投稿者「fukuzmuseum」のアーカイブ
【作品】 水瓜を持つ男 / Man with a Watermelon 1955年
題名/title: | 《水瓜を持つ男》/ Man with a Watermelon |
制作年 /date: |
1955年 |
技法・材質 /materials: |
油彩・カンヴァス / oil on canvas |
寸法/size: | 130.3.0×97.0cm |
所蔵 /collection |
群馬県立近代美術館 Museum of Modern Art, Gunma |
1955年、つまり福沢が中南米旅行から帰国した翌年の作品である。この頃制作された「中南米シリーズ」には、パブロ・ピカソの影響がしばしば指摘される。1951年に開催されたピカソの大規模な個展は、1920年代のパリで発見したピカソ作品のちからを再認識させる契機となったのかもしれない。そして、中南米旅行で得た原初的な生命感を放つ人々のイメージと重なり、戦中から戦後にかけて失われていた、彼本来の力強い絵画を取り戻すことに成功したのではないだろうか。 翌年の《狩猟》ほど画面構成は洗練されておらず、旅行以前の作画から大きく変貌を遂げる道半ばという印象を受ける。画面との格闘のなかで、ピカソの再発見が、彼にとって大きな意味を持っていたと想像される。 |
【作品】卑弥呼宮室に入る / Himiko enters the Palace 1980年
題名/title: | 《卑弥呼宮室に入る》/ Himiko enters the Palace |
制作年 /date: |
1980年 |
技法・材質 /materials: |
アクリル・カンヴァス / acrylic on canvas |
寸法/size: | 227.3×363.6cm |
所蔵 /collection |
世田谷美術館 The Setagaya Art Museum |
1980(昭和55)年頃から、福沢は古代日本の物語を画題とした作品を制作する。特に中国の歴史書『魏志倭人伝』に記された邪馬台国と、その国を統治したといわれる女王卑弥呼に強い興味を覚え、それに関するさまざまな書物を読みあさってイメージの源泉を得た。その成果は翌年3月の個展「福沢一郎 魏志倭人伝展」で発表される。 本作《卑弥呼宮室に入る》はその出品作中特に大きな5点のうちの一つで、強烈な赤が支配する群衆の中を、輿に乗ってあらわれる卑弥呼を描いている。画家曰く「ブラックホールに興味を寄せるのと同じ」ように、古代日本の世界に引き込まれ、その原初的な荒々しい生命を描き出した。 |
【作品】土井ヶ浜 / Doigahama 1964年頃
題名/title: | 《土井ヶ浜》/ Doigahama |
制作年 /date: |
1964年頃 |
技法・材質 /materials: |
油彩・カンヴァス/oil on canvas |
寸法/size: | 32.8×67.2cm |
所蔵 /collection |
那覇市 Naha City |
福沢は、雑誌『太陽』の創刊から連載された特集「日本人はどこからきたか」「日本文化のあけぼの」の挿絵を担当している。考古学の最新の成果を盛り込み、喪失しかけていた日本人のアイデンティティを呼び覚ますこの特集で、画家は謎多き古代の人々を、力強く、より普遍的に、単なる説明図に陥ることなく描ききった。本作品は山口県下関市の土井ヶ浜遺跡(弥生時代)の発掘成果から、当時の戦闘の情景をイメージして描いたもの。福沢独特の群像表現があらわれている。 |
【作品】レダ / Leda 1962年
題名/title: | 《レダ》/ Leda |
制作年 /date: |
1962年 |
技法・材質 /materials: |
油彩・カンヴァス/oil on canvas |
寸法/size: | 90.9×116.7cm |
所蔵 /collection |
群馬県立近代美術館 Museum of Modern Art, Gunma |
1959-62年の作品に特徴的な、黒一色のデカルコマニーを用いた下地を活かしながら、ゼウスの化身の白鳥とたわむれるレダが描かれる。この頃抽象表現への挑戦が一段落し、具象的描写による「主題絵画」へと踏み出した。 |
【作品】 虚脱 / Absentmindedness 1948年
題名/title: | 《虚脱》/ Absentmindedness |
制作年 /date: |
1948年 |
技法・材質 /materials: |
油彩・カンヴァス/oil on canvas |
寸法/size: | 116.7×90.9cm |
所蔵 /collection |
群馬県立近代美術館 Museum of Modern Art, Gunma |
まるで海の底を思わせるような風景のなかに、飛行機の残骸と、両腕をだらしなく広げて斜めに立つ人物が描かれている。戦後の混沌とした世相のうちにある人間の虚脱状態を象徴的に描いたものか。なお、飛行機の残骸は、戦前の満洲旅行(1935年)以降繰り返し作品に登場するモティーフである。これもまた戦争の空しさの象徴といえる。 |
【展覧会】「福沢一郎は《何を》《如何に》描いたか 10/14 – 12/2, 2011
このたび、福沢一郎記念館では、秋の展覧会として「福沢一郎は《何を》《如何に》描いたか」を開催いたします。
福沢一郎の作品を年代ごとにずらりと並べてみると、その変化に驚かされます。とてもひとりの画家が描いたとは、にわかに信じがたいほど、さまざまな素材と表現手法があらわれているのです。
しかし、福沢にとってこうした素材が手法が変化すること自体、別段大きな問題ではなかったようです。このことは次のような福沢一郎自身のことばにもあらわれています。
「私はテクニックだけの仕事ではなく、テーマを生かして、何を描いたかということをはっきり示したいと思っている。その為には、或る程度具象的でなければならない。しかし又、抽象的に描かねばならぬ場合もある。必ずしも具象にとらわれる必要はない。 要するに何を表現するかという事が大事なのである。」 (『福沢一郎作品集 2』1987年 より)
《何を》描くかによって《如何に》の部分はおのずと決まってくる、ということなのでしょう。今回の展示では作品のテーマとなる《何を》だけでなく、あえて《如何に》の部分、つまり表現手法にもスポットをあててみました。
福沢の画業のなかで注目すべきユニークな手法をひろい出し作品を選んでみると、面白いことに、彼の得意とする骨太でダイナミックな絵画表現から少しはずれたものが多く集まりました。これらは、まるで彼の画業の「曲がり角」を示すもののようです。しかしそれらを通過することで、彼は晩年の壮大な境地を獲得することができたのです。
今回はこれらの作品にあらわれた画家の試みと、その陰にあるエピソードを解説するためのパネルを用意しました。作品とあわせてお読みいただくことで、福沢一郎のさまざまな絵画表現を知る助けになればと考えております。
この機会に、ぜひお出かけください。
会 期:10月14日(金)〜12月2日(金)11:00-17:00 月・水・金開館
※ 11月23日(水)は祝日ですが開館します。
入館料:300円
※講演会開催のお知らせ
「絵画と私」
講師:林家永吉氏(元スペイン大使)
日時:10月26日(水) 14:00〜15:30
場所:福沢一郎記念館
会費:1,000円
※要予約/先着40名様(FAXも可)
<お問い合わせ:お申し込みはこちらまで>
TEL. 03-3415-3405 / FAX. 03-3416-1166
【作品】 失楽園 / Paradise Lost 1980年
題名/title: | 《失楽園》/ Paradise Lost |
制作年 /date: |
1980年 |
技法・材質 /materials: |
アクリル・カンヴァス / acrylic on canvas |
寸法/size: | 290.0×900.0㎝ |
所蔵 /collection |
山梨県立美術館 Yamanashi Prefectural Museum of Art |
山梨県立美術館の1階ロビーに設置されている巨大な作品。題名のとおり、ミルトンの叙事詩『失楽園』を主題として制作された。愚かしくも力強く生きる人間の本性に信頼を置いていた福沢は、ミルトンの描く人間像に共感していたとおもわれる。悪魔が跳梁跋扈する暗黒の森から、明るく空虚な世界へアダムとイヴが飛び出してゆくさまは、1946年作《世相群像》と重なる。 |
【作品】祝祭 / Celebration 1963年
題名/title: | 《祝祭》/ Celebration |
制作年 /date: |
1963年 |
技法・材質 /materials: |
油彩・カンヴァス / oil on canvas |
寸法/size: | 199.8×399.7cm |
所蔵 /collection |
群馬県立近代美術館 Museum of Modern Art, Gunma |
第7回日本国際美術展に出品された大作。磔刑のキリストのまわりに集う幾つもの顔は、華やかさというよりも重厚な祈りの場面を思い起こさせる。1953-4年の中南米旅行で出会った、かの地の祭りの喧噪か。それとも同年2月に亡くなった妻への鎮魂の意か。なお、この作品を原画としたステンドグラスが、福沢の出身地群馬県富岡市の、しののめ信用金庫本店に設置されている。 |
【作品】 国引き / KUNI-BIKI 1943年
題名/title: | 《国引き》/ KUNI-BIKI |
制作年 /date: |
1943年 |
技法・材質 /materials: |
油彩・カンヴァス / oil on canvas |
寸法/size: | 不明 / Unknown |
所蔵 /collection |
所在不明 Unknown |
第4回美術文化協会展の出品作で、出雲に伝わる「国引き神話」の一場面を描いたもの。隠岐や新羅(朝鮮半島にあった古代の国)を引っ張って縫い合わせ出雲国が出来るという神話で、制作の途中で本作品を見た加太こうじが「先生、こりゃあ侵略戦争の諷刺じゃあないですか」と尋ねると、福沢は笑って「君、そんなことをいうと、私はまた引っぱられる」と言い、「日本的な絵なら描いていいというから、これを描いたんだ。どうです日本的でしょう」とうそぶいたという。 なお、この絵のモデルを山下菊二が務めたことが、本作品のためのスケッチ(山下旧蔵)からわかっている。 |