切りました。彼の写真からは、巧みなフレーミングやクローズアップの効果により、ときに絵画作品にはみられない叙情的な感覚が盛り込まれ、鮮烈な印象を受けるものが多くあります。
今回はそうした福沢一郎の「写真」そのものに迫る展覧会です。1924〜31年の滞欧期に撮影された写真の複製パネルや、90年代にプリントし直した50〜60年代の写真とともに、滞欧当時のアルバム、福沢愛用のカメラ、レンズなどを展示します。彼がどのように写真に取り組んでいたかを知っていただく格好の機会といえましょう。
絵画とはまた違った、ファインダー越しの福沢一郎の視線を感じていただけるこの展覧会、福沢絵画が好きな方にも、写真やカメラが好きな方にも、楽しんでいただけるものと思います。この機会に、ぜひご覧ください。

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ニューヨークにて撮影 1965年

会 期:2014年4月30日(水)〜6月2日(月)11:00-17:00 月・水・金開館
※ 5月5日(月)は祝日ですが開館します。
入館料:300円

※講演会開催のお知らせ
「近代写真の成立と福沢一郎の写真」
講師:金子隆一氏(写真史家)
日時:5月14日(水) 14:00〜15:30
場所:福沢一郎記念館
会費:1,500円
※要予約(電話またはFAXにて/先着40名様)

<お問い合わせ:お申し込みはこちらまで>
TEL. 03-3415-3405 / FAX. 03-3416-1166

【イベント情報】「舞台と美術家 —福沢一郎のバレエ美術を一例として」報告

展覧会 「CURIOUSな実験。福沢一郎<素描>の魅力」展  の関連イベントとして、講演会「舞台と美術家 —福沢一郎のバレエ美術を一例として」が、10月30日(水)に開催されました。

今回講師としてお招きしたのは、神奈川県立近代美術館学芸員の西澤晴美さん。造形芸術や音楽などジャンルをまたいだ芸術活動の研究がご専門で、特に戦後の日本を代表する総合芸術グループ「実験工房」のご研究は、最近の展覧会で注目を集めました。
西澤さんは、修士論文で福沢一郎のバレエの舞台美術を取り上げておられ、それがご縁となって、今回講演をお願いすることになりました。大正から昭和初期にかけての美術家たちの舞台への関わり、戦後のバレエブームとその舞台美術、そして福沢一郎が衣裳や舞台装置を手がけたバレエ「さまよえる肖像」の解説など、新鮮な切り口からの大変興味深いお話に、聴講者の皆さんは熱心に聞き入っていました。

講演会の内容は今春発行の『記念館ニュース』に掲載予定です。

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講師の西澤さんをご紹介

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講演中の西澤さん

(2014年4月8日)

【展覧会】「CURIOUSな実験。福沢一郎<素描>の魅力」展 会場風景

展覧会 「CURIOUSな実験。福沢一郎<素描>の魅力」展 の会場風景をご紹介します。

 

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大きな青森ヒバの壁には、1980年頃に集中して制作された「失楽園」の悪魔のシリーズを展示しました。どれもかなり大きな作品なので、迫力満点です。右奥には《楽園から逃亡する動物たち》という、珍しく動物だけを描いた作品があります。またその右隣には、これまた珍しい水彩の《レダ》を展示してみました。

 

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今回は解説パネルやキャプションをほとんど掲示していませんが、この一角だけは唯一解説パネルをつけております。1951年頃に制作された「バレエのコスチューム」についてです。戦後日本のバレエ界を牽引した服部・島田バレエ団の1952年(昭和27年)新春公演のために福沢が描いたとされるデザイン画が2点展示されているので、それらについて簡単にふれてみました。10月30日(水)の、神奈川県立近代美術館学芸員 西澤晴美さんの講演会では、そこのところをもっと詳しくうかがうことができるはずです。

 

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すでに書きましたとおり、今回は解説パネルは1点のみ、作品キャプションはつけておりません。ただ、作品の配置とデータがわかるパンフレットを会場にて配布しております。それを片手にご覧いただければ幸いです。

福沢一郎記念館は、展覧会会期中の月、水、金の開館となります。11月4日(月)は祝日ですが開館いたします。
皆様のお越しをお待ちしております。
展覧会詳細は、→こちらから。

【展覧会】「CURIOUSな実験。福沢一郎<素描>の魅力」展 10/16 – 12/2, 2013

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《バレエのコスチューム(ミス生存)》1951年頃



このたび、福沢一郎記念館では、秋の展覧会として「CURIOUSな実験。福沢一郎<素描>の魅力」を開催いたします。

約65年に及ぶ絵画制作のなかで、福沢一郎は非常に多岐にわたる主題に取り組み、そのつど多彩な絵画世界を生み出してきました。その原動力は、つねに変わることなく画家の内にあった、人間や社会への旺盛な「好奇心」であるといえましょう。

福沢の「好奇心」とは、鋭い観察力と豊富な智識に裏付けされており、あるときは冷徹に、あるときは諧謔味たっぷりに、人間の存在や社会のありようを暴きだしてゆきます。今回はそうした画家の「好奇心=CURIOUS」をキーワードに、イメージの源泉ともいうべき素描の世界を探ってみたいと思います。
今回は、山村の風景やモデルの男など、いかにもオーソドックスな素描から、バレエのコスチューム原画、勢いのよい曲線を活かした人物画、ユーモアたっぷりの諷刺画、そして本画と見まごうばかりの重厚な悪魔の図など、未発表作品を含む計32点を展示します。画家にとって紙の上はまさにイメージの実験場。福沢一郎はどのような「CURIOUSな実験」を展開していったのでしょう。たかが素描と侮るなかれ。湧き出すイメージの魅力を、きっとお楽しみいただけると思います。

主な出品作:
《バレエのコスチューム(ミス生存)》1951年頃 鉛筆、水彩・紙 (上図)

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《ノー・モア・ウォー》 1951年 鉛筆、水彩・紙

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《失楽園 悪魔 エチュウド》 1980年 アクリル、水彩・紙

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《人物素描》 1953年 油彩 ボールペン・紙

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《オーストラリヤにて》 1967年 コンテ、水彩・紙

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《政治家地獄 叙勲は高く高く 納税は低く低く》 制作年不明 ボールペン・紙


会 期:2013年10月16日(水)〜12月2日(月)11:00-17:00 月・水・金開館
※ 11月4日(月)は祝日ですが開館します。
入館料:300円

※講演会開催のお知らせ
「舞台と美術家 —福沢一郎のバレエ美術を一例として」
講師:西澤晴美氏(神奈川県立近代美術館 学芸員)
日時:10月30日(水) 14:00〜15:30
場所:福沢一郎記念館
会費:1,500円
※要予約(電話またはFAXにて/先着40名様)

<お問い合わせ:お申し込みはこちらまで>
TEL. 03-3415-3405 / FAX. 03-3416-1166