【イベント情報】トークの会「福沢一郎と山下菊二 いま語る・ふたりの実像」報告

開館20周年記念 「福沢一郎と山下菊二 師弟は時代とどう向き合ったか」の関連イベントとして、トークの会「福沢一郎と山下菊二 いま語る・ふたりの実像」が、11月16日(日)に開催されました。

今回は徳島県立近代美術館 学芸調査課長の江川佳秀さんにお越しいただき、当館嘱託の伊藤とともに、福沢一郎と山下菊二の関わり、それぞれの作品、そして彼らが向き合った時代についてお話させていただきました。徳島県は山下の郷里で、県立近代美術館ではご遺族から寄贈された多数の山下作品・資料をお持ちです。その中にはもちろん、福沢との交流を示すものが多数あります。
江川さんからお話いただいた山下の従軍時代の辛い経験、それを受けての戦後の「ルポルタージュ絵画」の展開などは、今回展示された作品の理解にもおおいに役立つものでした。また、先述の山下菊二資料から福沢と関わりの深い貴重なものが紹介され、ふたりの関係が特別なものであったことが、改めて浮き彫りになりました。
終戦直後に形のうえでは袂を分かったふたりの画家のあいだには、その後も個人的な師弟関係が続きます。そして社会をみる視点や絵画表現は非常に対照的なものがあります。しかし、会場にお越しくださった方にはよくおわかりいただけたと思いますが、隣に並べてもほとんど破綻のない、むしろ両者を引き立てるような作品どうしの面白い関係をみるにつけ、やはりふたりは特別な師弟であり、時代や社会、人間を、それぞれの視点で見つめ、真摯に制作に取り組んだ画家の生きざまというものは、結局このように作品となって立ちあらわれるのだなあと、お話を聞きながら改めて感じ入りました。
スライドが思うように映写されないなどのハプニング(!)もあり、大幅に時間を延長して行われたトークの会でしたが、満員御礼の熱気あふれる会場で、聴講者の皆様はとても興味深くお話に聞き入っていました。

講演会の内容は今春発行の『記念館ニュース』に掲載予定です。

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(スクリーン手前右側:山下菊二作品を解説する江川佳秀さん)

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(2014年11月29日)