「わたしの福沢一郎・再発見」  #003《原人のいぶき》

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《原人のいぶき》

1981年 アクリル・カンヴァス 200.0×600.0cm
富岡市立図書館 蔵

大竹夏紀
染色アーティスト

 私は福沢一郎の出身地である富岡市に生まれ、幼少期を過ごしました。そんな私にとって福沢一郎とは我が市民が誇る偉大な芸術家という印象です。その思いは子供のころから根付いたものです。市内の公共施設の至る所で福沢一郎の絵を目にしましたし、市の広報誌などにも紹介されていたと思います。市内には立派な福沢一郎記念美術館もあります。家族に聞くと、祖父の時代では小学校の遠足に福沢一郎の実家見学が遠足に組み込まれていたとか。何より周りの大人たちや学校の先生が、幼い私に場面場面で説明してくれました。みんなが偉大な芸術家を誇らしく思っているのがしみじみと伝わり、私の心にも根付いたのだと思います。
 福沢一郎の絵は、いわゆる田舎の市民が許容して考える普通の美しいだけの絵とは違ってかなり独特で個性的なものに感じました。神話や古代の男たちのゴツゴツした荒々しい姿。ちょっとこわい。でもパワフルでかっこいい!これが真の芸術か!なんて幼心に納得していました。
 福沢一郎の絵で一番印象に残っているのは、市立図書館に今でも飾られている《原人のいぶき》という幅6メートルにも及ぶ大きな絵です。古代人の家族でしょうか。青空の下で地面に寝転んだりくつろぐ姿が描かれています。力強くダイナミックで、広く清々しい世界観を感じます。子供のころは絵本を、小中学生になっても本を借りに行く度に、この絵を目にして、偉大な芸術家が同じまちにいたことをじんわりと誇りに思った、幸せな思い出です。

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Natsuki Otake

大竹夏紀(おおたけ・なつき) 染色アーティスト。1982年、群馬県富岡市生まれ。多摩美術大学大学院美術研究科デザイン専攻修了。ろうけつ染めによる絵画作品で注目を集める。2010年度東京モード学園テレビCMに作品が起用される。個展・グループ展多数。2014年第11回上毛芸術文化賞受賞。2016年富岡市立美術博物館・福沢一郎記念美術館にて個展開催。
公式ホームページ http://bamboosummer.main.jp


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