【展覧会】「PROJECT dnF」  第7回 中里葵「Repetition」、第8回 渡部未乃「Botanical garden」

福沢一郎記念美術財団では、1996年から毎年、福沢一郎とゆかりの深い多摩美術大学油画専攻卒業生と女子美術大学大学院洋画・版画専攻修了生の成績優秀者に、「福沢一郎賞」をお贈りしています。
この賞が20回めを迎えた2015年、当館では新たな試みとして、「PROJECT dnF ー「福沢一郎賞」受賞作家展ー」をはじめました。
これは、「福沢一郎賞」の歴代受賞者の方々に、記念館のギャラリーを個展会場としてご提供し、情報発信拠点のひとつとして当館を活用いただくことで、活動を応援するものです。

福沢一郎は昭和初期から前衛絵画の旗手として活躍し、さまざまな表現や手法に挑戦して、新たな絵画の可能性を追求してきました。またつねに諧謔の精神をもって時代、社会、そして人間をみつめ、その鋭い視線は初期から晩年にいたるまで一貫して作品のなかにあらわれています。
こうした「新たな絵画表現の追究」「時代・社会・人間への視線」は、現代の美術においても大きな課題といえます。こうした課題に真摯に取り組む作家たちに受け継がれてゆく福沢一郎の精神を、DNA(遺伝子)になぞらえて、当館の新たな試みを「PROJECT dnF」と名付けました。

今回は、中里葵(女子美術大学大学院版画専攻修了、2018年受賞)と、渡部未乃(多摩美術大学油画専攻卒業、2014年受賞)のふたりが展覧会をおこないます。
ふたりは福沢一郎のアトリエで、どのような世界をつくりあげるのでしょうか。

なお、アトリエ奥の部屋にて、福沢一郎の作品・資料もご覧いただけます。


第7回
中里 葵「Repetition」


《画一化する風景9》 2016年、91×91cm、水性木版/和紙
 

団地や大型マンションを思わせる建築物を真正面からとらえたイメージをもちいて制作する版画家・中里葵。まるで幾何学的な抽象絵画のようにもみえますが、その中には無個性、並列化、連続性といった都市と人間のありようが込められているようです。今回は近作を含め、これまでの制作を概観します。

 

◯作家のことば◯
私が「版画」という技法で作品を制作する意味は何か、と考えていました。
版画には他の絵画表現にはない様々な特質があります。〈版〉という〈型〉を一度作れば同一のイメージを複数生み出すことができたり、または色彩を変化させたり、層を重ねたり、様々なことができます。
そのような版画の特質から、無限に続いていくような作品や、展示空間に合わせて変形できる作品のような「版画」だからこそ生み出せる作品を模索しています。

2019年10月8日(火)-19日(土) 12:00 – 17:00  観覧無料
月曜休

※10月13日(日)の中里葵「Repetition」トーク&レセプションは、台風19号の影響を考慮し、中止とさせていただきます。
※ 当館は12日(土)に休館とさせていただきます。 15:00 – 17:00


第8回
渡部未乃「Botanical garden」


《Overlap XV》 2019年、194.0×130.5cm、油彩・キャンバス
 

渡部未乃の作品には、風景や植物を連想させるものが多くあります。抽象化されて普遍的な「絵画」へ進む途上、画面は理智と感性のはざまで揺れ動きながら、輝きを獲得していくようです。今回はこの個展のために制作した最新作のほか、植物のイメージから派生した絵画を中心に構成し、作家の新たな可能性をさぐります。

 

◯作家のことば◯
植物の形からドローイングを重ね、要素を削ぎ落とし抽象化した形を描いている。その際に自身の感情やモチーフの意味も取り除いていく。
絵と私の間に繰り返される対話により作品は徐々に自身から離れ、私のものでも誰のものでもなくなっていく。見る人によって様々な見方ができるような、自立した絵画を目指している。

2019年10月29日(火)- 11月9日(土) 12:00 – 17:00  観覧無料
月曜定休
ギャラリートーク、レセプション 11月2日(土) 15:00 – 17:00