《プラカードを持つ女》 1965年 群馬県立近代美術館蔵
1965(昭和40)年4月、福沢一郎は、孫の誕生にあわせ、アメリカに留学している長男夫婦のもとを訪ねます。そこで家族水入らずの時を1か月半ほど過ごした彼は、その後ニューヨークに約3か月滞在し、そこに住む人々のすがたを題材に作品を制作します。
彼が主に描いたのは、タイムズ・スクウェアの雑踏でも、ブロードウェイの華やかなネオンサインでもなく、ハーレムなどの貧民街に住む人々のすがたでした。ちょうど、ベトナム戦争の激化を背景として、黒人への差別撤廃運動が盛んになりつつある時期でもあり、あちこちで座り込みやデモが行われるようになっていました。福沢は、貧民街に生きる人々のなかに秘められた激情や、いのちの輝きを、社会的背景をにじませなら描きました。そこには、国際都市ニューヨークのもうひとつの素顔が現れているだけでなく、逆境のなかに生きる人々に対する、福沢のある種の共感を見て取ることができます。
今回は、福沢一郎のニューヨーク滞在中の作品を展示し、この時期の彼の制作に改めてせまってみようという企画です。ぜひご覧ください。
会 期:2004年10月11日(月)-12月1日(水)11:00-17:00 月・水・金開館
※11月3日(水)は祝日ですが開館します。
入館料:300円
※講演会開催のお知らせ
「福沢一郎の版画とその周辺」
講師:益田祐作氏(アトリエMMG主宰)
日時:10月29日(金)14:00-15:30
場所:福沢一郎記念館