この賞が20回めを迎えた2015年、当館では新たな試みとして、「PROJECT dnF ー「福沢一郎賞」受賞作家展ー」をはじめました。
これは、「福沢一郎賞」の歴代受賞者の方々に、記念館のギャラリーを個展会場としてご提供し、情報発信拠点のひとつとして当館を活用いただくことで、活動を応援するものです。
福沢一郎は昭和初期から前衛絵画の旗手として活躍し、さまざまな表現や手法に挑戦して、新たな絵画の可能性を追求してきました。またつねに諧謔の精神をもって時代、社会、そして人間をみつめ、その鋭い視線は初期から晩年にいたるまで一貫して作品のなかにあらわれています。
こうした「新たな絵画表現の追究」「時代・社会・人間への視線」は、現代の美術においても大きな課題といえます。こうした課題に真摯に取り組む作家たちに受け継がれてゆく福沢一郎の精神を、DNA(遺伝子)になぞらえて、当館の新たな試みを「PROJECT dnF」と名付けました。
今回は、馬場美桜子(多摩美術大学美術学部絵画学科油画専攻卒業、同大学院美術研究科博士課程前期修了、2014年受賞)の展覧会を開催いたします。
なお、アトリエ奥の部屋にて、福沢一郎の作品・資料もご覧いただけます。
馬場美桜子 折り目をあるく
植物の生と死の境界線はとても曖昧で、行き来しているようで、時に両者が混在している。
一部が枯れていても、同時に他の部分はまだ生きていることがある。
畑の隅や路傍に打ち捨てられた植物を見つめていると、それらがまだ生きているかのように感じることがある。
植物はいつから枯れ始め、どこから死に至るのか。
どちらでもあり、どちらでもない、途中の地点をあるいてみる。
ーー作家のことば
《transformation》2022年 162×194cm 油彩・キャンバス 撮影:秋葉雅士
《beginning》2024年 65.2×53.0cm 油彩・キャンバス
馬場は、卒業制作以来、一貫して植物の諸相を描きつづけています。みずみずしさをたたえたもの、朽ち枯れて変色してしまったものなどを、ひとつの画面に同居させ、精緻な筆致であざやかに描き出した作品は、生と死のはざまでゆれ動くような世界へとわたしたちをさそいます。今回はそんな画家の制作を、新作・旧作を織り交ぜて紹介します。
◯馬場美桜子(ばば・みおこ)
1991年東京生まれ。2014年、多摩美術大学美術学部絵画学科油画専攻卒業〈福沢一郎賞〉。2016年、同学大学院美術研究科修士課程 絵画専攻油画研究領域修了〈辰野登恵子賞〉。2024年3月まで同学油画研究室助手。
発表歴
・個展
2023 『積みあげられた湿度』 crispy egg gallery/神奈川
2017 『corpse』 東京九段 耀画廊/東京
・グループ展・公募展
2024 『絵画の筑波賞』展2024 茨城
2022 『多摩美術大学 助手展』東京
『神奈川県美術展』神奈川
『アートプロジェクト高崎2022』群馬
2021 『多摩美術大学 助手展』東京
『アートプロジェクト高崎2021』群馬
2017 『耀画廊選抜展vol.1』東京
2015 『TERRADA ART AWARD 2015』東京
『佐藤国際文化育英財団 奨学生美術展』東京
受賞
2024 絵画の筑波賞2024 準大賞
2022 第57回 神奈川県美術展 県議会議長賞
2016 第1回 辰野登恵子賞 (多摩美術大学)
2015 テラダ・アート・アウォード2015 審査員賞
2014 第19回 福沢一郎賞 (多摩美術大学)
助成
2014 公益財団法人佐藤国際文化育英財団 第24期奨学生
会期:2024年10月17日(木)- 11月2日(土)
※木・金・土曜日開館 13:00 – 17:00 観覧無料