【展覧会】「旅する福沢一郎 vol.1 写真と素描でたどる『アマゾンからメキシコへ』」会場風景

2022年春の展覧会 「旅する福沢一郎 vol.1 写真と素描でたどる『アマゾンからメキシコへ』」 の会場風景をご紹介します。

福沢一郎は若い頃から国内外の旅を楽しみ、そこで得たテーマやモティーフを制作に取り入れていました。今回の展覧会は、彼の旅と制作の関わりをさまざまな切り口でご紹介する「旅する福沢一郎」シリーズの第1回で、主に写真と素描から、1953-54年の中南米旅行に迫る試みです。展示された写真パネルの多くは、遺族のもとで大切に保管されていた紙焼写真がもとになっており、令和2年度に公益財団法人ポーラ美術振興財団から助成を受けた「長谷川三郎と福沢一郎の写真資料に関する調査研究」の際にデジタル化した画像データを使用して、見やすい大きさにプリントしました。

展覧会のはじまり、アトリエ東側の壁には、福沢の1952年から54年、まる2年にわたるたびの行程を示すパネルを掲示しました。彼はまず1952年5月、パリで行われる国際文化祭の日本代表のひとりとしてフランスに渡り、そのまま翌1953年1月まで滞在したあと、ブラジルへと向かいます。

福沢一郎の旅 1952-54年 パネル画像

1953年2月のブラジル(サンパウロ)着から翌1954年5月のメキシコ出発まで、およそ1年3か月にわたって、彼は中南米を旅しました。この展覧会では、その旅程から5つのトピックごとにコーナーを分け、写真やスケッチなどを展示しました。


《コパカバーナ》1953年

はじめのコーナー「1.ブラジル」では、福沢が現地で制作し、ご縁のあったブラジル在住の人に贈ったとされる作品2点が展示されています。上の作品もそのひとつで、所蔵者から福沢の故郷富岡市に寄贈されました。現存するこの時期の作例は少なく、たいへん貴重な作品です。

ブラジル滞在のはじめから、福沢は写真撮影を楽しんでいたようで、サンパウロやリオデジャネイロなどの風景を撮影した写真が多数残っています。戦後急速に開発が進むブラジルの大都会を、彼は大胆に、そしてときにユーモアも交えてカメラに収めています。


アトリエ横の小部屋は、「2.アマゾン」です。ここには1953年11月から翌1954年1月までのアマゾン川流域の旅の間に撮影された写真と、訪れた街の風景のスケッチなどを展示しました。

アマゾン川流域の自然と人々の生活、そしてそれらが織りなす風景は、福沢の興味をおおいにかきたてたようで、著書『アマゾンからメキシコへ』にそのことをよく示す記述がみられます。ただ、そのわりにはこの地を主題とした作品や写真(プリント)が少ないのです。今後、まだ整理が終わっていないスライドフィルムの調査とデジタル化がおこなわれれば、彼にとってのアマゾンがどのようなものであったのかを、垣間見ることができるでしょう。


小部屋から出て時計回りにアトリエを巡ると、舞台はメキシコの旅へと移ってゆきます。1954年2月にメキシコシティに到着した福沢は、同年5月はじめまでこの首都を拠点とし、メキシコ各地の街や遺跡へと取材にでかけます。「3.メキシコの遺跡と美術」では、彼が訪れた遺跡や、同時代の美術家による作品などを撮影した写真をご紹介しました。

今回は、あえてメキシコの遺跡・旧跡と、ディエゴ・リヴェラやホセ・オロスコ・クレメンテらによる壁画やモザイクを撮影した写真を隣どうしに配置してみました。日本や西欧とはひとあじ違う、建物と一体となった造形のありように、福沢が強い興味を示していたことがよくわかります。この地での体験は、彼にとって、建築と美術の結びつきについて深く考えをめぐらせる機会となったようです。

また、福沢がメキシコで撮影した写真の多くに、働く女性や子供たちのすがたが写っているのも興味深いことです。「4.メキシコ 市井の人々」では、そんな写真とともに、水彩やドローイングなどを展示しました。


《メキシコの母子(Ⅱ)》1954年
「タスコの女」1954年

この時期の福沢作品には「母子」と題したものがいくつかみられますが、実は、他の時期にこのテーマを扱った作例はほとんどないのです。この地で目にした「母子」のすがたが彼にとっていかに印象深いものであったかがしのばれます。


展覧会の最後には、ちいさなコーナーをふたつ設けました。「5.福沢一郎サボテン・コレクション」では、福沢のメキシコ滞在時の写真の中から、サボテンを写したものを集めてみました。うち1点には福沢自身も写っています。乾いた大地ににょきにょきと生えて独特の景観をかたちづくるサボテン。人々の生活ともたいへん近しいこの奇妙な植物に、彼はことのほか強い興味をもったようです。
次の「6.中南米の旅、その後」では、中南米の旅が画家福沢一郎にもたらしたもの、そして調査研究の道なかばで写真資料からみえてきたことなどをご紹介しました。彼の著書『アマゾンからメキシコへ』は写真を豊富に収録した興味深い旅行記ですが、じつは彼自身の制作についてはほとんど書かれておらず、彼がいったい何を見て、何に心を動かされたか、そしてそれらがその後の絵画制作にどう影響したかということは、さらに多くの資料から検討される必要があります。今回デジタル化された写真の画像をくわしく分析することで、わたしたちは彼の中南米旅行の意味をもう少し深く掘り下げることができるかもしれません。


福沢一郎旧蔵のマスク メキシコで購入か

今後も、機会を捉えて福沢一郎の「旅」を追う企画をおこないたいと考えています。どうぞお楽しみに。
今回の展覧会のパンフレットは、こちらから ごらんいただけます。

所蔵作品選 絵からうまれることばたち 作品その9

※ふせんに書いてくださったことばをそのまま掲載しています。
※文字の色は、ことばが書かれたふせんの色です。

・デッサンうまいね
・ストレッチ中? メロスの休憩
・スケッチってスゴイ
・はじめての先生のタッチ!
・ストレッチ中 今日もケガをしないで走りきれますように・ねてるひと
・よこたわるせいねん
・しばし止まって自分の体をいたわる 何を考えているのだろう
・見ていてやすらぎを感じます 体の線がなめらかで美しいです
・うたたねしている男 気持ちよく寝ている 休日
・道ばたでたおれている人 でも、辛そうではなくて幸せそうにねている
足がつった!
・スケッチが素晴らしい 右手が大きいね
・画家のスケッチの美しさ 鉛筆の使い方にいたく感動! 顔は苦悩 戦後の生きてきた時代を感じます
・疲れている 足をマッサージしている? 寝ている
・彼女にフラレた?? ねんざした? 影を見習いたい
・おつかれさま!
・イテテー
・ジショウ 自バク コツコ
・若い人だから出来るポーズです。年寄でもシナモンを摂取すると体が若返り、このポースが可能です。
・苦しんでいる人
・ストレッチ
・足と手が大きい とてもがんじょうそう
・ダンスの途中のポーズ 舞台で踊っているみたい


【ちょっとたねあかし】

《横たわる青年》
1951年 鉛筆、水彩・紙 24.2✕35.8cm

 この絵は《ノー・モア・ウォー》と同じ年にえがかれていて、画材も同じものを使っているようです。でも、絵の印象はずいぶん違うような気がします。
 《ノー・モア・ウォー》は、人物がデフォルメされていて、ちょっとマンガっぽいですよね。でもこの絵は、人の体がかなりリアルにえがかれています。横になって目をつむって、休んでいるのかな…と思いきや、けっこう不思議なポーズをとっています。右足を折りたたんで持ち上げ、そのひざの下から右腕を通して右足の甲を押さえる…。こんなポーズをして休むひとは、ちょっとめずらしいように思うのですが…みなさんはいかがでしょう。どんなようすを想像しましたか?
 もしかすると、絵画教室などでおこなわれていた、人体デッサンの授業に混じってえがいたのかもしれません。人体デッサンのモデルさんは、ふつうじゃないポーズをとらされることがあるので…。福沢はこの頃いくつかの絵画教室に呼ばれて絵の指導をしていたらしいことが、人々のお話や写真などからわかっています。若い男の人の不思議なポーズ…みなさんならどんなふうにえがくでしょう?


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所蔵作品選 絵からうまれることばたち 作品その8

※ふせんに書いてくださったことばをそのまま掲載しています。
※文字の色は、ことばが書かれたふせんの色です。

・広島の青い空をあおぎ、平和を祈念する
・飛行機? 鳥?
・背を向けた大人、髪が抜けてしまっている.原爆の怖さをソフトに画いているのか. 遠いドームxx 距離感?!
・東京は焼けちゃった。
・のーもあうーぉ・可愛いい 昔空をみたナ…
・まん中の建物、原爆ドームにみえた。
・貧しかった時代の素朴な人間の姿が描かれた作品.近い時代に育った私は共感さえ覚える.
・あの鳥どこに行くの?
・空爆後、生き残った人たちと青空を見上げてる
・おじいちゃんと孫 ひろがる空 自由な未来!
・日本じゃないみたい
・戦時に初めて見た米軍の爆撃機 あるいは空に憧れる祖父と孫
・飛行機 空爆?を見つめている 少し悲しいイメージ
・戦時前? 広島? 建物が立派でも人の服が大昔感.
・今迄見たことのない福沢さんの絵発見 すごくいいー!
・老人と孫かな? ほのぼのするわ
・郊外にて憩い
・原爆の様子を思いうかんだ
・各ドローイングの数々、毎回刺激を受けます
・ヒロシマにて.爆撃機じゃなくて鳥でよかった。
・全てを失った後の それでも生きている乾いた現実 万感の福沢の思いに涙が出ました
・いつか乗りたいなあ 飛行機
・「あっ ひこうきだ!!」
・広島に飛ぶ飛行機を見上げている
・広島?


【ちょっとたねあかし】

《ノー・モア・ウォー》
1951年 鉛筆、水彩・紙 30.6✕23.0cm

 この絵も緑色の絵具と鉛筆の線だけでえがかれています。空に雲が浮かび、鳥が飛んでいます。それを見上げる少女と、年配の男性らしき人物。遠くにはいくつか建物もみえますね。ドーム型の屋根をもつ真ん中の建物が目を引きます。
 タイトルは「ノー・モア・ウォー(NO MORE WAR)」つまり「戦争はもういらない」という意味ですね。この絵がえがかれたのは1951(昭和26)年。大きな戦争が終わってから6年後のことです。このころ日本はだんだん立ち直りはじめていましたが、おとなりの朝鮮半島ではとてもはげしい戦争があって、そのほかの国々のあいだにも争いの火種がくすぶっていました。
 福沢一郎は、自分の絵に直接社会的なメッセージをえがくことをあまり良いことと思っていませんでした。絵はいろいろな読みかたを受け入れるものでなければいけないので、強いメッセージをこめると、絵のみかたが限定されてしまうからです。そんな画家が、なかなかに直接的なメッセージをこめたと思われるこの絵を、みなさんはどう読んだでしょうか。もちろん、いろいろな読みかたがあっていいんです!


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所蔵作品選 絵からうまれることばたち 作品その7

※ふせんに書いてくださったことばをそのまま掲載しています。
※文字の色は、ことばが書かれたふせんの色です。

・山火事!
・このグリーンの色が良いですね。
・牛といのしし(?)の目が色っぽい♡
・今、やたら熊鹿猿達が人間社会に出てくる.この子達も逃亡して来たかな?
・干支レース やっぱりネコは出遅れて姿も見えない・動物の姿が良いね.命を感じる
・動物たちはそれぞれ見たことを報告したくてしょうがないが にげなくてはいけないし、
・犬? うさぎ
・ジブン 山の生命
・うさぎ、きつね、イノシシ、シカ なぜ緑なのか、自然のイメージ
・干支の競争 事前の動物が人から逃げてる?
・らくえんからとうぼうするどうぶつたち
・ジブリ感漂う山の生物と生命力の表現
・日本昔話シ
・いのしし しか おおかみ うさぎ いのししが怒って追いかけていて、逃げている。
・人間からにげる動物たち(食べ物をぬすんで)
・うさぎ「へへ〜ん みんな僕には追いつけないもんね」
・動物たちが弱っている こちらを見つめている
・追われて逃げて… 狩られるの?
・動物たちの動きがいいですね シンプルでいい
・緑色が絵をさらに美しくやさしいイメージへと高めているように感じます
・動物たちの競争 ウサギが1位かな?
・昔にかかれたような絵のかんじがした 鹿とうさぎはイノシシときつねにおいかけられていて弱肉強食みたい


【ちょっとたねあかし】

《楽園から逃亡する動物達》
1980年 鉛筆、水彩・紙 36.9✕52.8cm

 うすく溶いた緑色の絵具と鉛筆の線だけで、動物のすがたがえがかれています。さらさらっと手早く引かれた線のせいか、かたちは少しやわらかめです。ウサギ、キツネ(オオカミ?それともイヌ?)、イノシシ、そしてシカでしょうか。体の向きから考えて、どうやらみんな、画面左側から右側へ向かって駆け出しているような動きです。みなさんは、この絵のなかでどんなことが起こっていると思いましたか? 動物たちはいったい何をしているのでしょう?
 この絵は、山梨県立美術館のロビーに飾られている《失楽園》という作品の構想を練るために描かれたスケッチだといわれています。福沢は、旧約聖書の「創世記」をもとに書かれたジョン・ミルトン作『失楽園』という本を題材にして、この絵をえがきました。この絵の中では、4匹の動物は楽園から去るアダムとイブのうしろにえがかれていて、ふたりといっしょに楽園から急いで逃げ出しているようにみえます。
 大作《失楽園》とこのスケッチでは、動物たちの印象はずいぶんちがいます。ですから、みなさんの思いえがく物語も、ずいぶん違ったものになるかもしれませんね。


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所蔵作品選 絵からうまれることばたち 作品その6

※ふせんに書いてくださったことばをそのまま掲載しています。
※文字の色は、ことばが書かれたふせんの色です。

・月にいる神様「人間もここまで来るようになるとはね。」
・奥の所がブラックホールみたい 宇宙人が何かをみつけた?
・何が落ちてるのだろう.ちょっと不気味だけど服の色がすき。
・おぼれている人に対してただ見つめているように見える 風景は月の上のように見える
・迫力があって絵に引き込まれそうです.
・月面を歩く 人ではない生物のようにみえる 目線の先は顔があって 人間を見下ろす、あわれな視線?
・緑の服の人はなぜにやけているのか
・天の川逆バージョン
・2人は何を見つめている? 人の首? 暗いイメージ
・野生の目玉焼きみっけ!
・見守っている男性の衣の色が好きです。私も子供達の様に見守って欲しい
・氷の湖 氷を溶かせるか そのことで罪人たちを救えないか思案中…?!・波をかき分けて来る子羊に救ひを与えるメシアのやう‥ F
・キリスト? 水の中に人
・おぼれる人々を助けずにただ見つめるおじさん2人 かおが笑っててちょっと怖い
・宇宙の卵 割れてしょんぼり
・月世界のつどい
・New イザナギとイザナミ 新しい日本創造
・助けを求める人と見ている人。女神様みたい。
・何かみつけた
・さるのおんせんをながめている人々
・表面のざらざらが印象的です さわってみたくなります
・水泳大会 海水浴 子どもたちを見守る大人たち
・首切り役人? 白っぽいのは骨に見える 教祖感
・人生を終えあの世へたどり着こう! 向こうからは、来たければ来れば アマクないよ!
・こおりのみずうみをわたるだんて
・美しき色彩の対比.一郎先生の理想が現れた作品 ずっと見ていると私の心も澄んでくるようです


【ちょっとたねあかし】

《氷の湖を渡るダンテ》
1989年 アクリリック・キャンバス 24.5✕33.5cm

 ごてごて、ぼこぼこした画面に、人のかたちがいくつかえがかれています。画面右側には立っている人がふたり。画面真ん中から左にかけて、人の頭のようなかたちも3つあります。えっ、人の頭だと思わなかった!という方もいらっしゃるかもしれませんね。
 この3つのかたちが人の頭らしいと思われる理由は、作品のタイトルにあります。「ダンテ」とは、今から700年ほど前に活躍したイタリアの詩人の名前で、この人が書いた『神曲』は、世界中で読まれるとても有名な物語です。この中の「地獄篇」には、ダンテが地獄の世界を旅する途中「氷の湖」を渡る場面が出てくるのです。そこはとても重い罪を背負った人たちが氷づけになって苦しんでいるところなのですが…。さて、みなさんは最初にこの絵を見たとき、どんな物語を想像したでしょう? ダンテの物語と似ていますか? それともぜんぜん違いますか?


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所蔵作品選 絵からうまれることばたち 作品その5

※ふせんに書いてくださったことばをそのまま掲載しています。
※文字の色は、ことばが書かれたふせんの色です。

・花びんと花の色がいい 好きな絵です
・テント虫がかわいい テント虫がいることで花の大きさが分かる
・花にも見えるし、虫にも見える。いかにも一郎先生らしい豊かな色彩ですね!!
・庭で摘みたてのような花 パンジー
・ものすごい鮮やかさに圧倒されちゃう 僕はテントウムシ
・福沢一郎の花の絵が好きです てんとう虫が何とも愛らしい
・てんとう虫がいとおしいです
・穏やかな日常に天とう虫ががえられた 明るいところ
・平和な世の中に大らかに、美しく生きる。
・てんとう虫は肉食の昆虫です。きれいな花にたかる「あぶら虫」に吸い寄せされているのかな?
・こんな風に絵を描きたい!対象に向ける目はどんななのでしょう!
何の花?
・大好きです このバラの絵
・ナイフを使ってバラのマーブルな所や花びらの重なり ス.テ.キ.
・あ!! 落ちちゃった
・てんとう虫 ブーケ
・良い香り
・君はどこから来たのかね
・無題 花瓶が軽々と浮かんでいるな
・右下にいるてんとう虫がかわいい 花を目指している?
・いいね!
・てんとう虫にとっておいしそうな花
・バラがつぼとマッチしていてバランスがよく美しい
・花束全開
・いも
・この花の絵 部屋に飾ってみたいです。いやな事も忘れ明るい気持ちになれます。
・圧倒的な花の大きさ 極小のテント虫 いのちの重さは変わりません.
・てんとう虫がかわいい!!
・バラはやっぱりきれい いつみてもいい
・絵の具を直ぬり 他のとはちがう雰囲気?
・てんとう虫み〜つけた.
・むだい
・てんとう虫さん お花Love♡


【ちょっとたねあかし】

《無題》
制作年不明 アクリリック・キャンバス 32.0✕41.1cm

 なんの変哲もない花瓶と、そこに生けられた大ぶりの花がえがかれた絵…と思っていたら、画面の右下、ちいさなてんとう虫がえがかれている! みなさんは気づきましたか? このてんとう虫はどこから来たんだろう? ここで何をしているんだろう? そして、これからどうするつもりなんだろう…? たった一匹のてんとう虫が、いろいろな想像をふくらませてくれる気がします。みなさんはどんな物語を思い浮かべるでしょう?
 福沢は、花瓶に生けた花の絵をたくさんえがいていて、ごってりと絵具を分厚く重ねたもの、花瓶に人のすがたが描いてあるものなど、さまざまなバリエーションがありますが、こんなふうにてんとう虫をえがき入れたものは、とてもめずらしいのです。画家はどんな気持ちで、この絵にてんとう虫を登場させたのでしょう? 画家の気分になって想像をふくらませるのも、ちょっと楽しいものです。


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所蔵作品選 絵からうまれることばたち 作品その4

※ふせんに書いてくださったことばをそのまま掲載しています。
※文字の色は、ことばが書かれたふせんの色です。

・すこしだけ休ませて!
・大きな現物の絵を見てみたい 一郎先生の裸体の肉づきはとてもたくましくて頼りがいがありそう。
・たくましいー
・奥の重なるような人たちは争っている 手前の女性は争いにも疲れた?むずかしい時代でした。
・巨人の戦い 苦しい・辛そう ローマ? ラスタカラー
・じょせいぐんぞう
・一番下の人が苦しそうだ
・しばらくやすんで70年後 戦後の復興です
・歴史・世の中はいやという程の(アラソイ)のなかで進んで行くのか
・争いにそれを避ける人,成り立ちのような.
・第2次世界大戦!! この悲劇の教訓はバク大な量です。地球温暖化も大悲劇を産み出しつつあります。グレた・ツインベリさんに続こう!!
・つかれたあ〜
・私がモデル?
・とらわれし シユウネン コツコ
・疲れた母と けんかする子供 夕暮れ
・人?

・ああつかれた
・だるい(手前)はげしい(後方)感じ〜〜!!
・ひるね
・原始人 夕焼け
・大衆浴場 後ろで子どもたちがはしゃいでいる。
・遊ぶ子供たちと休む母 平穏な日々
・難民たち
・けんかしているように見える
・ケンカorあそんで疲れたのかな
・すもうの練習 疲れました でもすもうは楽しい
・不毛な争い
・疲労
・孫悟空昇天
・知的肉弾戦
・うばすて山かな?


【ちょっとたねあかし】

《女性群像》
1949年 油彩・キャンバス 65.2✕91.0cm

 はだかの人たちが、ごろごろと石が転がる風景のなかにえがかれています。空は赤と緑と黄色と…いろんな色でぬられていますね。朝なのか昼なのか夕方なのか…ちょっとはっきりしない不思議な空です。
 画面の右奥では、はだかの人たちが組み合わされ、重なるようにえがかれています。いったい何をしているのでしょう。画面左手前の女の人…乳房がはっきりえがかれているので、たぶんそうだと思います…は、たくましい体つきですが、顔を下に向けて、少しつかれた様子です。休んでいるだけなのか、それとも落ち込んでいるのか。いろいろな読み方ができそうですね。
 この絵が描かれたのは1949年、大きな戦争が終わってから4年後のことです。戦争が終わってから5年ほどのあいだ、福沢は、はだかの人間たちが荒れ果てた大地にうごめくようすをえがいた作品をたくさん発表していて、どうやらこの世を「地獄」に見立ててえがかれたものが多いようです。この作品もそんなシリーズの中のひとつだと考えられています。


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所蔵作品選 絵からうまれることばたち 作品その3

※ふせんに書いてくださったことばをそのまま掲載しています。
※文字の色は、ことばが書かれたふせんの色です。

・金の卵?
・鏡にうつる自分を見ている人
・ぐぬぐぬと た丶かふ天使 ガンバレよ コツコ
・ぺるせうすめどうせ
・輝く翼に刃 鏡?
・ろボロン? いや、モスラかな?
・コロナウイルス封じ込め完了 明るい未来へ!
・動きがあってカッコイイ.エスキースの線を残すのも一つなんだな。
・切りとられた髪のへびはまだ動いています

・人体化した蚊? 何かの戦い 古代ローマ 暑い
・これは良いですネ〜! 色の使い方が好きです
・ギリシャ神話? たねあかし本読んで納得した次第です。うーんなる程!
メドウサの髪 ヘビを退治することでメドウサ本人の生命を救う まっとうな姿にもどして
・ビックリ! 中にヘビが
・福沢先生の絵は、人物像が丸く、太く、力強いので生命がはじけるようです。花鳥風月、月はあまりないかもしれませんが、原色を多く使うことで同じモチーフのものがないのが理知的です。

・立派な顔をしたお父さんが子供を見守っているみたいです 蛇もゆったりと太目ですね。全体の色の感じが好きです。
・円盤投げ?
・女神と鳥人間。ギリシャ神話が混ざっているのかな?
・メデューサの顔が見たかった 盾に映しながら とはどうやって近づくのかと思っていたが、そうか
・守護者みたいに何かから守っているよう
・人間の前面には常に猿顔(ずるさ)があり、笑いながらも検をしたため、相手(ヘビ)に対してそなえている。
・神話の世界?

・中年女性
・天使が卵を運んできた。
・鳥なのか人間なのか 色彩が好き
・この人物からパワーがっ!!
・火打ち石を初めて見つけた原始人
・動物→トラ?サル?人間のようにもみえる ヘビをつかまえる仕掛けをつくって見事ゲットしたみたいなかんじ
・シックな色合も素敵です。
・パンをたべようとしているかい物。パンのにおいをかいでいるかい物
・猿とへびだと思われる→ナイフをもっているように見える
・メデューサと戦う 迫力
・ラグビー部
・闘う剣士 みなぎるとうし
・地上に降り立ち生き物観察する天使?
・ペルセウスが退治したメドゥーサは彼の盾の中でその実の姿ヘビを表した
・不死鳥が卵を孵化するのを見守っているが、どんな子が産まれてくるのかはまだ解っていない。
・自由でいいなあ
・奥深い色使いで表現力がすごいです。
・たまご?顔の表現がめちゃくちゃよい!


【ちょっとたねあかし】

《ペルセウス、メドゥサを退治する》
1985年 アクリリック・キャンバス 72.7✕60.6cm

 このタイトルをみて、「えっ、これが?」と思ったかたはけっこう多いのではないかと思います。画面の中に、人物らしきかたちが大きくえがかれているのはなんとなくわかりますが、それがいったいどんなことをしているのか? いったいどんな場面なのか? 細かく説明するようなえがきかたではないので、ぱっとイメージするのはむずかしいですね。
 では、タイトルにそって絵を読んでみましょう。ペルセウスは、ギリシャ神話に出てくるヒーローで、あるときメドゥーサ(メドゥサ)を退治するように命じられます。メドゥーサは髪の毛のかわりに生きている蛇がはえている怪物で、それににらまれると石になってしまう怖ろしい能力を持っていました。ペルセウスは青銅の盾にメドゥーサのすがたを映しながら近づいて、みごとその首を切り取ることに成功します。この絵はきっと、その退治の場面をえがいたものと考えられます。
 とすると、この大きくえがかれた人物はペルセウスで、右手ににぎられているのは剣でしょうか。そして、ちょっとつぶれた円いかたちは、メドゥーサのすがたを映す青銅の盾、画面右下のもじゃもじゃしたかたちが、もしかしてメドゥーサの頭かも?と想像することができそうです。
 面白いのは、ほんとうならメドゥーサの顔が盾に映っているはずなのですが、映っているのは、いきおいよくえがかれた、茶色のくねくねとした線。これはいったい何なのでしょう? みなさんはどう思いますか?


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所蔵作品選 絵からうまれることばたち 作品その2

※ふせんに書いてくださったことばをそのまま掲載しています。
※文字の色は、ことばが書かれたふせんの色です。

・魚介類で満腹
・爆発す 無機と有機の はざまより コッコ
・魚?
・深海の怪魚が沢山 テクニックが面白い

・はくあきのげんそう
・版で作った?
・ちょっとコワイ。
深海魚?
・滅びのあとにメッセージを残している… 白亜、白壁 骨の白さのこと?!
・深海のイメージ
・キャンバスの裏にこの絵を描いた絵具がたれて それも何か表現出来ていたのでしょうか
・くしゃっとしたレジャーシート 瀧口修造 F
・とんでいる船のよう
・焼き魚 おいしくいただきました
・2021五輪後の東京 ここから創造をはじめよう
・デカルコマニーの手法。モノトーンが観る側にいろいろな色彩を
・海の底に沈む魚達 白骨化し何かを訴える!
・化物 白黒で書かれていて特徴的 少しコワイ
・水墨画とモノクロをかけ合わせた空のよう

・何だろう??? 海の中???
・心の中に自由がおありになったのね
・せんそうのあとの世界。どすぐろいかんじ。あたらしく産まれた生物
・魚たくのよう.どのように描いたのでしょう
・深海!海の底とは!
・今までに見なかった作品が沢山あり嬉しかったです。コロナの中作品展を開かれてご家族の皆さまたいへんでしたね。
・空に何かがとんでるような不思議なもの
・刺繍の拓本
・単色なのにすごいふくざつだなあ
・化石スタンプナウ
・化石の彫刻とマンガの間を自由に往来
・海の中 時間が生まれる
・文字を書いているようにみえる
・色のない世界 夢の中.風を感じる
・深い空間とためいき


【ちょっとたねあかし】

《白亜紀の幻想》
1962年 油彩・キャンバス 91.0✕116.7cm

 モノクロームの画面には、もやもやとした不思議なかたちがいっぱい。絵の表面は乾いているのに、なんだかベタベタとした感じ。画家がどうやってこんなかたちを作ることができたのか、実はよくわかっていません。油でうすく溶いた黒い絵具を、平らに置いたキャンバスの上に広げて、その上に切り抜いた紙や布などをのせ、少し乾いたところで引きはがす。そんなやりかたをした部分はいくつかありそうです。ともあれ、ふつうに筆でえがいただけではつくれないかたちが多いことはたしかですね。
 1959年から1962年頃、つまり今から60年くらい前、福沢はこんな黒一色の作品をいくつも作っていて、そのなかのいくつかが、「白亜紀の幻想」というタイトルで発表されています。「白亜紀」といえば、恐竜が世界中にいた昔むかしの時代のことですね。日本でもその次代の化石があちこちで発見されています。この絵がどうして「白亜紀」なのか? ちょっと想像してみてください。


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【展覧会】「所蔵作品選 絵からうまれることばたち」会場風景+作品とことばたち

2021年春-夏の展覧会 「所蔵作品選 絵からうまれることばたち」 の会場風景と、ご来館くださったみなさまが作品から紡いでくださったことばたちをご紹介します。

今回の展覧会は、当館所蔵作品の中から選りすぐりを展示し、解説パネルやキャプションを設置せず、ご来館くださったみなさまに、自由に作品をみていただこうという趣旨のもと開催しました。また、作品をみて感じたことや考えたことなどを、ふせんに書いて、アトリエ中央のテーブルに貼り付けていただき、たくさんのことばをみなさまと共有できるようにしました。

こうした試みは初めてのことで、どんなご感想をいただけるのか正直不安に思っていましたが、ことのほか楽しんでいただけた方が多く、テーブルの上はたくさんのふせんで埋め尽くされました。

これらの、作品にお寄せいただいたことばたちは、このページ下のリンクから各作品ごとにごらんいただけます。

きくて生命力の強そうな花は、福沢の描く人間像に似た存在感を放ちます。また壺の絵は、おそらくは古代ギリシャの壺をヒントにしていると思われますが、モティーフはエジプト壁画、イランの建築レリーフ、レオナルド・ダ・ヴィンチの絵画、そして卑弥呼など、じつに多彩です。彼がその都度想像をふくらませ、独自の世界をつくりあげようとしていたことがわかります。

階段下の展示ケースには、ちょっと不思議な雰囲気のあるスケッチや挿絵などを展示し、こちらもことばをお寄せいただけるようにしました。


大きさも年代も、絵画表現じたいもじつに多彩な作品が並んだ今回の展覧会。作品を選んだポイントは、ただただ「見た目の面白さ」だったのですが、そんな単純な意図をこえて、とても豊かなことばをみなさまが生み出してくださったのは、みなさまの豊かな想像力と、福沢一郎作品の懐の深さゆえだと感じています。

興味深かったのは、ちいさなスケッチも大きな油絵も、同じようにたくさんのことばが紡がれたことです。ふだんあまり日の目を見ないささやかなものたちが持つ力を、改めて知ることができました。

   *   *   *   *   *

では、ご来館のみなさまが紡いでくださったことばたちとともに、作品のちょっとした解説を、お楽しみいただきましょう。以下の画像をクリックすると、その作品からうまれたことばたちのページにジャンプします。