メールマガジン第13号(2015年11月20日発行)

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福沢一郎記念館 メールマガジン No.13
FUKUZAWA Ichiro Memorial Museum
— Setagaya,Tokyo
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□■□   現在当館は閉館中です   □■□
■□■ 次の開館は来年春の予定です ■□■

[1] 「福沢一郎のヴァーミリオン」展、終了しました
[2] ココで観られる福沢一郎作品
[3] コラム 福沢一郎の書架から(12)
[4] 賛助会員のお誘い

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[1]
□ 2015年秋の展覧会「福沢一郎のヴァーミリオン」展
 終了しました!

鮮烈な赤をテーマにした今秋の展覧会「福沢一郎のヴァーミリ
オン」、無事終了いたしました。
福沢一郎の使う色をテーマにした展覧会は初めてでしたが、思
いのほか好評で、赤に埋め尽くされた展示室に「圧倒された」
「元気をもらった」「普通じゃない!」などのコメントを多く
いただきました。
もちろん、赤とひとくちに言っても、福沢作品にあらわれる赤
はひととおりではなく、それぞれの作品ごとの工夫によって、
描かれたテーマが鮮明に浮かび上がり、予期せぬ面白さがあり
ました。
例えば《争う男》(1965年、しののめ信用金庫蔵)は、画面
の大部分を赤が覆ってはいるものの、4種類くらいの赤が微妙
に重なりあって、互いにつかみかかり争う人々の動きや熱気を
あらわしています。いっぽう、その様子をちらちらと見ながら
我関せずと通り過ぎる人々は薄塗りで表現され、まるで迫り来
る赤=人々の熱気から逃げているようにも見えます。
虐げられた人々の力強さとともに、公民権運動がさかんだった
60年代半ばのアメリカの世相も垣間見える、非常に面白い作品
です。
考えてみると、この作品のような光景が、今も世界でおこって
いるのですね…。

今後も、こんなちょっと変わったテーマの展示に挑戦してみた
いと思います。
次回の展覧会は、来年春の「PROJECT dnF」です。詳しくは
メルマガや公式HPにてお知らせします。どうぞお楽しみに!

「福沢一郎のヴァーミリオン」展の内容は、こちら。↓
https://fukuzmm.wordpress.com/2015/09/15/2015a_vermillion/

会場風景も公開中です↓
https://fukuzmm.wordpress.com

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[2]
□ ココで観られる福沢一郎作品
《人間嫌い》 1928年 油彩・カンヴァス 71.2×51.9cm
 @群馬県立近代美術館

ぽつぽつと雲が浮かぶ、ややくすんだ濃紺の空。傾いて今にも
倒れそうなつぎはぎだらけの建物。その左奥へと煙をたなびか
せながら走り去る機関車…。どことなく物寂しい雰囲気が漂い
ます。画面の左上には、「Le misanthrop」(仏語:厭世家、
人間嫌い)の文字が見えます。
この絵は、福沢が1925-31年に住んだパリのアトリエ附近の風
景を描いたものだそうです。このアトリエは、モンパルナス駅
からフランス各地へと伸びる線路の脇にあり、福沢は毎日のよ
うに大都市パリと田舎を行き来する列車を眺めたことでしょう。
この絵について、福沢は後年次のように書き記しています。
「モティーフとしては、郊外通ひの二階のある汽車。此頃のや
うなうすら寒い頃、ポツネンと独り、風の吹きさらしのその二
階に腰をかけて、運ばれて行く男を見掛ける事がある。それが
私の興味を惹いたのである。「人間嫌ひ」とは、二階に小さく
描いてをつた男の、人間的なユーモアのある性癖をとつて名付
けた画題なのである。」
この文章が書かれたのは1932(昭和7)年。満州事変の陣中を
諷刺した作品《慰問袋に美人画を入れよ》などで物議を醸して
いた福沢は、文章のうえでも諧謔精神を存分に発揮させていま
す。
ただ、この絵を描いたときの心持ちは、少し違ったものだった
のかもしれません。パリの日本人画家たちの乱痴気騒ぎには関
わらず、酒も飲まず、賑やかな集まりからは距離を置いていた
彼は、一抹の寂しさと故郷への思いを、列車に揺られていくこ
の男に託したのではないか…とは、少し考えすぎでしょうか。
また、テーマを強く意識して制作にあたった、最も早い作品で
あることも、特筆すべきです。福沢が生涯追い続けた「主題絵
画」は、この絵から本格的にはじまったともいえるでしょう。

本作品は12/20(日)まで、群馬県立近代美術館の常設展示室
にて公開中。佐伯祐三《パリ郊外風景》や高畠達四郎《婦人像》
など、同時代のパリ滞在日本人作家の作品もお見逃しなく。

群馬県立近代美術館のコレクション展示についてはこちら↓
http://mmag.pref.gunma.jp/index.html

作品画像は、当館ホームページの「作品集」から。↓
https://fukuzmm.wordpress.com/works/

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[3]
□ コラム 福沢一郎の書架から(13)
 
大江健三郎『死者の奢り』 文芸春秋新社 1958年

小説家大江健三郎の、作家デビュー作にして芥川賞受賞候補作
「死者の奢り」。雑誌『文学界』に発表されるや、その奇妙な
感覚描写で大きな話題を呼び、翌年「飼育」で芥川賞を受賞す
る足がかりともなった、初期の代表作です。
本書は、書名にもなっている本作のほか「奇妙な仕事」「飼育」
など作家デビューの前後の短編がおさめられた、大江の最初の
単行書です。
本書の表紙には、福沢一郎の作品が使われています。赤を基調
としたカバーデザインのなかで、福沢独特の分割・再結合され
たような人体の塊が、強烈な印象を放っています。
福沢と大江のふたりをつないだものは何だったのか、詳しいこ
とはまだ不明ですが、ともに東大出身者であることのほか、大
江を芥川賞に推挙した舟橋聖一が福沢と親しかったことも、ふ
たりをつなぐ糸のひとつかもしれません。装幀・装画という仕
事をとおして文学者と画家との関係をみるのも、面白いもので
すね。
なお、大江健三郎著の文庫本のうち、新潮文庫版のカバーの多
くに山下菊二の作品が使われています。こんなところで師弟の
つながりがあるのも、また面白いことです。

本書は古本でしか手に入りませんが、最近かなり高値です。大
江の小説じたいは、手軽に手に入る新潮文庫版でお楽しみくだ
さい。大江の原点、必読です。

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[4]
□ 賛助会員のお誘い

一般財団法人福沢一郎記念美術財団では、その美術振興活動を
より広範囲に、積極的にすすめるために、賛助会員を募ってい
ます。
一人でも多くの方に参加していただくことで、若い美術家の顕
彰、美術研究への助成など財団の活動が充実しますので、どう
ぞよろしくお願いいたします。

◯賛助会員の区分と会費
(1) 一般会員 3,000円(年会費)
(2) 維持会員 30,000円(年会費)
(3) 特別会員 300,000円(永久会員)

◯特典
(1) 福沢一郎記念館入館料無料
(2) 福沢一郎記念館ニュース送付
(3) 記念館主催の催し物に優先的にご招待

◯会費のお振込先
●郵便局振替口座 00190-2-695591
 福沢一郎記念館
●りそな銀行 祖師谷支店 普通口座 1000201
 (一財) 福沢一郎記念美術財団

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福沢一郎記念館 メールマガジン No.13
2015年11月20日発行
編集・発行 一般財団法人 福沢一郎記念美術財団

福沢一郎記念館

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