【展覧会】「PROJECT dnF」第9回 川端薫「その日を摘む」

福沢一郎記念美術財団では、1996年から毎年、福沢一郎とゆかりの深い多摩美術大学油画専攻卒業生と女子美術大学大学院洋画・版画専攻修了生の成績優秀者に、「福沢一郎賞」をお贈りしています。
この賞が20回めを迎えた2015年、当館では新たな試みとして、「PROJECT dnF ー「福沢一郎賞」受賞作家展ー」をはじめました。
これは、「福沢一郎賞」の歴代受賞者の方々に、記念館のギャラリーを個展会場としてご提供し、情報発信拠点のひとつとして当館を活用いただくことで、活動を応援するものです。

福沢一郎は昭和初期から前衛絵画の旗手として活躍し、さまざまな表現や手法に挑戦して、新たな絵画の可能性を追求してきました。またつねに諧謔の精神をもって時代、社会、そして人間をみつめ、その鋭い視線は初期から晩年にいたるまで一貫して作品のなかにあらわれています。
こうした「新たな絵画表現の追究」「時代・社会・人間への視線」は、現代の美術においても大きな課題といえます。こうした課題に真摯に取り組む作家たちに受け継がれてゆく福沢一郎の精神を、DNA(遺伝子)になぞらえて、当館の新たな試みを「PROJECT dnF」と名付けました。

今回は、川端薫(女子美術大学大学院洋画専攻修了、2016年受賞)が展覧会をおこないます。不思議な生命体を思わせる川端の作品は、福沢一郎のアトリエで、どのような世界をつくりあげるのでしょうか。


◎展覧会 会期:
2021年10月21日(木)-11月6日(土) の 木・金・土曜日開館
12:00 – 17:00  観覧無料


川端 薫(かわばた・かおる)

1990 福井県生まれ
2016 女子美術大学大学院修士課程洋画研究領域 修了 福沢一郎賞受賞

「生命体とは自己複製する術をもつものである」という定義をもとに、制作を自己複製、作品を生命体と捉えている。

最近の展示歴
〈個展〉
2021 「或る惑星の細胞」(JINEN GALLERY・東京、小伝馬町)
2020 「透明な温室」(JINEN GALLERY)
〈グループ展〉
2021 「The PLANTS」(アートコンプレックスセンター・東京、四谷)
   「5つのいきものがたり」(Gallery FACE TO FACE・東京、西荻窪)


《blooming》 2017年 樟、油絵具 W600×D600×H730mm
《hands》2016年 樟、油絵具 W500×D500×H650mm
《Platycerium teneros ‘Living Trophy’》 2021年 針金、塗料、ベニヤ、スタイロフォーム 等  W750×D550×H750mm

《Osmantus gigas》 2019年 糸、粘土、水彩絵具 他 縦590×横500mm

【展覧会】所蔵作品選 絵からうまれることばたち 6/24 – 7/10


このたび、福沢一郎記念館(世田谷)では、展覧会「所蔵作品選 絵からうまれることばたち」を開催いたします。

福沢一郎は、自らの制作や個々の作品についてたびたびコメントしていますが、作品を受け取る側=鑑賞者の自由な解釈も尊重していました。実際、福沢の絵画は過度な説明的描写がなく、さまざまな解釈が可能なものばかりです。
 では、わたしたちはどこまで、福沢の絵画世界を自由に解釈し、想像をふくらませることができるでしょう? 今回は、制作年も技法も大きさも違う作品をランダムに選び、タイトルや制作年等を明記せずに展示しました。これらの作品の中でどんなことが起こっているでしょう? どんな印象を受けるでしょう? どんな疑問がわいてくるでしょう? そんな作品との対話のなかから、たくさんのことばが紡ぎ出されてくると思います。それこそが、今回の展覧会のテーマです。
 みなさんのことばを共有するための、ちょっとした仕掛けも準備しています。また、自分だけの解釈でじっくり絵画の世界を楽しみたい!という方も大歓迎です。ぜひおでかけください。

この作品のなかで、どんなことが起こっているでしょうか?

会 期:6月24日(木)―7月10日(土)の
    木・金・土曜日 12:00 -17:00(入館は16:30まで)
観覧料:300円


※ 新型コロナウィルス感染拡大防止のため、ご来館時にはマスクをご着用ください。みなさまのご協力をお願いいたします。


【イベント情報】
午後の/夜のおしゃべり鑑賞会オンライン
6月27日(日)14:00〜15:00
7月2日(金)20:00〜21:00
7月3日(土)14:00〜15:00
7月10日(土)20:00〜21:00
詳しくは こちらのページ をごらんください。

【展覧会】「福沢一郎 ギリシャ神話をえがく」会場風景

2020年秋の展覧会 「福沢一郎 ギリシャ神話をえがく」 の会場風景をご紹介します。

今年春、当館は新型コロナウイルス感染症の拡大により、展覧会の開催を自粛しました。この秋もまだまだ予断を許さない状況ではありましたが、多方面からのご要望もあり、しっかり対策をとったうえで、春に開催するはずだったテーマで展示を作り、短期間ながら開館することを決めました。

今回のテーマは、福沢が70年代以降さかんに描いたギリシャ神話の世界です。青空の下奔放にたわむれる牧神とニンフたち、

記念館内東側の大きな壁を飾るのは、主に晩年に描かれた、花と壺の絵です。しかも今回はあえて額に入れず、福沢のアトリエという雰囲気も活かしながら、作品を身近に楽しんでいただこうと考えました。

大きくて生命力の強そうな花は、福沢の描く人間像に似た存在感を放ちます。また壺の絵は、おそらくは古代ギリシャの壺をヒントにしていると思われますが、モティーフはエジプト壁画、イランの建築レリーフ、レオナルド・ダ・ヴィンチの絵画、そして卑弥呼など、じつに多彩です。彼がその都度想像をふくらませ、独自の世界をつくりあげようとしていたことがわかります。

南側の壁(上画像左側)には「旅する福沢一郎」と題して、時空を超えた画家の「旅」をお楽しみいただける作品を並べてみました。ブルターニュの海辺やスペインの闘牛場、そしてハワイなど、実際に訪れた場所の風景や人々の印象を描いたものから、ダンテ『神曲・地獄篇』や『ドン・キホーテ』など物語の世界へも、彼は知的な旅を試み、その成果としてユニークな作品を描いています。
また、西側の壁(上画像右側)には、山梨県立美術館所蔵の大作《失楽園》のための習作を展示しました。作品じたいも、またそのために描かれた習作も画家本人はとても気に入っており、「制作資料展」と称して習作による個展を行ったほどです(1980年、ギャラリージェイコ)。力強く闊達に悪魔の肉体が描かれるかと思えば、ほどよく力の抜けた線で動物たちが表現されたりと、習作といえどもたいへんユニークなものばかりです。

北側のコーナーには、ちょっと不思議な作品をふたつ展示しました(上画像参照)。左側は、制作年のわからない《農耕》というタイトルの作品です。使われている絵具の色や、荒涼とした大地に人間を配する作風から、1946年頃の作品ではないかと推測されます。観覧者の方々からは、これはどこの風景? 何を作っているの? ぜんぜん作物が育たなさそう!など、いろいろな疑問やご意見をいただきました。
右側の作品は、マックス・エルンストのコラージュに影響を受けて制作されたと思われる、1930年作の《静物》です。人の手が大きく描かれている「静物」というのもなかなか謎めいていますし、画面の端に塗り残しが多いのも気になります。これは描きかけ? それともこういう絵にしたかったの? それはなぜ? など、こちらもさまざまな疑問が浮かんできます。こうした謎について、あれこれ思いをめぐらすのも、作品を楽しむひとつの方法ですね。

奥の小部屋には、「旅する福沢一郎」の特設コーナーを作りました。テーマは東北・北海道です。
1950年から51年にかけて、福沢はまず北海道、そして次に東北を旅します。浜辺に打ち上げられたクジラやかまくらなど、見知らぬ土地で得たモティーフは、終戦直後やや混沌とした状況にあった彼の制作に、わずかながら転機をもたらすものであったようです。
《山寺新緑》は、岩壁に萌えたつ色鮮やかな若葉が、画家に与えた活力を感じさせる作品です。

この部屋の展示ケースには、1951年に秋田を旅していた福沢のもとに届いた手紙をふたつ展示しました。これらは、服部・島田バレエ団の創立者のひとり島田廣の筆によるもので、バレエ作品「さまよえる肖像」の舞台美術についての相談・要望と、その舞台装飾原画が到着したお礼が、それぞれ記されています。秋田の旅館で彼が新作バレエ(しかも相当観念的でマニアックな!)の舞台美術についての構想をしていたことがわかる、とても面白い資料です。

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2018年は福沢一郎の生誕120年。秋から来年春にかけて、福沢一郎の展覧会が続きます。それらの中でも、きっといろいろな「再発見」があることと思いますが、当館による福沢一郎の発掘!は、まだまだ続きます。どうぞお楽しみに。
展覧会詳細は、→こちらから。

【展覧会】福沢一郎 ギリシャ神話をえがく 10/22 – 11/14


このたび、福沢一郎記念館(世田谷)では、 秋の展覧会「福沢一郎 ギリシャ神話をえがく」を開催いたします。
1970(昭和45)年、ギリシャ旅行に出掛けた福沢は、以後ギリシャ神話を題材にした作品を何度も描くようになります。特に奔放な生と愛欲の象徴である「牧神とニンフ」は人間の根源……愚かしくもたくましく生きる人の性……を示すものとして好み、晩年までくりかえし描きました。80年代に入ると、神々にまつわる説話をもとにしながらも、その説明に過ぎることなく、あくまで人間のすがたを追い求めた作品を多く制作しました。
今回は、当館所蔵作品・資料の中から、ギリシャ神話にまつわる福沢作品を展示し、その表現の豊かさをご紹介します。

《踊る》1992年 アクリル・キャンバス 72.7×60.6cm
 

◯出品予定作品
・《ピュグマリオン》1991年 アクリル・キャンバス 72.7×60.6cm
・《海神ポセイドン》1986年 リトグラフ・紙 38.0×50.0cm
・《牧神の午後》制作年不明 コンテ、墨・紙 48.7×36.7cm
・《『ユリシイズ』より へどろばらんこ》1975年 エッチング、ドライポイント・紙 29.5×35.5cm
その他(いずれも当館蔵)

会 期:10月22日(木)―11月14日(土)の木・金・土曜日
12:00 -17:00
観覧料 300円
※ 新型コロナウィルス感染拡大防止のため、ご来館時にはマスクをご着用ください。みなさまのご協力をお願いいたします。 

 

福沢一郎記念館 研究紀要

福沢一郎記念館では、2016年より、研究紀要を発行することになりました。
この紀要は、福沢一郎をはじめとしてその周辺の作家、および昭和の芸術運動に関する調査報告や論文等を掲載し、日本近現代美術研究の一助とすることを目的としています。

※ 紀要は当面PDFのみにて発行いたします。データの配布をご希望の方は、お問い合わせフォームからお申し込みください。
お名前と、紀要の配布希望理由をお書き添えください。

※ 紀要のPDFデータは、個人の調査。研究のための使用のみ許可します。それ以外の用途での使用、及び許諾なく改変、複製、配布することを禁止します。


第1号 全28頁
・那覇市民ギャラリーの「福沢一郎展」によせて
作品収蔵の経緯と同時代の沖縄    久田五月
・記録:現代アート研究会vol.9
「沖縄少年会館に贈られた福沢一郎作品について」
2015 年3 月4 日 沖縄県立芸術大学
語り手:土屋誠一、久田五月
・〔調査報告〕福沢一郎 戦時下の記録 1941-1945
伊藤佳之



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キャンペーン「福沢一郎・再発見」の詳細は、→こちらから。

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メールマガジン第18号(2016年8月19日発行)

=======================================2016/08/19
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福沢一郎記念館 メールマガジン No.18
FUKUZAWA Ichiro Memorial Museum
― Setagaya,Tokyo
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□■□   現在当館は閉館中です   □■□
■□■ 次の開館は9月末の予定です ■□■

[1] 新企画「わたしの福沢一郎・再発見」始動!
[2] ココで観られる福沢一郎作品
[3] 賛助会員のお誘い

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[1]
□ 新企画「わたしの福沢一郎・再発見」始動!
 第1回は《基督》です
 
当館ホームページ上でささやかに開催中のキャンペーン「福沢
一郎・再発見」。画家福沢一郎の魅力をさまざまな角度から発
信するこの試み、いよいよ新企画がはじまりました。
題して「わたしの福沢一郎・再発見」。美術家・評論家のほか、
いろいろな人々に、お気に入りの福沢一郎作品について語って
いただこうという企画です。
第1回は、当館館長の福沢一也(福沢一郎長男)が、ちょっと
珍しい作品《基督》(宮城県美術館蔵)について語ります。

「わたしの福沢一郎・再発見」第1回は、こちらから↓
https://fukuzmm.wordpress.com/2016/08/19/myfukuz_001_kafukuz/

これからも、いろいろな方の「福沢一郎・再発見」をご紹介し
ていく予定ですので、どうぞお楽しみに!

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[2]
□ ココで観られる福沢一郎作品
《卑弥呼宮室に入る》 1980年 
 53.0×45.2cm 世田谷美術館蔵
 @「神話の森 美と神々の世界 ミュージアムコレクションⅡ」

赤に支配された巨大な画面の中、輿に乗った卑弥呼が、ゆらり
ゆらりとこちらに向かってきます。そのまわりはたくさんの人
物によって埋め尽くされ、鮮やかすぎるほどの赤と、右奥の暗
い背景ともあいまって、ただならぬ気配が充ち満ちているよう
です。
福沢一郎は1980年代に入ると、日本の古代神話や、考古学の
学説などを画題に取り上げ、多くの作品を描きます。
特に中国の歴史書『魏志倭人伝』にあらわれる邪馬台国には強
い興味をもち、さまざまな学説の解説書を読みあさります。さ
らには、九州に旅行したときに偶然見かけた女性のすがたに、
邪馬台国の女王卑弥呼の面影をみるなど、すっかりその物語に
魅せられていたようです。
1981(昭和56)年の個展「福沢一郎魏志倭人伝展」はまさに
画家の思い描いた邪馬台国の幻想があふれ出たものとなりまし
た。本作は出品作のなかでもひときわ大きく、強烈な赤と力強
い黒の描線、そして所々に配される褐色や緑が響き合い、神の
声を聞くシャーマンとして権勢を振るった卑弥呼をとりまく妖
しい空気と、うごめく人々の生命感をあらわしています。原初
的な人間の力強さを描くことは福沢の一貫したテーマであり、
『魏志倭人伝』はまさにうってつけの画題であったといえるで
しょう。
古代日本と邪馬台国、そして卑弥呼は、その後福沢にとって重
要なテーマとなり、繰り返し描かれました。本作はその出発点
として重要であるだけでなく、古代日本の幻想に寄せる福沢の
思いが強烈に塗り込められた、記念碑的作品です。

この作品は、世田谷美術館で開催中のコレクション展示「神話
の森 美と神々の世界 ミュージアム コレクションⅡ」にて
展示中です。難波田龍起、山口薫、利根山光人らのすぐれた作
品とともに、ぜひお楽しみください。
同展は10月23日(日)まで開催中です。詳しくは同館のホーム
ページをごらんください。↓
http://www.setagayaartmuseum.or.jp/exhibition/collection.html

また、企画展「アルバレス・ブラボ写真展 ―メキシコ、静かな
る光と時」も、あわせてぜひどうぞ。↓
http://www.setagayaartmuseum.or.jp/exhibition/exhibition.html

作品画像は、当館ホームページの「作品集」から。↓
https://fukuzmm.wordpress.com/works/

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[3]
□ 賛助会員のお誘い

一般財団法人福沢一郎記念美術財団では、その美術振興活動を
より広範囲に、積極的にすすめるために、賛助会員を募ってい
ます。
一人でも多くの方に参加していただくことで、若い美術家の顕
彰、美術研究への助成など財団の活動が充実しますので、どう
ぞよろしくお願いいたします。

◯賛助会員の区分と会費
(1) 一般会員 3,000円(年会費)
(2) 維持会員 30,000円(年会費)
(3) 特別会員 300,000円(永久会員)

◯特典
(1) 福沢一郎記念館入館料無料
(2) 福沢一郎記念館ニュース送付
(3) 記念館主催の催し物に優先的にご招待

◯会費のお振込先
●郵便局振替口座 00190-2-695591
 福沢一郎記念館
●りそな銀行 祖師谷支店 普通口座 1000201
 (一財) 福沢一郎記念美術財団

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福沢一郎記念館 メールマガジン No.18
2016年8月19日発行
編集・発行 一般財団法人 福沢一郎記念美術財団

福沢一郎記念館

【ホームページを移転しました】


facebook: https://www.facebook.com/fukuzmuseum

Copyright(c) 2014-2016 FUKUZAWA ICHIRO MEMORIAL FOUNDATION
All Rights Reserved.

※バックナンバーは記念館ホームページでご覧いただけます。
※配信停止を希望される場合はそのままご返送ください。
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【作品】教授たち会議で他のことを考えている / Professors – thinking about other things at a meeting

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題名/title: 《教授たち会議で他のことを考えている》 / Professors – thinking about other things at a meeting
制作年
/date:
1931年
技法・材質
/materials:
油彩・カンヴァス/oil on canvas
寸法/size: 80.5×1100.0cm
所蔵
/collection
一般財団法人福沢一郎記念美術財団
Fukuzawa Ichiro Memorial Foundation
  テーブルを囲んで会議中の「教授たち」。座る椅子の背面には、女性の裸、逢い引きのワンシーンと思しき画像が描かれる。既成権力に安住する者たちへの諷刺を効かせた作品。