【作品】土井ヶ浜 / Doigahama 1964年頃

1964c_a_doigahama_w

題名/title: 《土井ヶ浜》/ Doigahama
制作年
/date:
1964年頃
技法・材質
/materials:
油彩・カンヴァス/oil on canvas
寸法/size: 32.8×67.2cm
所蔵
/collection
那覇市
Naha City
  福沢は、雑誌『太陽』の創刊から連載された特集「日本人はどこからきたか」「日本文化のあけぼの」の挿絵を担当している。考古学の最新の成果を盛り込み、喪失しかけていた日本人のアイデンティティを呼び覚ますこの特集で、画家は謎多き古代の人々を、力強く、より普遍的に、単なる説明図に陥ることなく描ききった。本作品は山口県下関市の土井ヶ浜遺跡(弥生時代)の発掘成果から、当時の戦闘の情景をイメージして描いたもの。福沢独特の群像表現があらわれている。

【作品】レダ / Leda 1962年

1962_a_leda_100c77p93w

題名/title: 《レダ》/ Leda
制作年
/date:
1962年
技法・材質
/materials:
油彩・カンヴァス/oil on canvas
寸法/size: 90.9×116.7cm
所蔵
/collection
群馬県立近代美術館
Museum of Modern Art, Gunma
  1959-62年の作品に特徴的な、黒一色のデカルコマニーを用いた下地を活かしながら、ゼウスの化身の白鳥とたわむれるレダが描かれる。この頃抽象表現への挑戦が一段落し、具象的描写による「主題絵画」へと踏み出した。

【作品】 虚脱 / Absentmindedness 1948年

1948_a_kyodatsu_100aa

題名/title: 《虚脱》/ Absentmindedness
制作年
/date:
1948年
技法・材質
/materials:
油彩・カンヴァス/oil on canvas
寸法/size: 116.7×90.9cm
所蔵
/collection
群馬県立近代美術館
Museum of Modern Art, Gunma
まるで海の底を思わせるような風景のなかに、飛行機の残骸と、両腕をだらしなく広げて斜めに立つ人物が描かれている。戦後の混沌とした世相のうちにある人間の虚脱状態を象徴的に描いたものか。なお、飛行機の残骸は、戦前の満洲旅行(1935年)以降繰り返し作品に登場するモティーフである。これもまた戦争の空しさの象徴といえる。

【展覧会】「福沢一郎は《何を》《如何に》描いたか 10/14 – 12/2, 2011

《踊り》 1955-56年
富岡市立美術博物館・福沢一郎記念美術館蔵

このたび、福沢一郎記念館では、秋の展覧会として「福沢一郎は《何を》《如何に》描いたか」を開催いたします。

福沢一郎の作品を年代ごとにずらりと並べてみると、その変化に驚かされます。とてもひとりの画家が描いたとは、にわかに信じがたいほど、さまざまな素材と表現手法があらわれているのです。
しかし、福沢にとってこうした素材が手法が変化すること自体、別段大きな問題ではなかったようです。このことは次のような福沢一郎自身のことばにもあらわれています。

「私はテクニックだけの仕事ではなく、テーマを生かして、何を描いたかということをはっきり示したいと思っている。その為には、或る程度具象的でなければならない。しかし又、抽象的に描かねばならぬ場合もある。必ずしも具象にとらわれる必要はない。 要するに何を表現するかという事が大事なのである。」 (『福沢一郎作品集 2』1987年 より)

《何を》描くかによって《如何に》の部分はおのずと決まってくる、ということなのでしょう。今回の展示では作品のテーマとなる《何を》だけでなく、あえて《如何に》の部分、つまり表現手法にもスポットをあててみました。
福沢の画業のなかで注目すべきユニークな手法をひろい出し作品を選んでみると、面白いことに、彼の得意とする骨太でダイナミックな絵画表現から少しはずれたものが多く集まりました。これらは、まるで彼の画業の「曲がり角」を示すもののようです。しかしそれらを通過することで、彼は晩年の壮大な境地を獲得することができたのです。
今回はこれらの作品にあらわれた画家の試みと、その陰にあるエピソードを解説するためのパネルを用意しました。作品とあわせてお読みいただくことで、福沢一郎のさまざまな絵画表現を知る助けになればと考えております。
この機会に、ぜひお出かけください。

会 期:10月14日(金)〜12月2日(金)11:00-17:00 月・水・金開館
※ 11月23日(水)は祝日ですが開館します。
入館料:300円


※講演会開催のお知らせ

「絵画と私」
講師:林家永吉氏(元スペイン大使)
日時:10月26日(水) 14:00〜15:30
場所:福沢一郎記念館
会費:1,000円
※要予約/先着40名様(FAXも可)

<お問い合わせ:お申し込みはこちらまで>
TEL. 03-3415-3405 / FAX. 03-3416-1166

【作品】 失楽園 / Paradise Lost 1980年

1980_a_paradiselost

題名/title: 《失楽園》/ Paradise Lost
制作年
/date:
1980年
技法・材質
/materials:
アクリル・カンヴァス / acrylic on canvas
寸法/size: 290.0×900.0㎝
所蔵
/collection
山梨県立美術館
Yamanashi Prefectural Museum of Art
  山梨県立美術館の1階ロビーに設置されている巨大な作品。題名のとおり、ミルトンの叙事詩『失楽園』を主題として制作された。愚かしくも力強く生きる人間の本性に信頼を置いていた福沢は、ミルトンの描く人間像に共感していたとおもわれる。悪魔が跳梁跋扈する暗黒の森から、明るく空虚な世界へアダムとイヴが飛び出してゆくさまは、1946年作《世相群像》と重なる。

【作品】祝祭 / Celebration 1963年

1963_shukusai_90sc39@52w

題名/title: 《祝祭》/ Celebration
制作年
/date:
1963年
技法・材質
/materials:
油彩・カンヴァス / oil on canvas
寸法/size: 199.8×399.7cm
所蔵
/collection
群馬県立近代美術館
Museum of Modern Art, Gunma
  第7回日本国際美術展に出品された大作。磔刑のキリストのまわりに集う幾つもの顔は、華やかさというよりも重厚な祈りの場面を思い起こさせる。1953-4年の中南米旅行で出会った、かの地の祭りの喧噪か。それとも同年2月に亡くなった妻への鎮魂の意か。なお、この作品を原画としたステンドグラスが、福沢の出身地群馬県富岡市の、しののめ信用金庫本店に設置されている。

【作品】 国引き / KUNI-BIKI 1943年

1943_kunibiki

題名/title: 《国引き》/ KUNI-BIKI
制作年
/date:
1943年
技法・材質
/materials:
油彩・カンヴァス / oil on canvas
寸法/size: 不明 / Unknown
所蔵
/collection
所在不明
Unknown
  第4回美術文化協会展の出品作で、出雲に伝わる「国引き神話」の一場面を描いたもの。隠岐や新羅(朝鮮半島にあった古代の国)を引っ張って縫い合わせ出雲国が出来るという神話で、制作の途中で本作品を見た加太こうじが「先生、こりゃあ侵略戦争の諷刺じゃあないですか」と尋ねると、福沢は笑って「君、そんなことをいうと、私はまた引っぱられる」と言い、「日本的な絵なら描いていいというから、これを描いたんだ。どうです日本的でしょう」とうそぶいたという。
なお、この絵のモデルを山下菊二が務めたことが、本作品のためのスケッチ(山下旧蔵)からわかっている。

【作品】 定めなき世に定めなき小夜衣明日は誰が身の妻ならぬかは / In a world disordered as my disheveled night gown, I do not know whose wife I will be tomorrow 1931年

1931_a_sadame

題名/title: 《定めなき世に定めなき小夜衣明日は誰が身の妻ならぬかは》/ In a world disordered as my disheveled night gown, I do not know whose wife I will be tomorrow
制作年
/date:
1931年
技法・材質
/materials:
油彩・カンヴァス / oil on canvas
寸法/size: 114.3×160.3㎝
所蔵
/collection
群馬県立近代美術館
Museum of Modern Art, Gunma
  第2回独立美術協会展(1932年3〜4月)出品作。一見遊女を描いただけの絵に見えるが、遊女の左側には人物の足が横倒しになって描かれている。エルンストのコラージュ・ロマンの世界を日本のイメージで試みた問題作。

【作品】 江戸の花 / Edo Flower 1934年

1934_edo

題名/title: 《江戸の花》/ Edo Flower
制作年
/date:
1934年
技法・材質
/materials:
油彩・カンヴァス/oil on canvas
寸法/size: 116.7×80.3㎝?
所蔵
/collection
(所在不明)
Unknown
  江戸火消しの纏や鳶口、梯子などにより構成された平面的な印象を受ける作品である。当時の展覧会評でも「防火宣伝用のポスターめいてゐる」などと書かれているが、それも画家の想定の範囲内なのかもしれない。ちなみに描かれている纏などは『風俗画報臨時増刊 江戸乃花』(1898年12月)から引用していることがわかっている。なお画像は展覧会絵葉書から複写したもので、カラーの画像は現存しない。

【作品】 溺死 / Drown 1930年

1930_a_noye

題名/title: 《溺死》/ Drown
制作年
/date:
1930年
技法・材質
/materials:
油彩・カンヴァス / oil on canvas
寸法/size: 91.0×116.7cm
所蔵
/collection
富岡市立美術博物館・福沢一郎記念美術館
Tomioka City Museum/FUKUZAWA Ichiro Memorial Gallery
  第1回独立美術協会展特別陳列のひとつ。この作品の背景部分は『ラ・ナチュール』という科学雑誌の図版をもとに描かれていることがわかっている。画面左上のフランス語には、引用した図版のキャプションを少々もじって「溺死者の周りを飛ぶ髑髏頭のスズメガ」とある。