【作品】牛 / Cows 1936年

1936_a_cow_100c19p38mm

題名/title: 《牛》/ Cows
制作年
/date:
1936年
技法・材質
/materials:
油彩・カンヴァス/oil on canvas
寸法/size: 192.0×262.0cm
所蔵
/collection
東京国立近代美術館
Tokyo National Museum of Modern Art
  1935年に満州(現在の中国東北部)を旅行した福沢は、その後広大な大地とそこに蠢く人物像を描いた作品を幾つか制作している。本作品はその中で最もよく知られたもの。画面中央の牛は、ギリシャの古代遺跡から出土した金杯の模様からイメージを得ている。その姿は所々穴があき背景が透けて見え、画面の力強さとは裏腹に空虚さをも感じさせる。

【作品】 キリストの失墜 / Fall of Christ 1933年

1933_a_shittsui_mm

題名/title: 《キリストの失墜》/ Fall of Christ
制作年
/date:
1933年
技法・材質
/materials:
油彩・カンヴァス/oil on canvas
寸法/size: 65.2×80.3cm?
所蔵
/collection
(所在不明)
Unknown
  画面右に逆立ちする人物(キリスト)は、1924-31年のパリ滞在時に集めた磔刑像をもとに描いたと思われる。明るい色調と荒い塗りが乾いた諧謔を画面に加味している。なお、福沢が1932-35年にかけて制作した作品はほとんど現存が確認されていない。

【作品】 敗戦群像 / Group of figure defeated in battle 1948年

1948_a_haisen_100c38p56mm

題名/title: 《敗戦群像》/ Group of figure defeated in battle
制作年
/date:
1948年
技法・材質
/materials:
油彩・カンヴァス/oil on canvas
寸法/size: 193.9×259.1cm
所蔵
/collection
群馬県立近代美術館
Museum of Modern Art, Gunma
堆くピラミッド型に積み上げられた人体は、ダンテ『神曲・地獄篇』の幻想に着想を得た1946年のシリーズから続くモティーフだが、画面の奥行き感や空虚さが薄れ、次第に骨太な造形感覚が恢復して来ているように見える。画家自身も戦後の混乱から抜け出し、ようやく新たな地平へと歩みだしたのであろう。

【作品】 地獄門 / The Gates of Hell 1959年

1959_a_gateofhell_100p85mm

題名/title: 《地獄門》/ The Gates of Hell
制作年
/date:
1959年
技法・材質
/materials:
油彩、石膏、布、板など / oil, plaster, fabric, board and some materials
寸法/size: 263.0×201.0cm
所蔵
/collection
富岡市立美術博物館・福沢一郎記念美術館
Tomioka City Museum/FUKUZAWA Ichiro Memorial Gallery
  不規則に重ねられた板の上に紐や箱、木枠などさまざまなものが貼り付けられ、混沌とした画面をつくりあげている。これは当時の日本で流行していた芸術思潮「アンフォルメル」に福沢が共鳴した結果であろうと思われるが、そのきっかけは、1958年の欧州旅行の際に見た街角の壁の落書ともいわれ、彼はそこに即物的な表現の可能性をみたようである。ただ、アンフォルメルの画家の多くがオートマティックで即興的なイメージを求めたのに対し、福沢はきわめて意図的・作為的に「アンフォルメル」的形態を用いた。板の隙間から漆黒の闇=黒い布が見えるあたりには、「地獄門」という主題に向けた画家の強い作為がうかがえる。

【作品】 鳥 / Bird 1957年

1957_a_bird_c58p74mm

題名/title: 《鳥》/ Bird
制作年
/date:
1957年
技法・材質
/materials:
油彩・カンヴァス / oil on canvas
寸法/size: 116.7×91.9cm
所蔵
/collection
群馬県立近代美術館
Museum of Modern Art, Gunma
  中南米で得た幻想やモティーフによる作品群は1960年代初頭まで制作されるが、平行して本作品のような極めて抽象的な作品も生み出されている。鮮やかな色面と太い輪郭線によるステンドグラスのような画面の特徴はそのままだが、さらにその上にチューブから直接絵の具をひねり出すようにして線を描くという手法は、他の時期にはみられないものである。当時日本でも話題になっていた「アンフォルメル」への興味の萌芽ともいえようか。

【作品】 埋葬 / Burial 1957年

1957_a_maisou_c60p76mm

題名/title: 《埋葬》/ Burial
制作年
/date:
1957年
技法・材質
/materials:
油彩・カンヴァス / oil on canvas
寸法/size: 258.0×193.0cm
所蔵
/collection
東京国立近代美術館
The National Museum of Modern Art, Tokyo
  「この画題はラテンアメリカの埋葬を意味するが、それは、必ずしも中南米の風俗習慣にこだわってはいない。(中略)全体として空想である。ただ、原始的で強烈な熱帯群像を描写したにとどまる」と、福沢はこの作品について述べている。彼が中南米旅行で得たものから何を導き出したかったがよく判る言葉であり、一連の「中南米シリーズ」の多くにあてはまるものでもある。ただ、平滑で鮮やかな色面が活きる部分と、荒々しい筆触が目立つ部分とが混在したこの作品には、制作の過程にいま少し謎が隠されているようでもある。

【作品】 狩猟 / Hunting 1956年

1956_a_shuryo_88c26p39mm

題名/title: 《狩猟》/ Hunting
制作年
/date:
1956年
技法・材質
/materials:
油彩・カンヴァス / oil on canvas
寸法/size: 193.9×259.1cm
所蔵
/collection
群馬県立近代美術館
Museum of Modern Art, Gunma
1952年5月、国際的な文化イベントの日本代表としてフランスに渡った福沢は、そのまま同国に滞在し、翌年ブラジル、その翌年にはメキシコへと旅を続ける。彼はパリの人類博物館でアフリカや中南米の人々が生み出す造形に強い興味を示しており、それがこの旅の発端であるとも考えられている。1954年に帰国した彼は、かの地で得たさまざまなモティーフや幻想を取り入れ、強烈な色彩と力強い輪郭線をもって精力的に制作をおこなった。《狩猟》では、ジャングルの中で人と動物とがからみ合って蠢き、根源的な自然と人間のちからが示されているようである。

【作品】父と子 / Father and child 1937年

1937_ a_f_c_itabashi_mm

題名/title: 《父と子》/ Father and child
制作年
/date:
1937年
技法・材質
/materials:
油彩・カンヴァス/oil on canvas
寸法/size: 28.0×20.0cm
所蔵
/collection
板橋区立美術館
Itabashi Art Museum
  空虚な室内と思しき空間に、肩車の父と子。無邪気な子の動きに比して、下を向く父は静かで暗鬱な印象である。日中戦争のはじまった年、画家は我が子の未来にいいしれぬ不安を感じていたのか。その不安を暗示するように、毬が転がる。

【展覧会】「花と福沢一郎」展 4/15 – 6/1, 2011

2011s_minoo

《大阪箕面学園図書館ステンドグラス原画》 1983年



このたび、福沢一郎記念館では、春の展覧会として「花と福沢一郎」展を開催いたします。

福沢一郎といえばシュルレアリスムの難しい画風の作品、《牛》や《敗戦群像》などの人を圧するような迫力ある大作、奇怪な人間や動物が描かれている地獄絵シリーズなどがすぐ思い起こされますが、花をテーマにした優しい作品も沢山描いています。一見すると同じ作家の作品とは思えない印象を持たれるかもしれません。しかし花というテーマは福沢一郎にとってはそれほど違和感あるテーマではありませんでした。シュルレアリスムに関心を持っていた時代、1930年代に描いた作品にも花をテーマとしたものがあり、いまも現存しています。
今回の展示では、こうした花を扱った作品、花と人物が組み合わさった作品などに焦点を絞って並べてみました。そうすることによって実はいままで福沢一郎的でないのではと思われていた花の作品が、やはり福沢一郎ならではの作品であることが見えてきます。自分が描きたい対象をけれんみなく真っ向から描くやりかた、透明感のある色彩の使い方などは福沢一郎のすべての作品に共通した特色だといえると思います。じっくりとご覧いただきご自分で感じ取っていただけたら幸いです。
この機会に、ぜひお出かけください。

会 期:4月15日(金)〜6月1日(水)11:00-17:00 月・水・金開館
    ※ 4月29日(金)、5月4日(水)は祝日ですが開館します。
入館料:300円


※講演会開催のお知らせ
「福沢一郎氏と私の父、そして熊井 啓」
講師:熊井明子氏(作家・ポプリ研究家)
日時:4月27日(水) 14:00〜15:30
場所:福沢一郎記念館
会費:1,000円
※要予約/先着40名様(FAXも可)

<お問い合わせ:お申し込みはこちらまで>
TEL. 03-3415-3405 / FAX. 03-3416-1166

【作品】 レオナルドによる雑考から / From memorandum by Leonardo da Vinci 1983年

1983_a_leonard134smm

題名/title: 《レオナルドによる雑考から》/ From memorandum by Leonardo da Vinci
制作年
/date:
1983年
技法・材質
/materials:
アクリル・カンヴァス / acrylic on canvas
寸法/size: 45.2×140cm
所蔵
/collection
富岡市立美術博物館・福沢一郎記念美術館
Tomioka City Museum / FUKUZAWA Ichiro Memorial Gallery
  画面中央にはレオナルド最晩年の傑作といわれる《洗礼者ヨハネ》(1513-1516年、ルーヴル美術館蔵)、左端には《女の頭部》(1473年頃、ウフィッツィ美術館)、それら周辺には『アトランティコ手稿』などの素描にみられるさまざまなイメージが散りばめられている。《快楽と苦痛》などでは背景が褐色を基調としてつくられていたが、ここでは青や紫、黄などの鮮やかな色彩を配置しその効果を試している。なお本作品は同名の大作(1983年、190×600cm、学校法人箕面学園蔵)の習作と考えられる。